『トリスタンとイゾルデ』(2005)
2006年 11月 13日
予定通りなら一昨年の秋にはお披露目の運びだったのが、手直しの追加撮影とやらで延期され、それでも昨年中には観られるかとも思っていたのに、結局日本へ入ってきたのは今年の秋。しかも公開劇場数はかなり少なく、その大半が僅か2週間程度で終了。
リドリー・スコット&トニー・スコット兄弟のプロデュース、ケビン・コスナー主演の『ロビン・フッド』や『ウォーター・ワールド』のヒットを飛ばしたケヴィン・レイノルズ監督の作品にしてはあんまりな扱いだと思うが、主演の二人(『スパイダーマン』シリーズのジェームズ・フランコと、『アンダーワールド』、『サンダーバード』のソフィア・マイルズ)がビッグ・ネームではなく、題材も日本人にはそれほど馴染みがないとなると致し方ないのだろうか。それでもろくな宣伝もしない配給会社のやり口は、如何にもローテーションの谷間を埋めましたと言わんばかりで哀しすぎる。
その宣伝では『ロミオとジュリエット』の原典と謳っていたが、二つの物語に共通するのは悲恋モノだということだけで、シェークスピアがこの伝承を元に作品を執筆したとは、寡聞にして知らない。
さて肝心の内容だが、これを宣伝文句を鵜呑みにして女性向けの恋愛映画だと思って観ると、かなり面食らうのではなかろうか。
確かに中心になっているのはトリスタンとイゾルデの恋愛劇ではあるのだが、映画にはかなりの量のアクション・シーンが盛り込まれ、かつ二人を取り巻くキャラクターたちの様々な思惑が絡み合う、謀略のドラマにもなってるからだ。
ブリテン諸国を一つにまとめるため、我が子同様に可愛がって育てたトリスタンの進言により政略結婚でイゾルデを妻に迎えたものの、次第に唯一無二の存在として愛し始めてしまうコーンウォールのマーク王。イゾルデの父親でアイルランドの王であり、かつブリテンの支配をも目論むドナカー王。そのドナカーに近付き、マーク王を失脚させ自らがブリテンの頂点に立つことを望むウィトレット。マーク王の甥であり、トリスタンの友人でありながら、王に重用されるトリスタンへの嫉妬心も持つメロート等々。その複雑な心理劇にまで踏み込んではいないが、アクション映画にして陰謀劇とは、これはどちらかというと男性向けの要素だ。
父親同然の王への敬愛と、イゾルデへの想いの板挟みになるトリスタン。誠実で優しい夫を認めながらも、それ故にトリスタンを想い切れないイゾルデの苦悩。当然二人は不倫の関係になるわけだが、彼らの間には媚薬の介在もなく、若者らしい熱情一直線な、泥臭い恋愛模様が描き出されている。それらが悪いと言うのではないが、中世の騎士物語、”ロマンス”の要素は皆無に近い。
思えば原作をかなり大胆に脚色した『モンテ・クリスト伯』を撮った監督のこと、この作品もかなり原典とは趣を異にした作品に仕上がっている。どちらかというと否定的な見解が占めているのも頷ける話だが、有名な伝承へのアプローチの手段としては、こういう選択肢もありではないかと思うのだが。
<追記>
DVD化に際して『トリスタンとイゾルデ/あの日に誓う物語』と改題された。
製作総指揮:リドリー・スコット CAST:ジームズ・フランコ、ソフィア・マイルズ 他 STORY:ローマ帝国崩壊後、アイルランドの支配下にあったイギリス。戦いで孤児となったトリスタン(ジェームズ・フランコ)は、領主の一人、マークに育てられ、腕の立つ立派な騎士となっていた。ある日、またもイギリスに攻め入ってきたアイルランド人と戦ったトリスタンは瀕死の状態となり、葬船で海に流される。アイルランドの岸に漂着したトリスタンを見つけたアイルランド王の娘、イゾルデ(ソフィア・マイルズ)は、彼を看護する・・・...... more
