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『さらば宇宙戦艦ヤマト/愛の戦士たち』 若桜木虔/西崎義展:監修

『宇宙戦艦ヤマト』のノベライズは朝日ソノラマから刊行されましたが、『さらば宇宙戦艦ヤマト』のノベライズは集英社が先行しました。このコバルト文庫版は映画公開の直後に発売、公開前は伏せられていたラストシーンも明らかにされるということで売れたんでしょうね。以後集英社はコバルト文庫とモンキー文庫の両シリーズで、アニメブームが鎮静化する83年頃までアニメ作品のノベライズを量産することになります。また著者の若桜木虔もフル回転で執筆を続け、コバルト文庫以外に文化出版局ポケットメイツでも健筆を奮うことになります。

斯くいう自分も発売日に購入して即時読破。公開初日に見に行った友人から聞いた、「ヤマトが特攻して玉砕する」というラストシーンに半信半疑だったものの、このノベライズを読むことで確信して劇場に並んだことを覚えています。暑い日だったなあ。しかも2時間半、立ち見だったっけ。

『さらば宇宙戦艦ヤマト/愛の戦士たち』 若桜木虔/西崎義展:監修_e0033570_1112567.jpgこの本が出た後しばらくしてから、朝日ソノラマから「構成:西崎義展」名義のノベライズも出まして、おそらくそちらがオフィシャル・ノベルということになるのかも知れませんが、この若桜木版はかなりユニーク。単にシナリオを引き写しにしていないのは、作家としての意地だったのかも知れませんね。

この『さらば』だけではなく他の「ヤマト」以外の作品にも共通する特徴ですが、物語が徹底的に主人公サイドの視点で進められる、というのが上げられます。
この作品でいうと、ズォーダー大帝やデスラー総統は、古代たちと会話をするシーン以外には出てきません。また地球艦隊と白色彗星帝国の艦隊との戦いも、ヤマトの眼前で繰り広げられた部分の描写しかありません。では、その間の事情がどう説明されているかというと、テレサがテレパシーで見せた古代の夢の中、という形なのです。まあ最初のうちは良いのですが、こういうのが続くと何だか不自然な気がして仕方ないのですが・・・。

もう一つの特徴は、古代とユキのキスシーンが何度か出てくること。これも他の作品で見られるポイントです。
これに関しては好みの問題だと思いますし、流れとしてそういうシーンがあっても良いなと思わないでもないですが、こういったレベルでの本編にないシーンの追加は、下手をするとキャラクター・イメージの崩壊に繋がりかねませんので、個人的にはあまり賛成出来ない部分ではあります。
by odin2099 | 2012-10-08 11:13 | | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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