『ABC殺人事件』 アガサ・クリスティー
2009年 06月 01日
だが、事件はそれで終わりではなかった。またも予告状が届き、今度はベクスヒル・オン・シーでエリザベス・バーナードという若い女性が殺され、やはり現場には鉄道案内が残されていたのだ。
Aで始まる地名の町でAの頭文字の人が殺され、今またBの町で生まれてしまったBの頭文字を持つ犠牲者。
ポアロや警察の捜査をあざ笑うかのように、今度はCの町での犯罪予告の手紙が届く・・・。
A、B、C・・・と規則正しく行われる犯罪、その目的は何か。そして犯人は何故ポアロをターゲットにしたのか、という興味で引っ張るポアロ物の一編。
一見無関係に見える被害者にも何らかの共通項があるのではないかと、犠牲者の遺族や縁の者たちがポアロの元に集い、素人探偵団のようなものを結成し、そのディカッションというか雑談の中から朧げながら犯人像が浮かび上がってくる、という展開が面白い。
今回のポアロは後手後手に回り、些か精彩を欠いた印象があるものの、最後の謎解きはビシっと決めてくれる。それまでは平凡な話だなと思いながら読んでいたのだが、真犯人の正体とその目的がわかった瞬間、なるほどと唸らされた。やはりクリスティーは多くの人に支持されるだけのことはある。