この話をもとに、シェイクスピアは 「ロミオとジュリエット」を執筆し、 ワーグナーはオペラの戯曲を 生み出したと言われる 悲恋物語の原典の ケルトの伝説です。 ローマ帝国崩壊後のイングランドは、分割しアイルランド王に 隷属され、苦しい生活を強いられていた。 そこで、コーンウォールの領主マーク(ルーファス・シーウェル)を 王に全土の統一を計っていた。 マークを育ての父に持つ勇敢な騎士トリスタン(ジェームズ・フランコ)は 戦闘で瀕死の重傷を負い、敵国アイルランドの海岸に流れ着く。 ...... more
今年最後の一本は恋愛映画。「トリスタンとイゾルデ」という、 どうやら「ロミオとジョリエット」の原典と言われているストーリーらしい。 イングランドの騎士トリスタンは、戦いで瀕死の重傷を負い、 アイルランドの海岸に流れ着く。彼を介抱したのが、アイルランド王の娘イゾルデ。 彼女は身分や名前を隠して世話をする。そして愛し合う二人。 その頃イングランドのいくつかの領土を、なんとかたばねていたのがマーク。 彼はトリスタンの命の恩人であり、トリスタンを助けるために、 右手の手首から下を失って...... more
{/kaeru_fine/}部屋を片付けないといけません{/face_acha/} 数日前、息子の学校の家庭訪問が実施され、廊下の端に置かれていた私のオモチャ(ガンプラ・フィギュア)が嫁の手により撤去され私の部屋に{/face_ase1/} 今、かなり部屋がいや〜んなオタク部屋な様相を呈しております{/face_acha/} 週末に体の不調を訴えた私ですが、一説には運び込まれた埃が影響しているとも(私の説{/face_maji/})。 今週末、片付けたいと思っています(でも、何処に{/eq_1/})。...... more
ヨーロッパに伝わる悲恋物語『トリスタンとイゾルデ』を、いまや巨匠となったリドリー・スコットが思い入れたっぷりにプロデューサーとして、映画を世に生み出した。 ローマ帝国が滅び去ったあとのブリテン島。群雄が割拠し、なかなかまとまらない。いろいろな民族がせめぎあってる中、何とか同盟を結んで、国としてまとめようとしていた男がいた。マーク。しかし、アイルランドに攻め込まれ、仲間を失い、自分も右手を失う。その時に助けた少年がトリスタン。成長して立派な青年となり、マークの同盟の実現に大きな力となる。 一方、ブリ...... more
「愛は死よりも切なく、そして尊い」 イングランドの若き騎士トリスタンと、敵対するアイルランド王の娘イゾルデ。ケルトの伝説として1500年前に誕生した、二人の“禁じられた愛”の物語は、ヨーロッパの人々を魅了し続けてきたラブストーリーの原点。あなたは知ってい....... more
あの「ロミオとジュリエット」はここから生まれた〜〜 悲しく切ないラブストーリー・・・う・・ん、眠くなっちゃうかなぁ・・なぁんて思いながら、時間も都合よかったので観たんだけど、これがまた、ノーマークのわりにはいい!かなり良質な作品です。 舞台は5世紀ごろ...... more
この映画は『シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の元にもなった古典』というを大々的に宣伝文句にしているんですが、ワタシ的には「ロミオとジュリエット」といって最初に思い出すのはディカプリオ版なんですけど(笑)。ま、比較云々はともかくとして、古典的ケルトの....... more
243「トリスタンとイゾルデ」(アメリカ) ローマ帝国の統治下から脱したイングランド。いくつもの郡が割拠する暗黒時代と呼ばれていた。トリスタンはコーンウォールの領主マークによって育てられた勇敢な騎士。戦闘で瀕死の重傷を負い、アイルランドの海岸に辿り着く。彼を見つけ、献身的な介護を行ったのが、アイルランド王の娘イゾルデ。粗末な海辺の小屋で時を過ごすうち、二人は自然に結ばれる。 しかし、運命は二人を残酷な状況へと導く。政略結婚によりイゾルデはマークへと嫁ぐ。すぐそばにいながら、その想い...... more
