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『三十九夜』(1935)

カナダ帰りの外交官ハネイ氏が立ち寄ったロンドンのとある劇場では、驚異の記憶力を持ったミスター・メモリーと呼ばれる芸人が、客からの様々な質問に答えるという出し物をしていた。その時突然一発の銃声が響き、場内は大混乱。我先に逃げ出す観客たちの中で、ハネイ氏は一人の女性から助けを乞われ、そのままアパートへと連れ帰る。
『三十九夜』(1935)_e0033570_23295449.jpg彼女は国際的なスパイであり、重要な国家機密が海外に流出するのを防ごうとしているのだと語る。俄かには信じられないハネイ氏だったが、アパートの前に怪しい男たちが屯しているのを見て、何事かが起きていることを悟る。
だがその夜、彼女は何者かに殺害されてしまった。海外に機密を売ろうとしている組織のボスは片手の小指がないこと、そして彼女の目的はスコットランドでとある男に会うことだったことを言い残して。
殺人の容疑を掛けられたハネイ氏は逃避行を続けるが、警察、そして組織の者たちが執拗に彼をつけ狙うのだった。

ジョン・バカンの小説を、アルフレッド・ヒッチコックが監督したサスペンス映画。正味が80分程度で、最後がかなりあっけない気もするが、ハラハラドキドキしながら集中して楽しめた一篇。事件に巻き込まれ、最初はおどおどしていた主人公が段々とふてぶてしく変貌していく様は面白い。
四面楚歌の孤独な逃避行を続ける主人公だったが、束の間の安らぎを与える存在となる人物が若く美しい人妻というのはエロティックだし、成り行きから彼と同行する羽目になり、最初は何とか逃れようとしているものの、やがて真相を知るや彼の協力者となるヒロインは、彼と手錠で繋がれたままストッキングを脱いだり、同じベッドで寝ることになったりと、こちらもかなりエロティックなシチュエーション。
それ以外にも全体的にエロティックな雰囲気が漂っているのだが、それも狙いなのかな。

ところで今回観たDVDの字幕、”THE 39 STEPS”を、「三十九夜」と訳したり「三十九階段」と訳したりとマチマチなのは頂けない。観ていて混乱するだけである。
Tracked from 極私的映画論+α at 2010-05-10 07:25
タイトル : 三十九夜 (1935) THE 39 STEPS 88分
 ヒッチコックのイギリス時代の秀作です。... more
by odin2099 | 2010-02-20 23:31 |  映画感想<サ行> | Trackback(1) | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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