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『花のあと』(2009)

満開の桜の下で、組頭の娘である以登は一人の若い武士と出会う。彼は下級藩士でありながら、海坂藩随一の剣の使い手と云われる江口孫四郎。女ながら剣に覚えのある以登は、父の許しを得て孫四郎と試合をすることになる。
孫四郎は女の剣だと馬鹿にすることなく真っ直ぐに打ち込み、以登の胸はときめく。それは彼女の初恋だったが、身分が違い、しかも許婚のいる身では叶わぬ想いであった。そして孫四郎は、潘の要職にある家に婿として迎えられることになる。
しかし大任を帯びて江戸へ向かった孫四郎は、お役目に失敗したとして江戸屋敷で自ら命を絶ってしまう。
孫四郎の妻・加世が、潘の重鎮・藤井勘解由とただならぬ仲にあることを知ってしまった以登は、孫四郎が罠にはめられたのではないかと疑念を抱く。
そんな折り、以登の許婚である片桐才助が江戸から戻ってきた。以登は才助を通じて事の真相を調べ始め、やがて潘内に不正があることを突き止める。やはり孫四郎は疎まれ、はめられていたのだ。
ただ一度竹刀を交えただけの男・孫四郎のために、以登は剣を手にするのだった・・・。

『花のあと』(2009)_e0033570_2136981.jpg原作は、短編集に収められている藤沢周平の同名の小説『花のあと』で、脚本は長谷川康夫と飯田健三郎、監督は中西健二。
出演は以登に北川景子、片桐才助に甲本雅裕、江口(内藤)孫四郎に宮尾俊太郎、藤井勘解由に市川亀治郎、以登の父・寺井甚左衛門に國村隼、他、相築あきこ、佐藤めぐみ、伊藤歩、柄本明ら。
祖母が孫たちに昔話をするという形で構成されていて、その語り(以登本人であるが)を担当しているのは藤村志保。

原作ではわざわざ「美人ではない」と但し書きがある以登を、もはや『セーラームーン』時代が隔世の感のある北川景子に演じさせるのはミスキャストなのだが、この映像的嘘がなければ映画そのものが成立しなくなってしまうだろう。

女剣士の復讐劇、という部分にスポットが当てられてはいるものの、ドラマそのものは淡々とした日常描写に力が入れられ、殺伐とした雰囲気もなければアクション物の体裁も取っていない。これは藤沢周平の世界に準じたものなのだろうが、映像が美しい分、若いキャストが浮いているような気がするのは、やはり時代劇を作るシステムが衰退しているからなのだろうか。

國村隼や柄本明、市川亀治郎らの存在感は画面を引き締めているし、最初は嫌悪感が先に立つものの、やがて意外に頼りがいがある面を見せる甲本雅裕の何とも言えない大らかさ、包容力は作品全体のアクセントになってはいるが、全体的に女優陣の所作のぎこちなさは残念である。頑張りは認めるのだが。

北川景子も日本髪が似合わず、着物がしっかりと身に付いていない印象を受け、しかも始終不機嫌そうな、ぶっきらぼうな表情ばかりで魅力は半減である。
剣士スタイルの時は髪を下ろし、またキリっとした眼差しが様になっているのだが、それでも立ち回りの不安定さは惜しいところ。彼女の身体能力は、もっと高いと思うのだが。
映画そのものも今一歩といったところで、縁取りはしっかりなされているのに色塗りのミスがある絵画のようなもどかしさを覚えてしまった。

