人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『告白』 湊かなえ

「私の娘は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。」

終業式のホームルーム、退職するという女性教師の告白から始まる、章ごとに語り手が変わるモノローグで構成されるドラマ。犯人、犯人の家族、クラスメートと様々な視点から事件が綴られて行きます。
それは、立場が変われば見方が変わる、ということだけではなく、皆が皆、自分の行為の正当性を主張している「だけ」なので、突き合わせてみれば相互に矛盾も出てきます。

誰が本当のことを言っていて、誰が嘘をついているのでしょうか。
それとも皆、他者に対して自己を正当化するために、あるいは自分自身を納得させるために、意図的に、もしくは無意識に嘘をついているのでしょうか。
それとも、それとも・・・?

話題になっていたのでずっと気になっていましたが、文庫になるのを待ってやっと読み終わりました。
『告白』 湊かなえ_e0033570_6474353.jpgありきたりな少年犯罪の物語でなく、復讐を正当化している訳でも、かといって否定している訳でもない、色々と考えさせられるお話でした。
登場人物の誰一人として共感の出来ない、重苦しい救いようのない展開です。
しかしそれと同時に、自分のなかの一部が、それぞれの人物に同調していることにも気付きました。

自分ならどうするでしょう?
殺人犯に対して報復するでしょうか? 
仲間外れにされるのは嫌だから、同級生と一緒になっていじめに加担するでしょうか?
そう簡単に答えは出せませんが、そう考え始めると、登場人物たちが皆、ある意味で身近な、自分の分身のような存在に思えてきます。

