『BODY/ボディ』(1993)
2011年 09月 08日
はたしてレベッカは遺産目当てで老富豪に近付き、激しいセックスを強要して彼を死に追い込んだのか――?!
容疑者となるレベッカにマドンナ、弁護士フランクにウィレム・デフォー、対立する検事にジョー・マンティーニャ、他にアン・アーチャー、ジュリアン・ムーア、ユルゲン・プロホノフ、フランク・ランジェラらが出演した法廷ミステリー物。
製作はディノ・デ・ラウレンティス、監督はウリ・エデル。
『羊たちの沈黙』でサイコ・ミステリーがブームになり、シャロン・ストーンが一躍セックス・シンボルに躍り出た『氷の微笑』を経てエロティック・サスペンスへと昇華したが、これはその真打ち的な作品。
製作側も『氷の微笑』を意識した発言(曰く、「全然別物である」というお馴染みのパターン)を繰り返し、マドンナ自身もシャロン・ストーンに対抗意識を持っていたようだが、オリジナリティという点ではかなり分が悪い。
殺人事件が起こり、容疑者は謎めいたセクシーな美女、そして彼女に関わった男(あちらでは刑事、こちらでは弁護士)が疑惑を抱きながらもその魅力に抗いきれずに溺れてゆく、という流れは同じだからだ。二番煎じの誹りは免れないだろう。
「SEXで人は殺せるか」というコピーは、どちらの作品でも使えそうだ。
一方でストーリーをきちんと追っていけば、その内容はかなり趣を異にすることにも気付くだろう。
『氷の微笑』はサイコキラーの話であり、犯人はキャサリンか、それとも他に真犯人はいるのか、という興味で引っ張っていくのに対し、『BODY』ではレベッカが犯人か否か、だけに絞り込まれている。
彼女に不都合な証拠が次々に上がっていく中で、フランクはあの手この手でそれを排して行く。底の浅い部分はあるものの、法廷での二転三転のどんでん返しはなかなか見応えがあり、マドンナの抑えた、クールな演技も映画初出演としては上出来ではないか。
法廷で光るクラシカルな美貌と、一転してセックス・シーンでの熱情的なというか獣染みたパフォーマンスのギャップも魅力的で、そこに彼女の女優としてのポテンシャルの高さを感じるし、見どころはマドンナの肢体だけではない。あまり評判の芳しくない映画だが、一ミステリー映画としても充分に見せてくれる作品である。
とはいうものの残念なのはその決着の付け方で、親切と言えば親切だが、あまりに薄っぺらすぎる。今回見直してもやはり納得いくものではない。
それに「男は無実を信じた。女は無罪を望んだ。」というコピーも、微妙にネタバレしているのでサスペンス映画としては如何なものか。それともラブ・ストーリーとして売りたかったのだろうか。