そして、一青窈の歌う主題歌は邪魔だったなあ・・・。
Tracked from サーカスな日々 at 2011-05-29 03:41
タイトル : mini review 10500「花のあと」★★★★★..
『蝉しぐれ』『武士の一分(いちぶん)』など数々の時代劇作品の原作者として知られる藤沢周平の同名短編小説を、『青い鳥』の中西健二監督が映画化。江戸時代の東北を舞台に、ひそかに思いを寄せていた武士が自害したことを知り、その原因となった相手に敵討ちを果たそう...... more
Tracked from 映画的・絵画的・音楽的 at 2011-05-29 05:23
タイトル : 花のあと
 『花のあと』を丸の内TOEIで見ました。  数寄屋橋近くにあるこの映画館の存在自体は知っていましたが、入るのは今回が初めてです。暇な時間ができたので、そんな映画館を開拓するのも面白いと思い、また久し振りに時代劇を見てみるかということもあり、有楽町まで出か...... more
Tracked from みはいる・BのB at 2011-05-29 08:52
タイトル : 『花のあと』('11初鑑賞53・WOWOW)
☆☆☆★- (10段階評価で 7) 4月22日(金) WOWOWのHV放送を録画で鑑賞。... more
Tracked from シネマ大好き at 2011-05-29 08:53
タイトル : 花のあと
 藩の要職を務める寺井家の一人娘以都(北川景子)は、幼少から父の手ほどきを受け、男顔負けの剣道の達人。花見に出かけた日、藩内随一の剣士といわれる江口孫四郎(宮尾俊太郎)に出会い、父に頼んで彼と試合をする。  自分を女と侮らず、真剣に向き合ってくれた孫四郎…... more
Tracked from 黒猫のうたた寝 at 2011-05-29 08:53
タイトル : 花のあと☆独り言
久しぶりの時代劇です。しかも女剣士が主役。北川景子主演の『花のあと』原作は藤沢周平の『海坂藩大全』の中の短編のひとつ。たった一度竹刀を交えただけだった。そのとき以登が感じた想いは、たぶん恋だったのだろう。でも、彼女にも、彼にも決められた許嫁がいた。それに... more
Tracked from 京の昼寝〜♪ at 2011-05-29 08:58
タイトル : 『花のあと』
□作品オフィシャルサイト 「花のあと」□監督 中西健二 □脚本 長谷川康夫、飯田健三郎□原作 藤沢周平 □キャスト 北川景子、甲本雅裕、宮尾俊太郎、市川亀治郎、柄本 明、國村 隼、伊藤 歩、藤村志保(語り) ■鑑賞日 3月14日(日)■劇場 チネチッタ■cyazの...... more
Tracked from カノンな日々 at 2011-05-29 09:02
タイトル : 花のあと/北川景子、甲本雅裕
手に取って読んだことは一度もありませんが、時代劇映画の原作者といえば先ずはこの方、藤沢周平さんというくらいに映画好きの私には認知度の高い時代劇作家さん。今では藤沢周平 ...... more
Tracked from 日っ歩~美味しいもの、映.. at 2011-05-29 09:32
タイトル : 花のあと
藤沢周平の同名小説を映画化した作品。以前、原作を読んでいます。 江戸時代の東北地方の海坂藩、組頭の一人娘、以登は、幼い頃から息子を望んでいた父に剣を仕込まれ、藩内でも有数の剣の使い手となっていました。ある日、藩内でも有名な道場で一番の剣士だった孫四郎と竹刀を... more
Tracked from ダイターンクラッシュ!! at 2011-05-29 15:21
タイトル : 花のあと
2010年6月27日(日) 16:50~ キネカ大森3 料金:0円(Club-Cテアトル会員ポイント利用) パンフレット:売り切れ 『花のあと』公式サイト 例によって藤沢周平原作の時代劇。 いつもの藤沢周平映画のような雰囲気で、雪が積もる地方、気のいい人間や清廉潔白な人間が出ていて、腹黒い奴がいる。で、最後は成敗。藤沢周平の小説は読んだことがないのだけどさ。 そう言えば、近々藤沢周平原作「必死剣鳥刺し」という映画があるが、前売りのおまけが「必死剣耳掻き」。予告で登場した時は、かなり場内が騒然とし...... more
Tracked from 迷宮映画館 at 2011-05-29 15:45
タイトル : 花のあと
とっても静謐な映画でした。そして、力強い。... more
Tracked from 花ごよみ at 2011-05-29 17:18
タイトル : 花のあと
藤沢周平の小説「花のあと」 表題にもなっていいる短編が原作。 WOWOWで録画していたのを見ました。 感想を記してはいませんが「花のあと」は、 以前に読んでいます。 主人公は以登。 祖母(ばば)になった以登が、 孫たちに話しかけるという出だしで始まる。 以登...... more
Tracked from 日々のつぶやき at 2011-05-30 09:56
タイトル : 【花のあと】
監督:中西健二 出演:北川景子、甲本雅弘、宮尾俊太郎、市川亀治郎、國村隼、柄本明、伊藤歩   許されぬ恋の始まりでした。 「父の影響で男顔負けの剣術の腕前を持つ以登は、以前から強いと噂に聞いていた江口孫四郎に花見の折に声をかけられた。その時から孫四... more
Tracked from パピ子と一緒にケ・セ・ラ.. at 2011-05-30 14:35
タイトル : 花のあと
『たそがれ清兵衛』『蝉しぐれ』『武士の一分』など、数々の秀作時代劇の原作者として知られる藤沢周平の同名短編小説を映画化。『山桜』に続く「海坂藩大全」からの映画化第二弾 ...... more
Tracked from いやいやえん at 2020-04-01 16:15
タイトル : 花のあと
【概略】 藩の要職を務める名門・寺井家のひとり娘として生まれた以登。幼少の頃から父より剣の手ほどきを受けていた彼女が、武士の家に生まれた運命を受け入れながら凛として生きていく姿を描く。 時代劇 .0★★★★☆ 藤沢小説の映像化は見逃せないでしょ、ということで借りてみました。海坂藩ものですね。 名家の娘と下級武士の剣士、出会いは一時だが恋に落ちた。しかしどちらにも嫁ぐ・ムコに入る相手がいる...... more
Commented by sakurai at 2011-05-29 15:44 x
ははは、おっしゃる通りで、所作のへたくそさは、目を覆うばかりでした。
体型がまず着物に合わない。今回の菊池凛子さんの方が、かつらは似合わなそうですが、体型的にはいけそうです。
なんせ、地元なもんで、応援せざるを得ないです・・。
Commented by odin2099 at 2011-05-29 20:21
モデルなんぞをやっていた若い女性には、時代劇は厳しいのかも知れませんね。
彼女に合わせた着物を作ることは可能でしょうが、それでは時代物の衣装ではなく、あくまでも現代のファッションになってしまいそうですし。
腰の位置が大切なんでしょうかね。