ミステリー物として捉えると、犯人探しのお話ではありませんし、犯行の動機に関しても「これだ」という結論は提示されません。
そのあたりに違和感を覚える人もいるのではないかと思いますが、強いて言えば人間の”心”が一番ミステリー、ということなのかも知れませんね。
Tracked from 花ごよみ at 2010-07-02 20:28
タイトル : 告白 (湊かなえ)
第一章 聖職者 終業式、退職を控えた、 中学の女性教師が クラスの生徒を前にしての一人語り。 愛する一人娘を失った原因となる 教え子を告発。 その少年に対する復讐。 衝撃的な第一章の幕開け、 最初から、引き込まれます。 感情を交えないで語る、 女性教師がこわい。 第一章聖職者は驚きのラスト。 さらっとした書き方も、 よけいに不気味さを感じます。 第二章後は、登場人物が順々に、 真実を語るという構成。 感情移入は出来ない人達。 あまりに陰鬱で救いがないです。 事件を本人、級友、 家族...... more
Tracked from マロンカフェ 〜のんびり.. at 2010-07-02 20:54
タイトル : 湊かなえ  告白
新人作家だけど、ものすごいのを書いた人がいると聞いてチェックしたのがこの本。図書館でこの本を借りてきたとブログにアップしたら、それからこの本に関する検索ワードで訪問する方がぐっと増えました。新聞でも大きな広告が出てたそうですし、今ホットな本なんでしょうね〜 我が子を亡くした中学校女性教師が終業式のホームルームで、娘の死は事故ではなく殺人だと言い、犯人である2人の少年を指し示し辞職する。一つの事件をモノローグ形式で、級友・犯人・犯人の家族が語り、真相に迫ります。 改行がなくて会話混じりの一本調子で淀みな...... more
Tracked from 京の昼寝〜♪ at 2010-07-02 21:11
タイトル : 「告白」/湊かなえ
「告白」/湊かなえ(双葉文庫刊)       今までにないタッチの文体と進行。ただただ一人称の世界が、“娘”というキーワードの下にあまりに淡々と語らせて、どんどん深みに落ち込んでいく。嫌がおうにも次のページを捲っている自分に気付く・・・。文庫本になったので、かみさんが買って来てくれたのだが、ページを開くと、びっちり埋められた漢字練習帳のように余白が殆どないページに、恐れることなく溺れていく。ほぼ一人称の世界で綴られていくこの作品は摩訶不思議なテンポと浮遊感を感じな...... more
Tracked from みゆみゆの徒然日記 at 2010-07-02 21:24
タイトル : 『告白』
湊かなえ/著  松たか子主演で映画化されるというので書店でかなり宣伝されていて面白そうだなと思って、手にとってみました。こちらもサクサク読めました。  題材が少年犯罪だけあって、とても重かった・・・。確かにサクサク読み進めるし、それぞれの章が登場人物たちの“告白”で綴られているのは面白かったです。でも私は誰一人として、この物語の主要登場人物に共感できないし、途中かなり嫌悪感を催すというか気持ち悪くなるというか・・・。暗い内容だろうと、バッドエンドだろうと構わないのだけれど、こうも自分の価値観からかけ...... more
Tracked from やっほっほ~ at 2010-07-02 21:26
タイトル : それぞれの事情と言い訳『告白』【小説】
告白 湊かなえさんの作品 第29回小説推理新人賞受賞 「愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。」 わが子を亡くした女性教師が、終...... more
Tracked from Brianの独り言 at 2010-07-02 22:22
タイトル : 原作『告白』
映画『告白』を観た後に、原作『告白』を読むことに・・・。 これだと映画を観る時に... more
Tracked from 本と映画の雑談室 at 2010-07-02 23:47
タイトル : 湊かなえ著「告白」双葉文庫
娘を殺された女教師は復讐を仕掛ける 名前はあげない告発の後 女教師は学校を去る ... more
Tracked from itchy1976の日記 at 2010-07-03 01:31
タイトル : 湊かなえ『告白』
告白湊 かなえ双葉社このアイテムの詳細を見る 今回は、湊かなえ『告白』を紹介します。デビュー作の割には読ませる文章力があるし、第1章の衝撃の告白「愛美は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたのです。」以降どうなるのかなと思いながら読むことができました。主人公は加害者A,Bを観察し続けたといっても良いでしょう。それで、反省しているかどうか、罪の重さを感じ取ることが出来たかどうかを監視続けた。 章ごとに語り手が違います。担任の教師(被害者)や加害者A,Bやクラスメートの美月やBの姉(ほとん...... more
Tracked from 「本のことども」by聖月 at 2010-07-03 05:33
タイトル : ◎「告白」 湊かなえ 双葉社 1470円 2008/8
 間違いなく今年のこのミスにランクインしてくる作品。そして、巷の噂に違わず、新人デビュー作品としては、相当に完成されたミステリーである。  ただ、難をあげれば、全部で6章の告白からなる作品なのだが、第1章の完成度が群を抜いて高く、章が進むにつれて、緊張感が少し緩くなってしまっているところであろう。特に第6章のオチに至る部分においては、ちょっと現実性が薄く、まあお話としてはこういうのもあり?みたいな締めくくり方でもある。  それでも、今年一番の話題本であり、図書館の予約数は多くの施設で100...... more
Tracked from 日々のつぶやき at 2010-07-03 10:58
タイトル : 「告白」湊かなえ
あちこちで目にするこの「告白」ですが、読後感がよくないというのも耳にしていたので覚悟して読みました。 「幼い娘を亡くした女性教師が終業式で語った言葉。愛美はこのクラスの生徒に殺された。 そしてその衝撃よりも大きな告白、犯人二人を裁いた方法とは・・」... more
Tracked from <花>の本と映画の感想 at 2010-07-03 15:17
タイトル : 本「告白」
告白 湊かなえ 双葉社 2008年8月 教師森口悠子は、終業式の日、HRで、生徒たちに、今月いっぱいで教師を辞めるという話をする。そして、娘愛美は事故ではなく、二人の犯人がい... more
Tracked from 蒼のほとりで書に溺れ。 at 2010-07-03 22:14
タイトル : 『告白』/湊かなえ ◎
前評判がすごかった、この『告白』、確かにスゴイ。 「事故だったはずの自分の娘の死は、本当はこのクラスの生徒に殺されたのだ」と女性教師が語り始めるという、インパクトのある序章、その後5章にわたって、事件と事件その後について、事件関係者とその周辺の人物が語る物語は、あまりにも陰惨で、救いがない。 予想をはるかに上回る、「人間」の醜さ。けれど物語の登場人物達の言動は、現実にあり得るのだ。... more
Tracked from *モナミ* SMAP・映.. at 2010-07-04 21:32
タイトル : 『告白』  著:湊かなえ
幼い一人娘を亡くしたシングルマザーの教師。 娘がプールで溺れ死んだのは事故だと思っていた生徒たちに、 終業式の日、教師は衝撃の告白をする。 全編において、語り口調の物語。 教師、生徒、母親、生徒の姉、そしてまた生徒の口からの、 告白となっている。 そこに見えるのは、少しずつのズレ。 情報と感情の小... more
Tracked from 月灯りの舞 at 2010-07-04 21:41
タイトル : 「告白」
久しぶりに一気読みしてしまったスゴイ本。 ミステリ要素と人間の愛が凝縮された 読み応えたっぷりの話題の本。 「告白」 湊 かなえ:著 双葉社/2008.8.5/1400円 愛美は事故で死んだのではありません。 このクラスの生徒に殺されたのです。         ... more
Tracked from ナナメモ at 2010-07-06 07:18
タイトル : 「告白」湊かなえ
告白 湊 かなえ JUGEMテーマ:読書 我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。 『「愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」第29回 小説推理新人賞受賞選考委員をうならせた、驚異の大型新人現る!』なんて新聞広告に出ていて、すぐに予約したんだけどやっぱり長いこと待たされました。 それにしてもすごい。先が気になって気になっ...... more
Tracked from 映画な日々。読書な日々。 at 2010-07-07 12:49
タイトル : 湊かなえ 『告白』
告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)/湊 かなえ ¥650 Amazon.co.jp 我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。選考委員全員を唸ら... more
Tracked from アイウエブログ at 2010-07-16 21:13
タイトル : 『告白』湊 かなえ
第一章「聖職者」が小説推理新人賞を受賞した、作者のデビュー作。 映画化されるというので読んでみた。この作品好き嫌いがあるだろう。読んだ後味は良くないが、考えさせられるものはある。でも救いようがないよね。 ... more
Tracked from 気ままな映画生活 at 2010-07-26 17:09
タイトル : No.220 告白
予告編から、そのストーリーに惹かれて これは映画館で観るべき、1800円払っても問題ないと 思いました。元はベストセラー小説ですが、 原作が注目されている事は知っていましたが、 冒頭からラストまで中だるみがなく、釘付け状態でした。... more
Tracked from ★YUKAの気ままな有閑.. at 2010-08-30 22:21
タイトル : 【本】告白
         『告白』            湊かなえ            双葉社【comment】2009年本屋大賞第1位の本作は、中島哲也監督、松たか子主演により映画化され、かなり話題を呼んで大ヒットした。  映画『告白』の感想はコチラ私は、この映画に物凄く衝撃を受け、映画への評価を5点満点にしたのだが、畳みかけるような負の連鎖に一種のホラーめいたものを感じ、物語そのものを好きにはなれず、きっと読後感の良くないであろう原作に手を伸ばすことを躊躇していた。だが、とうとう読んでみた―    で、...... more
Tracked from C'est joli〜こ.. at 2010-08-31 09:24
タイトル : 1週間読書のまとめ「告白」「神様のカルテ」「ありがとう、..
最近読んだ本をまとめてUPします★ありがとう、さようなら・・・瀬尾まいこ【STORY】せんせいの毎日はありがとうに満ちている、そして訪れる、さようなら。小説みたいな瀬尾まいこの毎日。「僕は先生のことを愛しています。今度のテストで100点取るので結婚してください」....... more
Tracked from はらやんの映画徒然草 at 2010-11-20 22:33
タイトル : 本 「告白」
中島哲也監督の映画版もすごいと思いましたが、原作本もさすが本屋大賞をとるだけのこ... more
Tracked from 本の宇宙(そら) [風と.. at 2010-12-05 10:32
タイトル : 告白
 第6回(2009年) 本屋大賞の受賞作で、松たか子主演で映画化もされた「告白」( 湊かなえ:双葉社)。読み終ったらイヤな気持になるミステリーを指す「イヤミス」としても評判の ...... more
Tracked from The 近況報告!~今度.. at 2011-02-12 02:07
タイトル : ●読書記録● 「告白」 湊かなえ
{%足跡(テンテンテン)hdeco%}2010年の思い出{%足跡(テンテンテン)hdeco%}... more
Commented by 夢見 at 2010-07-02 23:49 x
「本と映画の雑談室」の夢見です
トラックバックを有難うございました

