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『007/死ぬのは奴らだ』(1973)

『007/死ぬのは奴らだ』(1973)_e0033570_2249234.jpgショーン・コネリーは一作だけの復帰で再びシリーズを去り、今度はロジャー・ムーアが3代目ジェームズ・ボンドとしてシリーズ初登場。
原作者イアン・フレミングはコネリーよりもムーアをボンドのイメージだと捉えていたようで、実際シリーズ立ち上げの際や、コネリーが降板を表明した時などには幾度も候補に挙がっていたものの諸事情から実現せず、ようやくフレミングの死後に登板と相成った。

鈍重なイメージのあるコネリーよりも洗練された雰囲気のムーアの方が個人的には好みだし、前作『ダイヤモンドは永遠に』に比べると明らかにボンドが若返った印象があって悪くないと思うのだが、コネリー=ボンドを見慣れたオールドファンからは相変らず不評のようだ。
もっとも1930年生まれのコネリーに対して、ムーアは1927年生まれ。
実際は3歳も年上なのだがそうは見えない(『ダイヤモンドは永遠に』公開時にコネリーは41歳、対するムーアは本作公開時に46歳である)。
ちなみにこの時はムーア以外ではバート・レイノルズが有力候補だったという。

初期の頃のミステリー・サスペンスの妙味は既に薄れ、バラエティに富んだ娯楽大作への転化が一層進んできているのも、ファンには納得いかないようだ。
コネリーとムーアの役者としての質の違いもあるし、何よりもシリーズは生き物であるから致し方ない部分もあるのだが。

に、してもお話は決して面白くはない。
ボンドの相手が麻薬王というのもスケールを感じさせないし、味付けとして(?)ブードゥ教をとり入れているが、それも活かしきれず、興行的にもイマイチであった。

『007/死ぬのは奴らだ』(1973)_e0033570_2249307.jpgまた、人種差別色が強いとの批判もある。
主人公が白人で、悪役が黒人。
しかも主人公は白人のヒロインを黒人から救い出すが、もう一人のヒロインともいうべき黒人女性は、途中で裏切り者として殺されてしまう、といった具合。
単純に見ていると、出てくる黒人が全て悪人に見えてくるほどだ(勿論ボンドの味方となる黒人もいるのだが)。
おそらくは当時の<黒人映画ブーム>に便乗しただけの設定で他意はなかったものと思われるが、満を持して登場したはずのムーアは、実は前途多難だったのである。

