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『シラノ・ド・ベルジュラック』

市川右近、安寿ミラ主演の舞台、昨日サンシャイン劇場で見てきました。
エドモン・ロスタンの戯曲を元に上演台本を笹部博司が書き、深沢敦、小林十市、駒田一、栗田芳宏、石橋正次を含めた7人で総勢50名以上の登場人物をこなし、ヴァイオリンの氏川恵美子とアコーディオンの大田智美の2人が生で音楽を奏でるという作品です。
音楽は宮川彬良、演出は栗田芳宏、2007年に青山円形劇場で上演されたものの再演だそうで、主演の2人は続投、それ以外は総入れ替えとのことです。

『シラノ・ド・ベルジュラック』_e0033570_7165588.jpgシラノは天下無敵の剣豪にして詩人でもあるのですが、人並み外れた大きな鼻にコンプレックスを持っていて、子どもの頃から兄妹同様に育った従妹のロクサアヌに想いを寄せながらも、自分の気持ちを打ち明けられないでいます。
一方のロクサアヌは、ハンサムなクリスチャンに恋い焦がれ、クリスチャンも美しいロクサアヌに一目ぼれしていますが、口下手で上手く口説くことが出来ません。

見かねたシラノは、自分がロクサアヌに宛てて書いた手紙をクリスチャンからだと偽って渡し、以後もクリスチャンの代わりに美辞麗句に彩られた愛の言葉をロクサアヌに囁き、結果2人は結ばれます。
しかしこれに横恋慕したド・ギッシュ伯爵によって、シラノとクリスチャンは戦場へと送られてしまいます。

やがて戦場にロクサアヌが現れ、シラノとクリスチャンは彼女と再会しますが、彼女の言葉からロクサアヌが本当に愛しているのは自分の容姿ではなく、その心――即ちシラノ――なのだと悟ったクリスチャンは絶望し、戦火の中に斃れてしまいます。
それから十数年、修道院へ入ったロクサアヌをシラノは毎週末に訪れ慰めているのですが、とうとうある日ロクサアヌは、自分に愛を語ってくれていた人が実はクリスチャンではなかったことを知るのです。しかし――。

ロスタンの戯曲は翻訳版を持っているのですが未だに読んだことはなく、初めて「シラノ」を知ったのは三船敏郎が主演した翻案版の『或る剣豪の生涯』(監督は稲垣浩)でした。
予備知識などまるでなく見ていたのですが、ヒロイン役の司葉子の美しさもさることながら、三船扮する主人公の、怖いもの知らずの豪傑で毒舌家なのに、惚れた女の前ではからっきし駄目という不器用な男の生き様に強烈に惹きつけられました。
それから程なく、当時の最新版だったジェラール・ドパルデュー主演、ジェン=ポール・ラブノー監督版『シラノ・ド・ベルジュラック』が公開されたので見に行き、また一番知名度が高いと言われているホセ・フェラー主演版もビデオで見ています。他にも何度か映画化されているようですが未見です。

で、この舞台、流れるような台詞のリズムに酔いしれるお芝居になっていました。
しかしながら、個人的には癖のある台詞回しに少しばかり拒絶反応が出てしまい、慣れるまで時間が掛ってしまいましたね。
また客席からはかなりの笑い声が漏れる場面があったのですが、感覚が違うのか、その大半は何が可笑しいのかがわからずにキョトンとしてしまっていました。楽屋落ち的な場面が幾つかあったのはわかりましたが。

それと、終盤ではあちらこちらからすすり泣きが聞こえて来ていましたが、何故か哀しい場面の直後に笑いが起きる箇所があったりもして、そのあたりの演出はどうなのかなあと考えさせられもしました。一人で何役も演じることから来る分かり難さも多少ありましたし。
それでも約3時間の舞台は見応え充分ではありました。

ちなみにお話そのものはフィクションだと思いますが、シラノは実在の人物で、やはり剣だけでなく、小説や戯曲を書いたり、科学者や哲学者の顔を持っていたり、政治的な批判を行ったりとマルチな才能を持っていたようです。
同時代の著名人には、これまたアレクサンドル・デュマの『三銃士』の主人公にして実在の人物、かの剣豪ダルタニャンがいますが、実はこの作品にも本来ならばチラっと登場してくるはずなのですが、何故かその出番は宮本武蔵(!)に変えられています。他にも東京スポーツやデイリースポーツの記者を名乗る人物が出てきたりするお遊びもあるのですが、これはちょっとやりすぎな感はありますね。
またダルタニャンとシラノの2人が主人公となる、佐藤賢一著『二人のガスコン』という小説もありまして、期待していたのとはちょっと違いましたがなかなか面白かった記憶があります。
『シラノ・ド・ベルジュラック』_e0033570_7163266.jpg

それにしても、何度行ってもサンシャインシティは迷います。もうちょっとわかりやすくならないもんでしょうかね。
そしてこれだけの規模、立地にありながら、池袋駅とも東池袋駅との直結していないというアクセスの悪さ。高速バスを利用する人ならば良いのかも知れませんが・・・。


P.S.
市川右近のあの喋り方、もしかするとルパン三世も行ける?かも・・・(苦笑)。
Tracked from きんちゃんの観劇記(ネタ.. at 2011-02-06 19:45
タイトル : 「シラノ・ド・ベルジュラック」
約3時間、言葉の洪水だった。 流れてくる、言葉、言葉、言葉。 皆さんの言葉の端切れがよいので 耳にすすすーーーっと入ってくる。 面白かった! 舞台上に円形の木の台があって。 舞台サイドにはたくさんの木の椅子があって 衣装が積まれている。 オープニング。 舞台...... more
by odin2099 | 2011-02-06 07:17 | 演劇 | Trackback(1) | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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