【徒然なるままに・・・】

odin2099.exblog.jp

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”

『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(1980)

全世界で大ヒットとなった『スター・ウォーズ』。この作品に続編が作られることは、かなり早い段階から公表されていましたが、その内容となると製作サイドのガードは固く、ファンの間ではああでもないこうでもないと無責任な噂が流れていました。
ジョージ・ルーカスはどうやら監督をしないらしいという話も早くから伝わっていて、監督にはスティーブン・スピルバーグが立候補しているそうだ等々、それもまたファンの楽しみだったわけです。

e0033570_2352022.jpgそれにしても、これだけ暗く重たい作品になると予想していた人はどれくらいいたでしょうか。
局地的な勝利は、所詮戦局を大きく左右することはないということなんでしょうが、文字通り圧倒的な力を持って復活した帝国は逆襲に転じます。前作のハッピー・エンドは、本編が始まる前の「これまでのあらすじ」部分でいきなり否定され、帝国軍に対して華々しい勝利を収めたはずの反乱軍は、一転して窮地に追い込まれていることが明らかにされるのです。

またルークとレイア、そしてハンの三角関係は別行動をとることになって更に複雑にもつれ、絡まりあい、「ジェダイになるんだ、頑張るんだ」と言ってるルークを余所に、あれよあれよと言うまにハンとレイアがくっ付いてしまうという結末を迎えます。本来ならヒーローであるルークとヒロインであるレイアが結ばれる方が自然なんですけれどねぇ。
一方ジェダイになるべく頑張りながら、オビ=ワンとヨーダという二人のお師匠さんから「お前は辛抱が足らん」と説教されながらも結局は短慮な行動に走ってしまったルークは、挙句の果てに父の仇のはずの当のダース・ヴェイダーの口から「私がお前の父だ!」と衝撃の告白をされてしまう始末。ルークもハンも文字通り精神的にも肉体的にもボロボロの状態でエンディングを迎え、新たな謎が提示されて、しかもそれが未解決なままで終幕。主人公たちとの再会を楽しみにして来た観客たちは、その歓びも束の間、引き裂かれ大きく翻弄される彼らの運命をただ呆然と見つめるのみ。これが、あの、楽しい大冒険活劇『スター・ウォーズ』の続編なのでしょうか――?

初めて見た時の印象が強烈すぎたせいか、この作品は今もって好きにはなれません。
お子様ランチだった前作に比べると、人間ドラマが描けているからと評価する声も大きいのですが、その一方で「半分ほど大人になりかけた少年や、まだ半分は子供でいる大人へ」を対象にした前作の、素朴な、そして問答無用の楽しさが失われたのは事実でしょう。次なる『ジェダイの復讐』へと連なる<三部作>のブリッジとしてのみ評価に値する、と言ったら言い過ぎでしょうか。

さて、この作品で最大の注目ポイントは、ダース・ヴェイダーがルークに語る「私がお前の父だ」という台詞でしょう。前作ではオビ=ワンは、「私の弟子にダース・ヴェイダーという若い騎士がいた。奴が裏切ってお前の父親を殺したのだ」と言っていたのですから、多くの観客が驚いたでしょうし、またかなり唐突に感じられる台詞でもあります。
次回作『ジェダイの復讐』では、真実を問われたオビ=ワンはルークに対し「善良だったアナキン・スカイウォーカーは、暗黒面に囚われてダース・ヴェイダーとなってしまった。その時アナキンはヴェイダーに殺されたのだ、見方を変えれば」と苦しい弁明をしていますが、それもそのはずで、当初は”ヴェイダー=ルークの父親”という設定はなかったのです。その証拠に『帝国の逆襲』の草稿段階では、ヨーダ(という名前ではまだありませんが)の元で修行中のルークの前に、霊体となったオビ=ワンに伴われてヴェイダーではないルークの父親が霊体となって姿を見せています。
そして重要なことを告げるのです。「お前には妹がいる」と。

この妹の名前は「ネリス・スカイウォーカー」
これまたレイア・オーガナとは何の関係もありません。つまり”レイア=ルークの妹”も後付け設定なのです。そもそも前作の段階では「ルーク20歳」「レイア18歳」という設定だったのですから、2歳も歳の離れた双子がいるわけないですよね。
ただ最終的にはネリスとレイアの設定は一本化され、これがダゴバでのオビ=ワンとヨーダの遣り取り(「あの子が最後の希望です」「いや、もう一人おる」)と、終盤のベスピンでのルークの呼び掛けに感応するレイアという形で次回作へ伏線を張るようになったのです。