ワーグナーの傑作オペラやシェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」の基にもなった悲恋の物語を映画化 製作年度 2006年 監督 ケヴィン・レイノルズ 出演 ジェームズ・フランコ/ソフィア・マイルズ/ルーファス・シーウェル/デヴィッド・パトリック・オハラ/ヘンリー・カヴィル 強大で冷酷なアイルランド王に支配されていた暗黒時代のイングランド―― 幼い頃、アイルランドの兵によって両親を殺された騎士トリスタン(ジェームズ・フランコ)は コーンウォールの領主マーク(ルーファス・シーウェル)によって...... more
DVDにて「トリスタンとイゾルデ」 1500年前にケルトの伝説として誕生した、史上最も美しい悲恋物語の映画化。ワーグナーのオペラやシェークスピアの戯曲の基にもなっています。 おはなし:暗黒時代のイギリス。コーンウォールの領主マークに育てられた騎士トリスタン(ジェームズ・フランコ)はアイルランドとの戦いで重傷を負い、敵国アイルランドに流れ着く。アイルランド王の娘イゾルデ(ソフィア・マイルズ)から献身的な介護を受けたトリスタンは、やがて彼女と恋に落ちるが、イゾルデはマークと政略結婚することになってしま...... more
トリスタンとイゾルデ 監督:ケヴィン・レイノルズ 出演:ジェームズ・フランコ、ソフィア・マイルズ、ルーファス・シーウェル、デヴィッド・パトリック・オハラ、マーク・ストロング、ヘンリー・カヴィル... 「史上... more
『愛は死より切なく、そして尊い。』 コチラの「トリスタンとイゾルデ」は、10/21公開になったシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の原典になったイングランドの騎士トリスタンとアイルランド王女イゾルデの伝説を描いた映画なんですが、早速観てきちゃいました...... more
レンタルで鑑賞―【story】コーンウォールの領主マーク(ルーファス・シーウェル)に育てられた騎士トリスタン(ジェームズ・フランコ)は、戦闘の末重傷を負い、敵国アイルランドに流れ着く。アイルランド王の娘イゾルデ(ソフィア・マイルズ)から献身的な介護を受けたトリスタンは、やがて彼女と恋に落ちるが、イゾルデはマークと政略結婚することになってしまう― 監督 : ケヴィン・レイノルズ 『モンテ・クリスト伯』【comment】シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の原典と言われている悲恋物語―根性無し...... more
ヒューマン=ブラック・ボックス -映画のご紹介(234) トリスタンとイゾルデ(2006年)-ただのラブ・ロマンスものではない。 jamsession123goは100パーセント純愛のラブ・ロマンス映画は、たとえ話題作であっても映画館では観ない...... more
トリスタンとイゾルデ あの日に誓う物語監督:ケビン・レイノルズ出演者:ジェームズ・フランコ、 ソフィア・マイルズ、 ルーファス・シーウェル、 デビッド・パトリック・オハラ収録時間:126分レンタル開始日:2007-06-02Story有名な古典悲劇をリドリー・スコット製作総指....... more
イングランドに占領さているアイルランドって話は多いですが、
その反対って、結構珍しいなぁ〜って思ってしまいました。
陰謀術数、迫力ある戦闘が見所になったのもやはりリドリー&ケビン・レイノルズだからかな、とも思えますが、あんまり男性向き、女性きというのは今時無いのではとも思います。
どうも歴史的にいろいろと突っ込みたくなってむずむずしましたが、滅多にないいい人役だったマーク侯に免じてよしとする事にしてます。
