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『里見八犬伝』

昨日は新国立劇場へ、鈴木哲也の脚本を深作健太が演出した舞台版「里見八犬伝」を観に行ってきた。
2年前に上演された時に興味を惹かれたものの、なかなか時間が取れなかったりで苦労しているうちにチケットを取り損ねて断念したという曰くつきのお芝居で、今回再演となり念願の観賞となった。

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出演は犬塚信乃に山﨑賢人、犬川荘助に『仮面ライダーディケイド』仮面ライダークウガ=小野寺ユウスケ役の村井良大、犬山道節に『特命戦隊ゴーバスターズ』ブルーバスター=岩崎リュウジこと馬場良馬、犬田小文吾にD-BOYSの荒井敦史、犬江新兵衛に『仮面ライダー鎧武』仮面ライダー龍玄=呉島光実役が記憶に新しい高杉真宙、犬坂毛野に玉城裕規、犬村大角に『獣電戦隊キョウリュウジャー』キョウリュウゴールド=空蝉丸こと丸山敦史、犬飼現八に二代目『宇宙刑事ギャバン』十文字撃の石垣佑磨、里見義実に『ウルトラマンネクサス』や『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』で活躍した俊藤光利、房八に舞台『銀河英雄伝説』でユリアン・ミンツを演じた長江崚行、ぬいに野口真緒、悪四郎にJAE所属で東映ヒーロー物などでお馴染みの横山一敏、浜路に江田結香、佐母二郎に猪塚健太、金碗大輔(後のゝ大法師)に『仮面ライダー響鬼』の仮面ライダー斬鬼や『仮面ライダーキバ』への出演がある松田賢二、そして玉梓と伏姫の二役を白石美帆という面々。


『里見八犬伝』_e0033570_10312107.jpg意図的なのか偶然なのか、昨今はヒーロー番組出身者が出演する舞台が増えている気がするが、これもそんな一本。それを差し引いても若手注目の男優が多数共演していることもあってか、客席の大半が女性客という異様な雰囲気だった。深作健太の父・深作欣二はかつて角川映画『里見八犬伝』を監督したが、その作品で犬飼現八を演じていたのが『バトルフィーバーJ』曙四郎=バトルケニアや『電子戦隊デンジマン』デンジブルー=青梅大五郎、そして初代『宇宙刑事ギャバン』こと一乗寺烈を演じた大葉健二で、今回は二代目ギャバンの石垣佑磨が現八役という不思議な縁がある。


ということで期待して観た芝居だったが、ストーリーの運びにはかなり落胆。
性格破綻者揃いの八犬士、伏姫の色香に惑わされ妻子を捨てたり、成長した我が子と剣を交えたいがために闇落ちして復活を遂げるなど、ただ己の欲望に忠実なだけの金碗大輔、正義の象徴どころか諸悪の権現である里見義実、濡れ衣を着せられた憐れな女・玉梓、一方的に任務を押し付けるだけでろくに事情も説明しようとせず、煙に巻くだけの無責任な伏姫……。


『里見八犬伝』_e0033570_10390438.jpg道節が捨てられた大輔の息子、玉梓が無実の罪で処刑された義実の正室で、その娘である伏姫を毛嫌いした義実が八房共々幽閉したなどの新解釈、新設定は面白いと思ったが、結局のところ何故この八人が選ばれたのか、それぞれが持つ珠に浮かび上がる文字の意味合いなど、納得出来る展開にはなり得ていない。


兄妹として育ちながら恋愛の情に溺れ、最愛の者を己が手にかけてしまう信乃や、玉梓側の一味に八犬士の一人がいる、というのは深作欣二監督版『里見八犬伝』(というより原作となった鎌田敏夫の小説『新・里見八犬伝』)と同工の趣向。ただあちらで寝返るのは道節ではなく、現八だが。


そして主演の山﨑賢人は終始気取った癖のある台詞回しで、聴いていて非常に耳障り。おまけにこれは演出の所為だろうが叫びっ放しで演技にメリハリがないので観ていて辛い。馬場良馬や荒井敦史も感情の起伏が激しいシーンがあるが、その前後で芝居を変えているからそれが活きてくるが、一本調子ではそれも無理。もう少し頑張って欲しかったところ。他のキャストが若手ながらそれなりに”出来る”メンバーだけに、余計それが目立ってしまう。


殺陣にしても丸山敦史や石垣佑磨、馬場良馬に村井良大など、横山一敏らを向こうに回して卒なくこなしているので総じて見応えはあるものの、期待が大きかった分だけ一本の舞台としてはかなり不満が残るものとなってしまった。
種々練り直し、キャストも交代させながらの再々演も望みたいところだ。

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ちなみに前回の初演キャストは犬塚信乃にAAAの西島隆弘、犬川荘助に『仮面ライダーオーズ』火野映司こと渡部秀、犬山道節に『仮面ライダーカブト』仮面ライダードレイク=風間大介及び『仮面ライダー/THE NEXT』版の仮面ライダーV3=風見志郎を演じた加藤和樹、犬飼現八にD-BOYS所属で『獣拳戦隊ゲキレンジャー』で理央役だった荒木宏文、犬田小文吾は村井良大、犬坂毛野に『仮面ライダー電王』や『ウルトラゾーン』『生物彗星WoO』への出演歴のある矢崎広、犬村大角は『ウルトラマンコスモス』のフブキ役でお馴染み市瀬秀和、犬江親兵衛に早乙女友貴という八犬士で、左母二郎が小澤雄太、房八が高杉真宙、ぬいに金子舞優名、里見義実が『ゴーバスターズ』へのゲスト歴もある真島公平、悪四郎は横山一敏、ゝ大法師が『ゴジラ×メガギラス/G消滅作戦』にも出演していた山口馬木也で、浜路に森田彩華、そして玉梓と伏姫が香寿たつき、という布陣。全体的に今回の方が若返った印象だが、機会があればこちらのヴァージョンと見比べてみたい。


最後に音楽について一言。
いきなりワーグナーの「ジークフリートの葬送」が流れたのには驚いたが、それ以上に驚いたのが続けてOVA『ジャイアントロボ THE ANIMATION/地球が静止する日』の音楽が流れたこと!
音楽担当者としてクレジットされているのは天野正道なのだが、どうやらこの舞台のために作られた曲は一曲もなさそう。調べてみると初演の時も同じだったようで、聴き覚えのない曲もあったので『ジャイアントロボ』以外からの流用もある模様。
ビッグバジェットのプロジェクトで、何故このような事態になったのだろうか?


【ひとこと】
石垣佑磨の「南斗水鳥拳!」はアドリブ?


by odin2099 | 2014-11-09 10:40 | 演劇 | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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