【徒然なるままに・・・】

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「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”

『クララ・シューマン/愛の協奏曲』(2008)

作曲家ロベルト・シューマンと、妻でピアニストのクララは、ヨーロッパ各地を演奏旅行で回り、多忙な日々を送っていた。そんな二人の前に、若き天才作曲家ヨハネス・ブラームスが現れた。
体調不良に悩まされ続けるロベルトにとり、ヨハネスは自分の音楽に対する唯一の理解者となり、やがて彼を「後継者」とまで公言するようになる。気難し屋の夫と沢山の子どもを抱えるクララも、ひたすら彼女を崇拝するヨハネスの存在に平安を見出して行く。
だが酒と薬の影響もあって次第に狂気に駆られていくロベルトは、クララとヨハネスの関係を疑うと同時に自分の最大の理解者ヨハネスをクララに奪われるという焦燥感にとり憑かれ、ヨハネスはクララへの愛を隠そうともせず、そしてクララは・・・・・・。

e0033570_2113866.jpgこの映画を、老いた夫とその美しい妻、そして若く才能溢れる青年、という関係に置き換えてしまうと良くある三角関係の図式になるのだが、一人の女性を二人の男性が争うだけでなく、一人の若者を男女二人が奪い合う、という構図も見えてくるところが捻りのあるところだろうか。

実際にクララとヨハネスが不倫の関係にあったのかどうかは決定的な証拠がなく、現在ではむしろ否定される方向にあるようだが、この映画ではヨハネスにストレートにクララに対する愛を語らせ、クララも言葉では否定するものの満更でもない様子を見せる。というよりもクライマックスでは「ここまで描くか」と驚くようなシーンが登場し、ラストで全てが吹っ切れたかのようなクララが、異様な美しさを見せて幕となるのである。
映画としては確かにわかりやすくはなっているものの、その反面安っぽいメロドラマに堕してしまった感があるのも事実だ。

クララ役のマルティナ・ゲデックは吹き替えなしでピアノ演奏シーンをこなし、二人の音楽家が魅せられたミューズ(女神)を見事に体現。
パスカル・グレゴリーは精神を病んだ男を、マリック・ジディは若者らしい情熱を湛えた男を、それぞれ好演している。
また脚本・監督のヘルマ・サンダース=ブラームスは、名前の通りブラームス一族の末裔。実際はヨハネスの叔父の子孫ということで直接の血縁ではないが(ヨハネスには子どもがいなかったため)、そういう立場でこの微妙な物語を語ったことには大いに興味をそそられる。

ちなみにこの映画で一番最初に流れるのは、有名なロベルト・シューマンのピアノ・コンチェルト。あの『ウルトラセブン』最終回を感動的に盛り上げた曲、というと御存じの方もいるかも知れない。
他にもブラームスの曲や、クララの曲(才能ある女性作曲家でもあった)なども散りばめられており、音楽を聴くだけでも飽きない。
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by odin2099 | 2010-07-15 21:14 |  映画感想<カ行> | Trackback(10) | Comments(4)
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Commented by sakurai at 2010-07-16 17:59 x
ここに「ウルトラセブン」が来るとは思ってもいませんでした!
シューマンの人となりを知れましたが、ここは一番、ブラームスでしょう!やっぱ。
あんなおのこの惚れないはずがないです、はい。
あの手術のシーンはいただけませんでしたね。違う方にいくんかい!と思ってしまいました。
Commented by odin2099 at 2010-07-16 22:39
>sakuraiさん

手術のシーンはいりませんね。ホラー映画みたい。
なんか手術のせいで、シューマンさんは死んじゃったみたいだし(実際のところは知らんけど)。

ブラームスはいい男すぎるかな。
でも簡単にクララさんがよろめかないから、そこにドラマが生まれるというわけで。

>ウルトラセブン

ここはやっぱり触れておくべきかなあと思いましたです、ハイ(笑)。
Commented by sakurai at 2010-07-18 08:38 x
シューマンは梅毒で死んだようですね。
最後は脳梅毒となって、結構哀れな死にざまだったようです。
Commented by odin2099 at 2010-07-18 20:59
映画でも十分哀れでしたね。

「その後」のクララとブラームスの関係も興味深いですが、この映画に関しては描かなくて良かったのかな。
クララの死に目に会えなかったブラームスとか・・・。

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