後付けといえば本作で初登場するジェダイ・マスターのヨーダ、彼も当初から設定されていたキャラクターではありませんでした。そもそも前作でオビ=ワンは、死ぬ予定ではなかったのです。
ただ後半ではルークを見守るくらいしか出番がなくなってしまうため、物語上のアクセントをつけるため(オビ=ワン役のアレック・ギネスの提案とも言われていますが)ヴェイダーに殺されるように変更されたのですが、今度は本作でルークの修行を続けさせるための新たなキャラクターが必要となってしまい、そこで生み出されたのがヨーダというわけなのです。

e0033570_2345787.jpgこうしてみると、全作が綿密に構成されている、と一般には喧伝されているはずの『スター・ウォーズ』というシリーズが、意外に行き当たりばったりで作られていたことがわかります。
ただ、だからと言ってシリーズがつまらないということではなかったのが凄いところで、これは天の配剤とでも言えば良いのでしょうか。
最近では『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズが、この『スター・ウォーズ』シリーズと似たような構造を見せています。こちらも最初から三部作構想ではなかったと思われますので、今後無理なくまとめることが出来るかどうか、ちょっといじわるな気持ちを持ちながらも楽しみにしたいですね。

ところでこの作品、初公開の時は字幕スーパー版だけではなく日本語吹替版も同時に公開されていました。最近では大作・話題作では吹替版を作って同時に公開することは珍しくなくなりましたが、あの頃は吹替といえばTVで放映される時くらいですので極めて画期的なことだったと思います。
ただ評判はあまり芳しいものではなかったようですね。前作はリバイバル公開の時に吹替版オンリーで上映しましたが、次の『ジェダイの復讐』では端から作られていません。最近発売された<リミテッド・エディション>DVDでは、前作同様にこの貴重な吹替版が収録されています。しかしやたらと早口で棒読みが目立つ演技陣や、「コマンダー・スカイウォーカー」「ロード・ヴェーダー」「アンクル・オーウェン」「ヒア・ゼイ・カム」などなど英語チャンポンの中途半端な吹替台詞は、やはり好みが大きく分かれるだろうと思います。
[PR]
by odin2099 | 2006-11-08 23:08 |  映画感想<サ行> | Trackback(4) | Comments(8)
トラックバックURL : http://odin2099.exblog.jp/tb/4513121
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from 猫姫じゃ at 2006-11-17 00:19
タイトル : スター・ウォーズ EP5/帝国の逆襲 今年の200本目
スター・ウォーズ EP5/帝国の逆襲 小惑星帯でのチェイス、ルークを救うために夕日の中で反転する姿、 ミレニアム・ファルコン号の勇姿は、芸術的。 デススターを破壊したものの、反乱軍は帝国軍に追われて、逃走を続ける。しかし、ハン・ソロとレイア、そしてルークは....... more
Tracked from 風に吹かれて-Blowi.. at 2006-11-19 17:04
タイトル : #290 スター・ウォーズ 帝国の逆襲 V
製作総指揮:ジョージ・ルーカス 脚本:ジョージ・ルーカス 、ローレンス・カスダン 、リー ブラケット 監督:アービン・カーシュナー 出演者:マーク・ハミル 、ハリソン・フォード 、キャリー・フィッシャー 、ビリー・ディー・ウィリアムズ 、ピーター メヒュー 、アレック・ギネス 1980年 アメリカ なんちゅうか・・・・続きモノだという認識で見たので面白いといえば面白いんだけど・・・ ルークって、あーんなにガキだったんですか??(笑) なんだか、ヨーダやオビ=ワンが気の毒に...... more
Tracked from シェイクで乾杯! at 2007-10-21 21:56
タイトル : スター・ウォーズ 帝国の逆襲
スター・ウォーズ エピソード5 帝国の逆襲 リミテッド・エディション1980年度・米 劇場公開版:125分/特別篇:129分 The Empire Strikes Back ■製作総指揮:ジョージ・ルーカス ■監督:アーヴィン・カーシュナー ■出演:マーク・ハミル/ハリソン・フォード/キャリー....... more
Tracked from mama at 2008-01-04 23:25
タイトル : スター・ウォーズ エピソード5「帝国の逆襲」
1980年:アメリカ 監督:アーヴィン・カーシュナー 出演:マーク・ハミル、ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー、ビリー・ディー・ウィリアムズ、アンソニー・ダニエルズ、ピーター・メイヒュー、ケニー・ベイカー、フランク・オズ、アレック・ギネス 氷の惑....... more
Commented by みゆみゆ at 2006-11-09 13:08 x
こんにちは。
私はこの作品、シリーズの中では一番好きですねぇ。
ただ、リアルタイムで見ていた母は不満たらたらですが(^^;
そして、小さい頃見た時はやたらと怖かった作品でもあります・・・(^^;。