続けて同じ作家の本を買うかとなると気になりつつも暫し思案してしまいます
書くに勇気いる材料ですね
Commented by odin2099 at 2010-07-03 18:14
こちらこそ有難うございました。

結末というか正解というか、それを提示しないまま終わっているのが上手いというかずるいというか。色々と深読みしてしまいそうです。
そして次の作品も読みたい、と思わせてくれる作家だとも感じました。

ただこの人の作風が皆同じようなものならば、続けて読むのはかなり辛そうです。
気力体力共に充実していて、精神的にも安定している時でないと、読み終わった後が厳しそう・・・。
Commented by シムウナ at 2010-08-01 15:11 x
TB有難うございました。
今年度の邦画の中では1,2位を争うほどの
満足度でした。単純に面白いと一言で
終わらせてはいけないほどの衝撃がありました。
復讐を達成するため、善人でいるのか、自らも
悪人となるのかその境界線を彷徨う松たか子の
演技にも魅了されました。

今度、訪れた際には、
【評価ポイント】~と
ブログの記事の最後に、☆5つがあり
クリックすることで5段階評価ができます。
もし、見た映画があったらぽちっとお願いします!!
Commented by odin2099 at 2010-08-01 18:55
いらっしゃいませ。
映画版、異例のロングラン上映になっていますね。
これで来年の日本アカデミー賞は決まりでしょうか(少なくても何らかの部門で受賞するのではないかと思います)。
邦画が元気なのは喜ばしい限りです。
by odin2099 | 2010-07-02 06:48 | | Trackback(23) | Comments(4)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


by Excalibur
カレンダー