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『夜間飛行』 サン=テグジュペリ

ロマンティックな題名に惹かれ、手に取ったのは中学の時だったでしょうか、高校生になってからだったでしょうか。
さっぱり物語が頭に入って行かず、挫折したのも懐かしい思い出です。
で、今回は何年か越しでのリベンジです。

  × × ×

『夜間飛行』 サン=テグジュペリ_e0033570_20111353.jpgお話はとある一日、それも夕方から深夜にかけて繰り広げられて行く。
出てくるのは複数の郵便飛行に携わるパイロットたちと、現場主任、整備工、監督官、それに社長。
幾つかのエピソードが回想を交えたり、時系列を入れ替えたりして語られ、クライマックスとなるのは嵐に巻き込まれたとある便の運命。
といってもドラマティックに、サスペンスフルに描写されるわけではなく、絶望と格闘するパイロットよりも中心になっているのは、「郵便飛行」という事業を立ち上げたパイオニアとしての矜持を持ち、周囲に対して毅然とした態度を保ち続ける社長の姿だ。

ロマンティックなヒーロー像とは無縁な、誇りと信念を持った孤高の姿。
物語は凡そハッピーエンドとは言えない結末を迎えるが、そこに悲壮感はない。
そんな生易しい感傷の入り込む余地などない世界に、ただ一人身を置く男。そこに何とも言えない爽快感すら覚えてしまう。
やはり名作と言われるだけの迫力のある一篇であった。
by odin2099 | 2010-08-11 20:12 | | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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