公開されたものとは違うエピソードもあったとは知りませんでした(笑)お勉強になりました!
Commented by ドゥーク at 2006-11-09 19:21 x
僕は帝国の逆襲好きです。あの印象的な帝国のマーチが登場するし、ファルコン号が窮地に陥りながら帝国軍を翻弄します。

また観たくなったな~
Commented by omuhashi at 2006-11-09 21:24 x
スター・ウォーズは新旧の両方とも好きです。
確か帝国の逆襲ってヨーダとルークの修行シーンがあるやつですよね?
終わりがすごく気になる締め方だなぁと思いました。
帝国の逆襲、好きです。
Commented by odin2099 at 2006-11-09 22:30
>みゆみゆさん

いらっしゃいませ。
そうですか~、お母上がリアルタイム世代ですか・・・(汗)。

コホン。
さて、この頃は全12作とか全9作だとか言ってたんですが、こうしてみるとそのルーカスの構想とやらも、かなり怪しかったことがわかりますね(苦笑)。
今となっては「9部作だなんて言ってない」と言い出し、6作で完結させちゃいましたけど、もしかすると元々ネタがなったりして・・・?
第一作を「エピソード4」としたのだって、「大体4話くらいに位置する話だったから」とかトンデモな理由を最近になって挙げてますし、みんなルーカスを買い被っていたのかなぁ。
Commented by odin2099 at 2006-11-09 22:35
>ドゥーク様

コメント、ありがとうございます。
帝国マーチは一世を風靡しましたね。
その結果ニュースやワイドショー、バラエティ番組で使われすぎて、本来のものとは違ったイメージを持っちゃってる人が少なくないのが残念です。<新三部作>で流れると笑うヤツもいるらしいし、何とも嘆かわしい・・・。
「エピソード4」の改訂版(DVD版)が出る際には、この帝国マーチを劇中に挿入するんじゃないかという噂もありましたが、6作中唯一流れない作品ですので(「エピソード1」ではアナキンのテーマにチラっと使われてますし)、ダース・ヴェーダー初登場のシーンだとか、デススター内でフォースを使うシーンだとか、或いはクライマックスで出撃するシーンなんかに流しても面白かったかも知れませんね。
Commented by odin2099 at 2006-11-09 22:40
omuhashiさん、こんばんは~。

その通り、この作品でルークはヨーダから指導を受けます。
しかし<新三部作>を観た後では如何にもあっさりとしすぎていますけど、これは間接的にルークの潜在能力が凄い!ということを描写しているのでしょうか・・・?(苦笑)

<旧三部作>と<新三部作>、実は自分には同じシリーズという意識はあまりありません。
見ていても別物に見えてしまうんですね。
出演者が違ったり、技術的な差だとか色々原因はあるんですが、一番の原因は作品のトーンが違いすぎるということですかね。
でも、勿論どちらも好きですよ。
最近はどちらかというと<新三部作>の方が好きかもしれません。3本揃って一つのお話という一体感もありますし。
Commented by chibisaru at 2006-11-19 17:15 x
大人になってから初めてこのシリーズを見て、公開された順番で見たのですが、「4」をみてすぐに「5」を見たときに早く「6」が見たいと思いました。
前作とは雰囲気もかなり違い、あまりにお子ちゃまな性格のルークに不安を覚えたりもして、とにかくこの先どうなるんだと気になってしょうがなかったです。ストーリーは予想の範囲内だったので衝撃を覚えることもなかったけれど、確かに暗く重たい印象になりましたね。
Commented by odin2099 at 2006-11-19 21:43
<新三部作>を観ると、ジェダイになるのって大変だなぁと思うんですが、それに比べるとルークはあっさり修行を終えて(?)ますよね。
一見頼りないルークは、実は凄い才能の持ち主だってことを如実に語っているのです!
・・・というのは、結局後付けの設定ですよね(苦笑)。
「4」「5」「6」と見ると「1」「2」「3」が観たくなり、それを見ると当然「4」以降が観たくなり、ズルズルと輪に引き込まれています~。

by Excalibur
ブログトップ