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『モスラ』(1996)

ハリウッド版にバトンタッチして休息に入った<平成ゴジラ・シリーズ>。
いずれ近い将来復活してくるであろう「ゴジラ」までの繋ぎとして正月興行の顔をまかされたのは、ゴジラに次ぐ人気怪獣(らしい)モスラだった。
この4年前にモスラそのものは久々に銀幕に復帰しているが(『ゴジラVSモスラ』)、主演作としては実に35年ぶり。

『モスラ』(1996)_e0033570_1810059.jpg物語の舞台はほぼ北海道の原野に限定され(一部、屋久島の描写が入るが)、都市破壊シーンや防衛組織との攻防戦は一切排除。変わりにエリアス姉妹(いわゆる小美人)たちによる小さな戦い=リビングルームでのドッグ・ファイトなどの新趣向を盛り込み、怪獣映画ではなくファンタジー映画として描こうという狙いだ。

しかし、一見ファンタジー風ではありながらかつての『モスラ』もれっきとした怪獣映画だったわけで、もしファンタジーをやりたいのであれば、全く新しい世界観のもとモスラのような手垢の付いた認知されすぎたキャラクターなどを用いず、新たなクリーチャーを創造し挑戦すべきだったろう。
勿論それでは興行的に成立し難いという理屈は承知の上で、敢えて望みたい。

またそのバランスを更に危うくしているのが、新怪獣デスギドラの存在である。
言ってみればファンタジー物には定番である竜(ドラゴン)なわけだが、三つ首のデザインといい、そのネーミングといい、強烈に他の世界に根付く存在である。
本来不定形生物であるとされるデスギドラが何故そのような姿をとるに至ったのかという経緯は、かつて宇宙のどこかで遭遇した似た姿の宇宙怪獣と戦った際に、その相手の能力を取り込んだから、という裏設定も存在するようだが、これが新しい作品を生み出そうとするスタッフの導き出した答えだとするならば、かなり志が低いと言わねばならない。
ファンタジーとしては飛躍が足りなく、怪獣映画としては物足らない、というのがこの作品のおかれた状況なのだ。

エコロジーを前面に出した作りにも疑問符が付く。
人間の自然破壊、環境破壊がデスギドラを生み出したと言いたいのだろうが、デスギドラはたまたま森林伐採によって封印を解かれただけで、元来は宇宙怪獣なわけだからその存在自体を人間の責に帰するのは無理がありすぎる。

結局この作品で唯一評価し得るのは、音楽に渡辺俊幸を起用したことだろう。
あまりにもヒーロー然としたテーマ音楽はモスラそのもののイメージにはそぐわない感もあるが感情移入出来るのも確かで、お馴染み「モスラの歌」のアレンジや矢野顕子の手になる新曲とのマッチングもスムーズで、久々に全篇楽しめる怪獣映画音楽の誕生となった。

最期に怪獣ファン、モスラファン向けの見せ場を一つ紹介しておこう。
それは成虫モスラと幼虫モスラの同時攻撃が今回初めて見られることだ。
モスラが登場する映画はこれで七本目であるが、常に成虫幼虫どちらか若しくは入れ替わりなので、両タイプが同一画面に出てくることさえ稀なのだ。

以上、「しねま宝島」から。
『モスラ』(1996)_e0033570_18103430.jpgこの作品も既に13年も前のものになってしまいました。
結構純粋に観てますね、自分(苦笑)。
随分と辛口コメントだし。
今回DVD引っ張り出してきたら、意外にもモスラに感情移入しながら熱く観てしまいました。
ハードル、低くなったのかなぁ。

ただ以前より気になったのは、エリアス姉妹の妹ロラを演じた山口紗弥加の演技。
テンション高すぎというか、やたらにウルサイ。
可愛いんだけどね。

ホントはこの役、姉のモルを演じた小林恵が演じるハズで、モルには宝生舞が配役されていたのだけれども、クランクイン直前に病気降板(キャリアアップを図るために降板したとの噂もありましたが)。
そこで小林恵がロラからモルに繰り上げられ、山口紗弥加がロラの代役になったという経緯があるが、出来あがったキャラクターを見る限りではこれは正解だったのかなぁとは思うのだけれども。
Tracked from ひびレビ at 2011-05-12 21:22
タイトル : モスラ(平成版)
今回の東宝特撮DVDコレクションは「モスラ」。 北海道で森林伐採が行われていたが、作業中に巨大な石の遺跡のような物が出現する。監督者である後藤裕一はそこにあった紋章のような物をドライバーで掘り出してしまい、東京に帰った時に娘のネックレスにしてしまう。その...... more
Tracked from 或る日の出来事 at 2018-06-05 07:14
タイトル : 「モスラ(1996年)」
平成モスラ3部作の1作目。... more
Commented by pixytale at 2009-10-19 23:21 x
 劇中の「モスラの歌」は『ゴジラVSモスラ』等の伊福部アレンジに倣ってかアカペラバージョン。『ゴジラVSモスラ』の時は原曲を今風にアレンジして日本語歌詞も付け足したシングルバージョンが発売されたので、エリアル版もそういうのが出るかと期待してたのですが、三部作の間、ついに出て来ませんでしたね。
 コスモス版の「モスラの歌」は一時一部の通信カラオケに入ったりしてたのですが、今残ってるのはどこも本家本元のザ・ピーナッツ版ばかりなので、すっかりマイナーな存在になってしまったみたいですね。

 劇伴の渡辺俊幸氏は『銀河漂流バイファム』の頃から聴いていますが、この『モスラ』三部作もなかなか良い仕事だと思います。カッコいいモスラのバトルテーマなんて、この三部作でしか聴けませんから。
Commented by odin2099 at 2009-10-20 23:08
さだまさしのバックをやっていたのは全然知らなかったのですが、『バイファム』は良かったです。
しかもお父上が宙明センセイだと知ってビックリ。
後に『ゴーゴーファイブ』を手掛けてるので、親子二代で戦隊モノの音楽を担当したことになりますね。
観てないですが『Gダンガイオー』もやってたんでしたっけ?
『ダンガイオー』は宙明センセイだから、こっちは親子リレーかな。

従来のモスラには女性的イメージがありましたが、このシリーズは勇壮なテーマ曲のおかげで男性的というか、普通のヒーローっぽいイメージになりました。
それはそれで面白いのですが、逆にこれだけ格好良いメロディーは、モスラにはちと勿体ないかなぁ、という気もしてます(苦笑)。

「モスラの歌」、カラオケはチェックしたことなかったんですが、コスモス版はあったんですね。
エリアス版は確かシングルカットされなかったから入らなかったのかも。
他にも「モスラレオ」とか、結構好きなんですけど。
by odin2099 | 2009-10-17 18:11 |  映画感想<マ行> | Trackback(2) | Comments(2)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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