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『ホロー荘の殺人』 アガサ・クリスティー

『ホロー荘の殺人』 アガサ・クリスティー_e0033570_6212336.jpgアンカテル一族は、秋にヘンリー・アンカテル卿とその妻ルーシーが住むホロー荘に招かれ、休日を過ごすのが恒例になっていた。
ミッジ・ハードカースル、彫刻家のヘンリエッタ・サヴァナク、医者のジョン・クリストウと妻ガーダ、エドワード・アンカテル、デイヴィッド・アンカテル…招かれたのは6人の男女。
ミッジはエドワードに憧れ、エドワードはヘンリエッタを愛し、ヘンリエッタとジョンは愛人関係にあり、ガーダはジョンに従順、ディヴィッドは周囲を軽蔑、拒否し、そしてルーシーは天真爛漫。
世間とは一風変わった集まりであった。
その夜ホロー荘を、近隣に住むヴェロニカ・クレイが突然訪ねてくる。
ヴェロニカは映画女優で、かつてはジョンの婚約者だったが、女王然として振舞う彼女について行けず、正反対で大人しいガーダと結婚したと言う経緯があった。
翌日、隣人であるエルキュール・ポワロが昼食に招かれホロー荘を訪れるが、そこで彼が目にした光景はプールの端のジョンの死体、そしてその傍らに銃を持って虚ろに立ちすくむガーダ、そして駆けつけてきたルーシーとエドワード、それにヘンリエッタの姿だった…!

犯人は誰で、そしてジョンは何故殺されねばならなかったのか、という興味で引っ張るミステリー物ではあるのですが、それよりもホロー荘に集った人々の複雑な愛憎劇、一種の恋愛小説として捉えた方が良いのではないかと思います。
犯人探しよりも、おそらく誰が犯人か気付いたであろう他の親戚たちが、その人をかばうかのような行動を見せる、その心理の方がミステリーと言えそうです。

ただ謎解きの興味で読み進めていくと、イライラさせられることも間違いなく、そのあたりで評価は分かれるのではないかと。
ポワロの出番も少なく、クライマックスに立ち会いこそすれ、彼が謎を全て解決する訳ではありません。
というわけで後年、クリスティー自身がポワロを削り、戯曲として再構成したとのことです。
Tracked from 日々の記録 at 2010-07-20 21:51
タイトル : ホロー荘の殺人/アガサ・クリスティ
久しぶりにアガサ・クリスティの推理小説に手を出してみました。読んだのは、「ホロー荘の殺人」でした。 この作品、一応ポワロが登場するのですが、ほとんど探偵らしい活躍をしないという異色の作品でした。ぎ..... more
Tracked from 個人的読書 at 2010-07-31 23:52
タイトル : ホロー荘の殺人
ホロー荘の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)/アガサ クリスティー ¥945 Amazon.co.jp 「ホロー荘の殺人」 アガサ・クリスティ著/中村能三訳 早川書房・出版 『トリックより、人物描写の掘り下げにぐっとくる』  アガサ・クリスティ読むのっていつ... more
Tracked from じゅうのblog at 2013-10-21 23:35
タイトル : 『ホロー荘の殺人』 アガサ・クリスティ
久しぶりに本格推理ミステリー作品を読みたくなり「アガサ・クリスティ」の長篇推理小説『ホロー荘の殺人(原題:The Hollow)』を読みました。 [ホロー荘の殺人] 「アガサ・クリスティ」作品は今年の8月に読んだ『クリスマスプディングの秘密』以来ですね。 -----story------------- 「アンカテル卿」の午餐に招かれホロー荘に来た「ポアロ」は少なからず不快になった。 邸のプールの端に一人の男が血を流して死んでおり、傍らにはピストルを手にした女が虚ろな表情で立っていたのだ ─ いくら...... more
by odin2099 | 2010-07-20 06:20 | | Trackback(3) | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


by Excalibur