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『聖なる予言』 ジェームズ・レッドフィールド

南米ペルーで紀元前600年前に書かれたという古文書が発見された。その写本には九つの知恵が記され、二十世紀最後の二十年間に人類は一つずつそれを理解して行き、やがては完全な霊的文明に移行していくであろうと予言されているのだという。
久しぶりに再会した友人の口からその話を聞かされた”私”は、何かに導かれるかのようにペルーへと旅立った。”第一の知恵”とは、偶然の出会いがしばしば深い意味を持っているということ。”私”はそこで、偶然とは思えない様々な人との出会いの中から、一つ一つ知恵を学んで行く。しかしこの写本は、伝統的な宗教の教えを脅かすものだとして、弾圧・封印しようとする勢力もいるのだった・・・。

古文書の謎を求める主人公、主人公と目的を同じくし助け合おうとする仲間たち、そしてそれを妨害しようとする体制側の人物・・・と挙げていくと立派なミステリー、サスペンス物のジャンル作品になるが、実際は冒険小説の形を借りた哲学書、宗教書といった趣きの作品(解説には<魂の冒険の書(スピリチュアル・アドベンチャー)>とある)。
といっても堅苦しい印象や重苦しい雰囲気はなく、冒険物らしいハラハラドキドキ、それにちょっぴりロマンスを楽しみながらも、”魂の救済”というと大げさだが、心の”癒し”を味わうことも出来る。

『聖なる予言』 ジェームズ・レッドフィールド_e0033570_62926100.jpg最初は自費出版という形で世に出、それが注目されて大手出版社から発売されるやたちまちベストセラー。日本でもベストセラーになり、その後文庫化されてから早12年。ということは、自分がこの本と出会ってからも既に12年近くが経ったということだ。
元々宗教だとか精神だとか哲学だとか、そういった分野には大きく惹かれるタイプなのだが、その時は随分大きなインパクトを受けた。

――のだが、今回引っ張り出して読み直してみると、その殆どを覚えていないし引っ掛かる部分もある。物語が中途で終っていることもあるし、著者の言う”教え”が、結局は伝統的なキリスト教の枠組みの中で語られていることに違和感を覚えてしまう。それに自分がそれだけ”ピュア”じゃなくなったということなのかも知れないが・・・。
Commented by 小夏 at 2008-02-01 16:19 x
「聖なる予言」、以前から興味あるんですが、メジャーになり過ぎちゃって逆になんだかなぁ~になってしまった一冊です。
ミステリー&サスペンス色豊かというと、「ダ・ヴィンチ・コード」をイメージしますが、エンタメ性についてはどーなんでしょ。個人的にこの手の作品って好みなのですが、あまりに突飛な展開なのも苦手なので、、、。
ところで、「物語が途中で終っている」とは?
Commented by odin2099 at 2008-02-01 23:51
>千夏さん

『ダ・ヴィンチ・コード』はサスペンス小説を楽しみながら知的好奇心を満たす、という作りですが、こちらは本文中にも書いたとおり、冒険小説の形を借りた哲学書というスタンスなので、基本はあくまでも「教え」にあります。小説のコンセプトとしては全く別物と言って良いんじゃないでしょうかね。
似たタイプの作品は『ソフィーの世界』だと思います。
エンタメ性という点では随分劣るんじゃないでしょうか。人によっては説教臭くて受け付けないかも知れません。
あと、鈴木光司の「リング」三部作のラストを飾る『ループ』を読んだ時に、何故かこの作品を連想しました。
どこに共通点があるんだと問われると困るのですが(苦笑)、同じ頃にこの作品を読んだ先輩も同じことを言っていたのが面白いところです。

物語が途中で終っているというのは、文字通りです(笑)。
当初から続編を意図していたのかはわかりませんけれど、登場人物の中には行方不明のままという人もいますし、主人公の目的も達成されないまま。それに「第十の予言」の存在が示唆されているからなのですが・・・。
by odin2099 | 2008-02-01 06:30 | | Trackback | Comments(2)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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