アーサー王伝説に組み込まれても、イゾルデはアイルランドの王女という設定のままですね。
アイルランドは一国としてまとまっていますが、対するブリテンは諸国で群雄割拠状態ですから、そこを付け込まれたのでしょう(笑)。
所詮は伝承ですから、いつの時代の話だとか、そういうことは言っても詮無いことですよね(苦笑)。
幻想の中の中世を舞台にした物語ということで。
マーク王を演じたルーファス・シーウェルは、『ロック・ユー!』や『レジェンド・オブ・ゾロ』の悪役ですね。
一見するとちょっと胡散臭そうなんですが(苦笑)、実は良い人という役どころなのは、この人のキャリアでは珍しいのかしらん。
<シェークスピアがこの伝承を元に作品を執筆したとは、寡聞にして知らない
私も! これ、違うと思うのですけれど・・・
今は、この映画は日本でいえば、大河ドラマみたいなものだったのね、と思っています。
監督さんはトリスタンとイゾルデはこういう話にしたかったのね、ということで、まあ、それはそれでいいんじゃない、と思います。
サトクリフの「トリスタンとイズー」、機会があれば是非お読み下さいな。竜退治など、それはワクワクする話がはいっていますから。
私は古書店で安く買いましたが、ふつーに書店でも売っていますので。
あ、カバーのイラストは乙女チックです。(笑)
ルーファス・シーウェルさんは、最後には痛いめをみるぬけたところのある悪役の方が似合うと思います。
<ちょっと胡散臭そう
これ、ほんとに彼にぴったり!だと思います。(笑)
あ、MYブログに書きましたが、彼、好きです♪
それにサトクリフは、いつかはきちんと読んでおかなければと思いつつ・・・という状態(こればっか)。
でもそうなると図書館通いになっちゃうかなぁ(苦笑)。
絶版もあるし、入手出来ても高いし・・・。
TBどうもありがとうございました。
ベタな恋愛ものではなくて、アクションも満載でスケールもあって大作でしたよね。
マーク王がいい人だったので、二人よりもマーク王に同情してしまいましたね。
ルーファス・シーウェル、私も悪役のイメージが強かったので、この役は意外でしたね^^
マーク王がもっと老境の人だったりすると違うのかも知れませんが、
壮年の、人格者としての王になっていますので、余計悲劇性が高まっているのかも知れません。
ある意味ではこれも現代的なアレンジなんですかね。
それにしても最近発売されたDVD版、なんであんなヘンテコなサブタイトルを付けてしまったのでしょうか?
なんでしょうか、「あの日に誓う物語」というのは。
意味がよくわかりません。
それに「TORISTAN+ISOLDE」という英文ロゴになってますが、
これってディカプリオとクレア・デーンズの『ロミオ+ジュリエット』を連想させて、なんかイヤなんですが(苦笑)。
やはり上映される劇場が少なく、期間も短かったのですね。
私の所も2週間くらいしか上映されず、しかも夕方からでしたので行けなかったんですよ。
この作品は、もうちょっとで、とてつもなく素晴らしい作品になった気がします。
恋愛シーンがロマンチックな悲恋物でありながら不倫の要素が濃かったり、陰謀やそれぞれの思惑などもちょっと浅かったり・・・と中途半端に思いました。
これはこれでいい作品だと思うのですが、何だか勿体無かった気もします。
この作品、確かに中途半端な部分が多いですね。
ストーリーもキャラクター設定もキャストも・・・。
もっとベタベタな恋愛ドラマにしてもいいし、逆に思い切ってアクション映画にしても良かったんじゃないかな、とも思います。
ただ、良くも悪くも現代的な映画だなぁと感じました。
ソフィア・マイルズも古典的ヒロインを演じるには現代的で健康的過ぎるし。
まぁ、こっちがいつまでも『サンダーバード』や『アンダーワールド』のイメージで見てるのがいけない、という話もありますが(苦笑)。