ただ、ソリテールを演じたジェーン・シーモアは清楚さと妖艶さを併せ持った感じで実に良く、この作品における最大の収穫と言えるだろう。
これまでのボンド・ガールの中では『ロシアより愛をこめて』のダニエラ・ビアンキに近いライン(キャラクターはまるで違うが)。
シリーズ中でも少ないタイプだけに、余計インパクトが強い。
アクション面では沼を使ったボート・チェイスのシーンが、斬新かつ迫力ある仕上がりになっている。
Tracked from 萌映画 at 2006-11-12 00:19
タイトル : 007/死ぬのは奴らだ(1973)
007の第8作。ロジャー・ムーア初登場、女たらしあり、カーチェイスあり、ボートチェイスあり、怪しいブードゥーあり、蛇あり鰐あり…、の盛りだくさんの娯楽作である。 欲張り過ぎて焦点がボケた感じがあるが、まあ、007の王道ではあるだろう。 ロジャー・ムーアはこのときすでに45歳位。初代ショーン・コネリーに比べてだいぶ油が抜けている感じだ。 ボンドガールのジェーン・シーモアが美しくて素敵。ひらひら衣装が嫌みにならずによく似合う。 そして、監督がガイ・ハミルトンなのでCIAのフィリックス・ライターがまたまたか...... more
Tracked from 映画鑑賞★日記・・・ at 2007-02-08 23:27
タイトル : 007/死ぬのは奴らだ
『LIVE AND LET DIE』公開:1973/07製作国:イギリス監督:ガイ・ハミルトン原作:イアン・フレミング主題歌:ポール・マッカートニー&ウィングス出演:ロジャー・ムーア、ヤフェット・コットー、ジェーン・シーモア まだセクシーさに欠けるかも・・・だけど一番観たのがロ....... more
Tracked from プロフェッサー・オカピー.. at 2012-12-23 15:02
タイトル : 映画評「007/死ぬのは奴らだ」
☆☆☆(6点/10点満点中) 1973年イギリス映画 監督ガイ・ハミルトン ネタバレあり... more
Tracked from ふじき78の死屍累々映画日記 at 2012-12-24 01:19
タイトル : 『007死ぬのは奴らだ』を日劇2で観て、ゲラゲラだめだこ..
五つ星評価で【★★★ダメはダメなりに今見るとダメで楽しめるからいんでないの?】    全編、「ジェームス・ボンドVSオカルト・ニグロ軍団」という異色作。 ロジャー・ムー ...... more
Tracked from ダイターンクラッシュ!! at 2013-01-05 18:24
タイトル : 007 死ぬのは奴らだ
2012年12月21日(金) 21:05~ TOHOシネマズ日劇2 料金:1000円 ブルーレイでの連続上映の8話目。 その昔、「スコルピオ」との二本立てで観た。 ロジャー・ムーア初登板。ショーン・コネリーより年上なのだが、この頃は結構若々しく見える。 そして、思ったほどおちゃらけた奴ではない。 どういう訳か、シェイクしたマティーニでなく、バーボンのストレートを注文する。 悪役のドクター・カナンガは破裂するのだが、ぷーと膨らみながら宙に浮いてパンッだと思ったら、即膨張してパンッとあっけなか...... more
Commented by まなぶ at 2006-11-06 00:34 x
エクスカリバーさん、今晩は~☆

純情可憐なジェーン・セイモアは魅力的でしたネ!
私は彼女の“声”が好きです♪

この作品はバランスが良かったと思います。
純然たるスリラーであり、劇画調のドタバタもあり、
慎重に書き込まれたシナリオ作り、無難な展開、
新ボンド登場作に多い傾向ですネ。

「女王陛下」「リビングデイライツ」「ゴールデンアイ」

あぁっ、私の好きなキャラは、サメディ男爵です!
ジョフリー・ホールダーの怪演と笑い声!
やはりマンガ(劇画?)チックな作品でした(笑)
Commented by odin2099 at 2006-11-06 23:18
サメディ男爵、「あれで終わり?」と思わせておいて、エンド・クレジットにしっかり出てきますね。
やっぱり不死身(?)なんでしょうか。

ジェーン・シーモア、『シンドバッド』シリーズや『ギャラクティカ』にも出てましたが、清純そうな雰囲気が良かったです。
もっとも私生活では結婚4回らしいですが・・・。
Commented by ゆかりん at 2007-02-08 23:30 x
こんばんは♪
ロジャー・ムーアは一番テレビでの放送で観たボンドなんですよ。でも1作目からみてくると微妙な感じでした(笑)
やはり黒人の方が殺されちゃうとどうしても人種差別に結びついてしまうんですね。逆だったらどうだったんでしょうね。
Commented by odin2099 at 2007-02-09 21:59
>ゆかりんさん

ロジャー・ムーアから入りましたので、最初はショーン・コネリーに違和感がありましたね(笑)。
それにしても、ジェームズ・ボンドを演じた役者って結構みんなタイプ違うのに、夫々がボンドとして確立している(一本だけのジョージ・レイゼンビーとダニエル・クレイグは微妙だけど)のは不思議というか凄いというか・・・。

黒人主体の映画で白人が殺されたとしても、そんなに話題にならないような気もしますが、実際のところどうでしょう?
所謂”黒人映画”というものを観たことがないんですけれどね。
by odin2099 | 2006-11-05 22:51 |  映画感想<タ行> | Trackback(5) | Comments(4)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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