『黒蜘蛛島』<薬師寺涼子の怪奇事件簿> 田中芳樹
2010年 02月 10日
ところが総領事は捜査に非協力的だわ、不名誉な事件で警視庁を解雇された3人組は姿を見せるわ、「ハリウッドの帝王」グレゴリー・キャノン二世から黒蜘蛛島<ブラックスパイダー・アイランド>へ招待されるわ、当然のように(?)お由紀と岸本コンビに再会するわ、というお約束の展開が待ち受けていた!
ということでお話そのものには新鮮味はないものの、やっぱりキャラクターが立っているので読んでいて楽しい。ちょっとした旧友との再会、てなところである。
しかし今回少々引っかかったのは、真犯人、黒幕の正体。
一応ネタバレするので、未読の方はご注意願いたいが――
これまでも人外の化け物が色々出てきて、クライマックスはお涼たちとの大バトルが繰り広げられるのがパターンだったのだが、あくまでも化け物は化け物として出てくるだけだった。ま、前座というか、ヤラレ役。その背後には真犯人が別にいた。
ところが今回は、化け物=黒幕。
人に擬態する大蜘蛛なのだ。
伝説上の、想像上の摩訶不思議な化け物が沢山出てきてもどうということはないけれど、知性を持った化け物となるとレベルが違うというか、これまでの作品世界からは随分と逸脱してるんじゃなかろうか。
例えて言えば、毎回毎回悪代官や悪徳商人を懲らしめてきたチャンバラ劇のヒーローの、次の相手が宇宙人だった?!ぐらいのインパクト。
ま、そこまで行かなくても、何となくそぐわない気がしてるのは自分だけ?