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舞台『真田十勇士』

赤坂ACTシアター5周年シリーズなのだそうです。
脚本:中島かずき、演出:宮田慶子。出演は上川隆也(真田幸村)、柳下大(猿飛佐助)、倉科カナ(ハナ/花風)、葛山信吾(霧隠才蔵)、山口馬木也(服部半蔵)、松田賢二(由利鎌之助)、渡部秀(真田大助)、相馬圭祐(豊臣秀頼)、小須田康人(大野修理亮治長)、粟根まこと(根津甚八)、植本潤(望月六郎)、小林正寛(三好清海入道)、俊藤光利(大野治房)、佐藤銀平(三好伊佐入道)、玉置玲央(穴山小介)、三津谷亮(筧十蔵)、賀来千香子(淀の方)、里見浩太朗(徳川家康)という顔触れです。

駿府城下で鷹狩りに興じる家康を密かに狙うはぐれ忍びの佐助と鎌之介の前に、忍びの一団が現れる。家康の護衛をする伊賀者かと思われたが、実は彼らは真田幸村配下の者たちだった。家康は予てより幸村を自軍に引き入れようと画策していたのだが、幸村は自ら家康を訪ね、堂々と宣戦を布告するのだった。
しかし大坂入城を果した幸村だったが、実績のない彼の建策は退けられ、また徳川方への内通も疑われる。そんな折、大坂へとやってきた佐助と鎌之助は、飯屋を切り盛りするハナという若い娘を巡り幸村麾下の清海と伊佐といざこざを起こすのだが、それを切っ掛けに幸村に使えることになる。ここに幸村の下に十人の勇者が集うことになった…。
佐助が秀頼の寝所に忍びこむという重大事件を起こすものの、それを逆に利用して自らの構想=真田丸を築くことを認めさせる幸村。やがて戦が始まるのだが、幸村以下十勇士の面々は大いに徳川軍を苦しめるのだった。だが家康は策を弄して大筒による大坂城攻撃を以って和議を結び、堅牢なる城を裸同然にしてしまう…。

舞台『真田十勇士』_e0033570_14464735.jpg科白では「四十過ぎ」と言ってますが、家康からも若造扱いされているように本作の幸村は血気盛んな青年武将として描かれています。父と兄の影である自分の武名を何とか天下に響かせたいと願っていますが、父の遺命を守って家康と対峙するものの、いざという時に遠大で深遠なるビジョンを抱いている家康に打ちのめされ、己を見失うという脆さも持っています。
この辺り、男が男に惚れる的なカリスマ性にやや欠ける嫌いがあるのはちょっと残念ですね。十勇士は主義主張というより、人間=真田幸村に惹かれて集まってきているのですから。

また佐助と鎌之助がコンビで、しかも後から参加するというパターンは結構珍しいかも知れません。しかも佐助が太閤秀吉のご落胤? かつて柴田錬三郎原作のNHKの人形劇では武田勝頼の忘れ形見になってましたけど、本作では秀頼の異母兄とのことです。
それを知ってからの幸村の目的は、豊臣の血を絶やさない為にひたすら佐助を生き延びさせることへとシフト。これは真相を知った秀頼や淀の方の密命でもあります。

その佐助に絡んでくるのが服部半蔵配下のくノ一、花風。飯屋の娘ハナとして真田の一党に近付きますが、いつしか佐助と心を通わせるようになり、最後には佐助を庇って若い命を散らせる…かと思いきや、佐助と一緒に明国へ脱出。エンディングではどうやら二人はその後アメリカへ渡ったらしいことが語られ、徳川の世に終わりを告げた黒船=ペリー提督の乗艦の名が彼の出身地から取った「サスケハナ」号、これは日本から逃れてきた男女から付けられた地名、つまり豊臣の血筋が徳川を滅ぼしたということになっています…? ちょっとこれ、無理がありすぎる気もしますがね。

で、佐助がメインフューチャーされた関係で、他の勇士の皆さんは割を食った感がありまして、個々人には殆ど見せ場無しで、中盤すぎるくらいまでは誰が誰やらサッパリ。いや終盤でも乱戦になると判別できなくなってしまいました。世界チャンピオンだったという三津谷亮演じる筧十蔵の、一輪車に乗ってのアクションなどはインパクトありましたけれどねえ。

アクションといえば、意外に「猿飛」と呼ばれる佐助がそれほど身軽に見えなかったのが残念。もっともこの作品に関しては「猿飛」は「猿を飛び越える」→「太閤秀吉を越える」という意味だそうですが。そんな中で軽快な動きを見せていたのは、カンパニー最年少だという渡部秀。伊達に仮面ライダー出身じゃありません。他にもウルトラ、ライダー、戦隊出身者の多いこのカンパニーですが群を抜いていました。
しかしながら圧巻だったのはやはり里見浩太朗で、最後に上川隆也とのチャンバラシーンがありますが、これは流石の貫禄でした。出てくるだけで舞台が締ります。

比較的評判が良かったので期待していたのですが、思っていたほどではなかったかなあ。
ただこの舞台、傾斜を作りそれを活かした演出、殺陣を行っているのですが、二階席の真ん中ともなればその工夫も殆どわからなかったり、突然流れてきた中島みゆきの主題歌にどひゃ~ってなったりということもあったので、然るべき席に座って鑑賞していたら感想も違うものになったかも知れません。DVDのリリースも予定されているようですから、機会があったら見直してみたいですね。

ところで今回の舞台は企画製作がTBSですが、今度は年明けに「日本テレビ開局六十年特別舞台」と銘打たれた『真田十勇士』も上演されます。奇しくも競作となりましたが、時代に求められているのでしょうか?
Tracked from きんちゃんの観劇記(ネタ.. at 2014-11-13 07:24
タイトル : 「真田十勇士」
内容的には王道の時代劇。 上川vs里見の芝居は重厚。 話の展開はテンポ良くスピーディーで 迫力の殺陣がたくさんあって、 とても面白かったです。 上川くんは華があり台詞も実に明瞭。 葛山さんと松田さんが並んで闘う姿はアメージングだわ! 嬉し過ぎる!! 葛山さん...... more
by odin2099 | 2013-09-15 14:47 | 演劇 | Trackback(1) | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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