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『バサラ戦記 1/三日天下』 河丸裕次郎

厩橋城で出会った伊達政宗と真田幸村はたちまち意気投合、そこに織田信長がいないと知ると、ひと目信長に会おうと安土城、そして京都の本能寺へ。途中で彼らを迎えた蒲生氏郷の仲介もあり、首尾よく信長と言葉を交わす機会を得るが、流石の怖いもの知らずの若者も、その存在感に圧倒される。一方の信長も、二人を即座に気に入るのだった。
だが信長との対面の後、堺見物をしてから帰国の途に就こうとしていた二人の耳に、本能寺で信長が死んだとの報せが・・・。

「本格戦国シミュレーション」と銘打たれたシリーズの第1巻。
若き日の真田幸村と伊達政宗がコンビを組んで活躍するということで楽しみに読み始めたんですが、ちょっと期待していたのとは違ったなあ。
せっかく蒲生氏郷まで出てくるのに・・・。

『バサラ戦記 1/三日天下』 河丸裕次郎_e0033570_2248463.jpg歴史の「もしも」を考えるのは楽しいもので、例えば衣川で源義経が死ななかったらとか、豊臣秀頼が大坂城から逃げのびていたら、その後の歴史はどういう風になっていたのかな、というのは歴史に興味を持つ人なら、一度は考えたことがあるんじゃないかと思います。
荒巻義雄の『紺碧の艦隊』などの”架空戦記モノ”もこのパターンですけれど、こういうのはどこでリアリティを保つのかが難しい問題です。豊臣家があっけなく徳川家を滅ぼしたり、武田信玄が幕府を開いたり、日本がアメリカやドイツに勝利したり、何でもありですけど歯止めが効かない面もありまして、正直いうとあんまり好きじゃありません。

一方で歴史の大枠というか流れは変えないものの、そのなかにちょっとした「もしも」を潜ませるというのもあります。
架空の主人公が歴史上の著名人と出会うというパターンは、それこそ枚挙に暇がないでしょう。これが実在の人物同士だと、「絶対にそんなことはない」ケースと、「記録にはないけど、そういうことがあったとしても不思議じゃない」、「まずないだろうけど、完全に否定出来る材料はないし、あったとしたら面白い」というようなケースに分けられると思いますが、この本はそんな、歴史上の隙間を埋めるお話なのかな、と勝手に期待していたのです。

ところがこのお話は前者のタイプの「もしも」でした。
政宗と幸村は氏郷と共に大坂城にある信長の弟・信勝(信行)の息子津田信澄の元へ。そこで反明智光秀の軍を上げるのですが、神戸信孝と丹羽長秀に光秀との内通を疑われて攻撃されます。史実だとここで信澄は死ぬのですが、この作品の中では幸村と政宗によってその計略は見抜かれ、逆に長秀が戦死、一命を取り留めた信孝は出家して高野山へ、という展開。
その後の光秀との合戦も、幸村と政宗の奇策によって勝利し、最終的に光秀を討ち取るのは政宗です。

次の2巻でようやく柴田勝家や羽柴秀吉が登場するようですが、さーてどう決着を付けるものかいな。
そしてまだまだ先のことでしょうが、最後の最後は政宗と幸村が天下を賭けて雌雄を決することになるのかな。
苦手なタイプのお話ですが、しばらく付き合ってみようかな、という気にはなってます。
by odin2099 | 2012-01-31 22:49 | | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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