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『宇宙戦艦ヤマト/復活篇』 オリジナル・サウンドトラック・アルバム

「ヤマト」の新曲が聴けるのは『交響組曲 新宇宙戦艦ヤマト』以来約10年ぶり、「ヤマト」のサントラ盤ということならば『YAMATO2520』のサントラ以来なので約15年ぶりの新譜ということになるのでしょう。
当初の予定日より発売が遅れ、結局映画の公開前ではなく公開後になってしまったのもシリーズの伝統、と言ったら酷でしょうか。
そして、ご存知の通り従来「ヤマト」の音楽をずっと手掛けてきた宮川泰・羽田健太郎両氏は既に鬼籍に入られているため、今までの「ヤマト」のサントラ盤とはかなり異質な感じがするのは否めません。

音楽は主に、以下の4つのパートからなっています。
一つ目は旧作の為に録音されたものをそのまま、或いは若干手を加えて使っているもの(『交響曲 宇宙戦艦ヤマト』含む)。
二つ目は旧作で使われたメロディーを、新アレンジ、新録音したもの。
三つ目にクラシック音楽を用いているもの。
そして最後は、羽田健太郎の弟子にあたる山下康介によるオリジナル曲。

『宇宙戦艦ヤマト/復活篇』 オリジナル・サウンドトラック・アルバム_e0033570_8181682.jpgこれに関しては「なるほど、これはピッタリ」というものもあれば、「ちょっとイメージ違うなぁ」と思うものもあるし、「この曲使うくらいなら、あの曲の方が良いのに」と、その気になれば全シーンの全使用曲に関して語るに吝かではなかったりもするのですが、概ね想定の内、といったところでしょうか。

それでも、特定のキャラクターやシチュエーションと強く結び付いている曲を使うのはどうなのかなぁとは思いました。例えばディンギル帝国のテーマ曲が流れたり、大破したブルーノアを発見するシーンに流れた曲は、『さらば』で大破した「ゆうなぎ」が発見されるシーンにも使われていたっけ、とか。反対に、『完結編』の「抜けるヤマト」などは上手い使い方だったと感じました。

そういえばアマール星のテーマとして使われているチャイコフスキーの「スラブ行進曲」は、ボラ―連邦のテーマの元ネタ(?)だったなぁとか、「新コスモタイガー2009」はせっかくの新アレンジ(途中でピアノソロが入ったりでゾクゾクさせてくれる)なのに殆ど使われず、これなら『完結編』で本編未使用に終わった「新コスモゼロ」を使っても面白かったのではないかとか、古代が地球に帰還するシーンで「別離」が流れるのは何故なのか等々、挙げていくとキリがなくなってしまいますので、これぐらいにしておきます。

そしてこのCDで一番嬉しくかつ驚いたのが、「『復活篇』のためのシンフォニー」と題された曲の収録。これ、実は羽田健太郎の「ヤマト」における遺作なのです。
15年ほど前に一度『復活篇』が形になりかけた時、『ヤマト わが心の不滅の艦/宇宙戦艦ヤマト~胎動篇~』というプロモーションを兼ねたビデオ作品が作られたのですが、その劇中に流れていたのがこのメロディでした。
当時から出典不明で気になってはいたのですが、同時期に製作されていた『YAMATO2520』のBGMも何曲か流用されていたことから、てっきり『2520』の未使用・未収録BGMか、さもなければライブラリー音源の流用なんだろうと考えていたのですが、そんな経緯があったのですねぇ。今回は山下康介のアレンジによって新録音されています。

しかしこのCD、手放しでは喜べませんでした。
というのもどういう訳か、劇中で未使用の曲が多く、肝心の劇中使用曲が少ないのです。
かつてのサントラ盤、音楽集も実際に映画本編で流れたものは少なく、レコード用に別に録音されたものが殆どでした。こちらは聴きやすさを重視し、レコードとして独立したものを作ろうという意図があったのですが(それでも「同じ曲が聴きたい」というファンの声は強く、後年BGM集が別途リリースされることになったのですが)、今回は条件が違います。
サントラ盤製作のイニシアティブを握っていたのが誰だかわかりませんが、これはちょっと残念でした。

ところでこの『復活篇』、演奏者としては何故か二つのオーケストラがクレジットされています。
一つは日本フィルハーモニー交響楽団、もう一つは東京ニューシティ管弦楽団。
そして前者がクラシック音楽、後者が「ヤマト」オリジナルスコアの録音・演奏という具合に棲み分けがなされているのですが、わざわざ分けたのには何か意味があるのでしょうかね。
by odin2099 | 2010-02-13 08:18 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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