【徒然なるままに・・・】

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「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”

『宇宙戦艦ヤマト2199/星巡る方舟』(2014)

e0033570_22494116.jpg昨秋放送を終了した『宇宙戦艦ヤマト2199』、その最終回で驚かされたのが新作劇場版製作決定の報。噂レベルでは色々と囁かれていたものの、初めて公にされた瞬間でした。企画そのものは遡ること半年近く、劇場で『第五章』が公開されていた頃には決まっていたようですが、誰もが考える「続編」ではなく、シリーズ24話と25話の間――イスカンダルからの帰路、そしてデスラーの逆襲が行われる前――という時間設定は、従来の「ヤマト」の流れからするとかなり思い切ったものです。その分「ファンによる二次創作」っぽさも感じられますが、そもそもこの『2199』という作品が、ある意味で「宇宙戦艦ヤマト」という作品に対する究極のファンムービーである、とも言えますので、作り手が自分の趣味を剥き出しに、愉しんで作り上げたということなのでしょう。


物語は壊滅寸前の月面基地、残された空間騎兵隊員たちの描写から始まります。この連隊長が今回のヒロイン桐生美影の父親で、生存者の一人が齊藤始、シリーズのファンには懐かしいキャラクターですね。窮地の彼らを収容するのが、ヤマト支援の為に展開していた「きりしま」の土方司令。ここでヤマトが人類最後の希望であることが語られます。


e0033570_22501548.jpg続いて今度はデスラー暗殺に失敗したクーデター派の残存艦隊が、ガトランティスの襲撃を受ける場面へ。『2199』本編では”蛮人”と呼ばれているものの、今一つその実態が明らかにされていなかったガトランティスがここで前面に出てきます。


流れる音楽は「白色彗星」のメロディーをアレンジしたものですが、そのバーバリズム溢れるアレンジは、パイプオルガンを中心にして知的で宗教的な高尚さも感じさせたオリジナルの劇伴とは真逆なもの。自分が初めて観た本格的なミュージカルは四半世紀ほど前に上演された『GANKUTSU-OH』という作品なのですが、この舞台の音楽担当が宮川彬良で、以来耳にこびり付いて離れないその時のお気に入りの音楽群を彷彿とさせる仕上がりで、個人的には感泣ものでした。


一転して舞台はヤマトへと移ります。艦内シフトの交代、オフの時間を思い思いに過ごす乗組員たち。ダーツに興じる加藤、篠原、沢村ら航空隊員や、古代に兄の面影を重ねる山本、雪や山本と記念写真を撮る島……シリーズでは描かれなかった日常がここにはあります。商売としては成り立たないかも知れませんが、こういったシーンだけずっと眺めていたい気持ちにもさせられますね。『YRAラジオヤマト』という番外編的なラジオドラマがありますが、それの映像版といった按配の小品もいつか観てみたいものです。


しかしそれでは物語は進みません。突如ヤマトに襲い掛かる謎の艦隊、その正体は?!という辺りから長閑なムードは一変し、アクションドラマへと変貌していくのです。
沖田艦長、それに真田副長不在時に艦の指揮を執る古代。クライマックス・バトルでも古代が指揮を執りますが、旧作にあって『2199』にはない「艦長代理としての古代」を弥が上にも思い出させてくれます。シリーズ終盤では七色星団の決戦といい、ガミラス本星での攻防といい、殆ど活躍の場面がなかった”主人公”古代進の面目躍如?


謎の敵は勿論ガトランティスで、旧『宇宙戦艦ヤマト2』に登場した火炎直撃砲ならぬ火焔直撃砲で執拗にヤマトを狙います。緊急ワープで脱出を試みたヤマトは薄鈍色の不思議な空間へ彷徨い込む羽目に。恒星すら観測出来ないその空間で一つだけ輝く星、ヤマトは吸い寄せられ、そこでガミラスの発する救難信号をキャッチするのです。


e0033570_22503449.jpg救難信号を発信していたのは七色星団の激戦を生き残ったバーガーたちでした。偵察に向かった古代たちはザルツ人と間違われ、この不思議な惑星での奇妙な共同生活が始まります。徐々に芽生える共感と理解、しかしやがてそこに亀裂が入っていきます……。


旧TVシリーズ『宇宙戦艦ヤマトIII』に登場する惑星ファンタムを少なからず連想させるその星は、実は滅びてしまったと思われたジレル人の巡礼たちが密かに暮らす星であることがわかり、シリーズ第14話を拡大して再話したような趣も。
そして「異星人とも理解し合える」との古代守の科白も引き合いに出され、意外にも総集編『追憶の航海』が切り捨てた部分をトレースすることで、物語は更に進んでいきます。


総集編『追憶の航海』はてっきり新作『星巡る方舟』を補完する目的で作られたのだと思っていました。平たく言ってしまえば「長い予告編」であると。ところがシリーズを知らずに『追憶の航海』だけを観て今回の新作に臨んだ観客がいたとしたら、知らない場面の連続に驚いたかもしれません。総集編で割愛されたシーンからの流れで物語は展開して行っていますので。
でも逆にそこに興味を持って、シリーズ全体を見始める新たなファンが増えてくれたら嬉しく思います。


宣伝では「ヤマトVSガトランティスVSガミラス」の三つ巴戦を強調していましたが、実のところヤマト・ガミラス連合軍VSガトランティス軍というのがクライマックス・バトルです。
ここまでで丹念に描かれてきた各キャラクターたちに共感さえ出来れば、後は圧倒的な映像的快感、それにプラスして音楽や効果音なども含めた音響的快感に身を委ねるのみです。


作品の完成は「ヤマト」の伝統に倣って?公開直前になってしまいましたが、もしこのドラマをシリーズの中でやるとしたら1話分か、せいぜい2話の前後編で消化していたのではないかと思います。それを2時間かけている訳ですから、「ヤマト」劇場版史上最も余裕のある作品だと言っても過言ではありません。それが『2199』世界にどっぷりと浸らせてくれる満足感を与えてくれる一方、どうしても受け付けない人もいるかと思います。『2199』の真の結末を描く、というコピーとは違い、もしかすると真の『2199』ファンか否かの試金石となる作品なのかも知れません。


【ひとりごと】
オープニングテーマに乗せて綴られる名場面集、『追憶の航海』のオープニングでこそ、こういった趣向が欲しかったところです。
いきなり冥王星基地攻略から始まるのですから、ヤマト発進からワープテスト、波動砲による浮遊大陸破壊、そして反射衛星砲の直撃を受けて沈むヤマト…辺りまでをダイジェストで観せてくれていれば…。


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by odin2099 | 2014-12-17 22:55 |  映画感想<ア行> | Trackback(10) | Comments(2)
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2199の結末ではないですね。
ただ、「対ガトランティス」部分は、年が明けちゃって「2200」だと言うのなら、2199の結末と仕方なく、言えるのかもしれない。
Commented by odin2099 at 2014-12-20 09:04
『宇宙戦艦ヤマト2199』というタイトルで新作を作る以上続編にはならないだろうと思ってましたがその通りでした。
旧作では年代を明示しながら結構な矛盾点が多かったですけどね。
例えば『新たなる旅立ち』は『ヤマト2』の1か月後という設定ですが、どう考えても2201年には収まりきらない…(^^ゞ
あと『ヤマトIII』は2205年という設定がありながら、劇中では何故か「23世紀初頭」という表現。
これが結果的に『完結編』の2203年という設定を辛うじて成立させている…?
いや、それも無理だなあ。

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