戸の開け閉めなども一生懸命やっているのはわかりますが、ぎこちなく見えてしまっては減点対象。
もっとも彼女目当ての観客層などは、そういうのは気にならないのかも知れませんが。
Commented by よろづ屋TOM at 2011-05-30 14:26 x
連続コメで失礼します。
こうした一連の藤沢周平原作の映画化は、テレビ放映版しか観ていませんけど、どれもスタンスがメロドラマっぽいというか、どこかへなちょこで気迫に欠けるというか、どうもヌルい感が拭えませんねえ。

むしろ内野氏が演じた『蝉時雨』のNHK版には惚れましたが。
Commented by odin2099 at 2011-05-30 21:35
同じ時代劇好きでも、チャンバラや捕物帳が好きな人、「忠臣蔵」みたいな定番モノが好きな人、大河ドラマが好きな人、そしてこういった人情物(というのかな)が好きな人・・・と色々いますからね。

勿論複数のジャンルが好きな人、全部ひっくるめて好きな人もいるわけですが、どっちかというとこういう作品は苦手、というか興味を持っていませんでした。
それがちょっとずつですが興味が出てきたということは、歳喰ったってことなんでしょうかねえ???
by odin2099 | 2011-05-28 21:36 |  映画感想<ハ行> | Trackback(14) | Comments(4)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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