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『呼び出し』 ジョン・グリシャム

『呼び出し』 ジョン・グリシャム_e0033570_15544328.jpg死期が迫った元判事の父に呼び出され、大学教授のレイとその弟である薬物中毒患者のフォレストは久々に実家へと戻ることになったが、既に父ルーベン・アトリーは息を引き取っていた。しかしそこでレイは、清貧で品行方正だったはずの父が、一切の記録を残さなかった300万ドルもの現金を見つけてしまう。父は何故こんな大金を残すことが出来たのか。そして記録に残っていないのは何故なのか。レイはフォレストにもその存在を知らせず、父の友人だった弁護士や元秘書だった女性らから情報を得ようと務めたが、依然金の出所は謎のまま。そうこうしているうちに、レイの元へ脅迫状が届き、家が荒されるという事件が起こり始める。必死に手がかりを探すレイは、父の担当した公判の記録を調べ、やがて・・・。

『裏稼業』同様にアカデミー出版の超訳として刊行されたジョン・グリシャム作品の2作目。ハードカバーで発売されたときは『召喚状』という書名だったが、ソフトカバー版では何故か表題のように改められた。

”超訳”故の読みやすさか、それとも元々持っている”ジェット・コースター・ノベル”、”グリシャム・マジック”故かはわからないが、上下巻を一気に読ませる勢いは健在。しかし『裏稼業』もそうだったけれども、読んでいてどうもこれまでのグリシャムらしさを感じない。
そもそもストーリーがそうなっているのか、それとも”超訳”のスタイルがグリシャム作品と合わないのか。この作品も、結局は金を巡っての汚い争いということで落ち着いてしまい、ラストも何だか釈然としないものだった。
『呼び出し』 ジョン・グリシャム_e0033570_1939760.jpg
ところで作品中にタバコ訴訟が云々という台詞があるのだが、これはもしかすると『陪審評決』での事件を指しているのだろうか。だとすれば作品世界の幅が広がっていくようで面白い。
かつては『法律事務所』、『ペリカン文書』、『依頼人』の3作品に共通する人物を出したり、『処刑室』では『評決のとき』の事件に言及させたりしたグリシャムのこと、ありえないことではないと思うが。
Commented by 小夏 at 2006-03-06 22:04 x
そういやジョン・グリシャム作品はずいぶん長いこと読んでないや。
以前は夢中で読みふけったものですけど、確か何かのキッカケで挫折しちゃったんですよ。理由は何だったか忘れちゃったけど。
今読んでるのが落ち着いたら、再び手に取ってみようかな。昔はダメでも今ならオッケーってこともあるし(^^;
Commented by odin2099 at 2006-03-06 22:59
>千夏さん

僕もずーっと読んでたんですが、ここ2作品ばかり読んでないですね~。
マイクル・クライトン然り、スコット・トゥロー然り、トム・クランシー然り・・・なんででしょう?
そういやシドニィ・シェルダンやフレデリック・フォーサイスも一時期読み漁ったんだけどなぁ。
Commented by asayakedrop at 2006-03-13 21:15 x
私、グリシャムも好きでして…このタイトルを見て、「新刊??」と思ったら「召喚状」のことなんですね ^^;
「テスタメント」で作風が変わった気はします。私は「路上の弁護士」の青くささや、「処刑室」の静かさが好きなんですが。
Commented by odin2099 at 2006-03-13 22:56
>asayakedrop様

こんばんは、いらっしゃいませ♪
グリシャム作品は『法律事務所』から入りまして、最初は取っ付き難いなぁと思ったりもしたんですが、途中からはすっかりはまってしまいました。
『ペリカン文書』、『依頼人』と立て続けに読みましたけれど、個人的に好きなのは『評決のとき』と『原告側弁護人』、それに『陪審評決』でしょうか。
『路上の弁護士』や『テスタメント』は今ひとつピンとこなかったですし、『裏稼業』はなんだかグリシャムっぽくないなぁと感じてました。
by odin2099 | 2006-03-06 06:27 | | Trackback | Comments(4)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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