【徒然なるままに・・・】

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「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”

『オーシャンズ』(2009)

e0033570_6372810.jpg昨今はネイチャー・ドキュメンタリー映画がブームになっていますが、これもその一本。
『アース』『ディープブルー』を超える、史上最大のドキュメンタリープロジェクト。”と宣伝文句にありますが、シリーズ作品なわけではありません。勿論、この2作品のヒットの影響は受けているでしょうが、こちらはフランス映画。『WATARIDORI』をヒットさせたジャック・ペラン監督が、ジャック・クルーゾーと共同監督しています。

これだけネイチャー・ドキュメンタリーが沢山作られ、その中には海を扱った作品も少なくないだけに後発作品は不利だろうと思っていたのですが、どうしてどうしてまだまだ”海”は驚きに満ちています。こういった作品を一本二本観たからといって、”海”をわかったような気になっていてはダメですね。
勿論どこかで見たような映像が混じっているのは致し方ないですが、それを超える斬新な映像が盛り込まれているのも確かです。

ネイチャー・ドキュメンタリーというと、人間の姿は極力排しているのがお約束で、撮影スタッフが画面に映り込むことは殆どないのが普通ですが、この作品では監督自身が画面に登場したり(元々ジャック・ペランは、『ニューシネマ・パラダイス』で成長して映画監督になったトトを演じたりしている俳優ですが)、サメと並走ならぬ並泳するダイバーを捉えたりしているのが目新しい点でしょうか。

映画全体に自然と対立する人間の存在が大きく扱われ、ゴミの海で泳ぐ生物、網に絡まって命を落とす生物、捕獲され殺される生物、そういった現実も容赦なく画面に映し出されます。
これまでもシャチやサメが獲物を襲う瞬間が描かれ、自然のありのままの姿とはいえ残酷すぎると非難されたことはありましたが、人為的であるだけに今回はその比ではありません。そのあたり、製作スタッフの姿勢が問題視されそうですが、実はこれらの映像は加工を加えたり、アニマトロニクス――つまり精巧なロボットを使って撮影したものなのだそう。最後に「動物には一切危害を加えてはいません」との断り書きも出てきます。

e0033570_6381840.jpg確かに嵐の海に翻弄される船を俯瞰で捉え、そのままカメラがズームアップして雲を突き抜け、更には宇宙空間の人工衛星にまで1カットで持っていくような芸当は、VFXを駆使しなければ不可能な映像です。
しかしそうなると、ドキュメンタリー映画と謳いつつ、この作品に映し出された映像はどこまで”本物”なのか、という疑問も湧いてくるのですが・・・。

それにしてもこの手の作品を日本で公開する際、どうして本業ではない人のナレーションを付け加えるのでしょうか。
今回の作品でナビゲーターを務めたのは宮沢りえ。宣伝でも彼女の名前が前面に出てきています。
字幕を追うのは辛いので吹替版を作るのは賛成なのですが、彼女の語りは下手ではないものの、さりとて上手いとも思えません。
また彼女がナビゲーターだからといって、その為だけに彼女のファンがわざわざ映画を観に行くとも考えにくいのですが、もっと作品そのものを大切に扱って欲しいと思います。

主題歌もまた然り。
エンドクレジットで平原綾香と藤澤ノリマサの歌が流れますが、こちらも不要です。
原版にも歌があり、その曲をアレンジもそのままに日本語で歌った、というのであれば話は別ですが、どんなに素晴らしい曲であれ、勝手に付け加えるのは改竄であり、冒涜であり、許されざる行為だと思うのですが如何でしょうか。
勿論、原版の監督なりプロデューサーなりが熱望したのであれば文句はありませんが、仮に許可を得ていたとしても、それでもやって良いことと悪いことはあるんじゃないのかなと思っています。
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by odin2099 | 2010-01-25 06:38 |  映画感想<ア行> | Trackback(17) | Comments(2)
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Commented by 小夏 at 2010-01-28 11:21 x
>どうして本業ではない人のナレーションを~
この問題を一旦語り始めると際限なく愚痴が出てくる小夏です。
いや、ホントですよね。つい昨日、某新人イケメン君が某アニメ?の吹き替えをしている裏舞台をTVで見たんですが、四倍角の「ド」が付くほど下手クソで、そんな仕事をさせられた彼に逆に同情しちゃいました・・(^^;

それにしても。
精巧なロボット・・・って?ちょっ・・!マジでそーゆー映画だったの?
うわぁ~~予告編を観て感動にウルってた自分は一体なんだったんだ・・
それならそれで別の見方があると思うので、なんとなく騙された気分です。
Commented by odin2099 at 2010-01-28 22:00
出来の悪い吹替版を作ってしまうことは、オリジナルの監督やスタッフ、キャストの皆さんに対する背信行為、いやさ犯罪だと思うんですがねぇ。

この映画では捕獲されたサメが、フカヒレ料理の為だけに、ヒレだけを切り取られそのまま海に投げ捨てられる場面が出てきます。
海底でピクピク動くヒレのないサメの姿はイヤ~な気分にさせられるのですが、実はこのサメがアニマトロニクスだった、ということがパンフに書かれているのでほっと一安心。
・・・とはいかないですよね(苦笑)。
後のシーンが全部嘘っぽく思えてしまうから。

そういった製作の姿勢そのものを批判する気はないですけれど、ちょっと考えさせられてしまいます。

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