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「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”

『幻魔大戦』(1983)

先ずは「しねま宝島」からの引用――。
もし貴方が原作の『幻魔大戦』の大ファンで、かつ映画を未だ見ていないのであれば、今すぐに映画の存在は忘れた方が良いだろう。何故ならば、これは原作に対する冒涜行為以外のなにものでもないからである。

e0033570_2324574.jpgはじめに簡単に<幻魔>シリーズをおさらいしてみる。
最初に発表されたのが原作:平井和正・いずみあすか/漫画:石ノ森章太郎(因みに「いずみあすか」は石ノ森のペンネーム)のコミックス版『幻魔大戦』。但し連載は事実上打ち切りであった。しかし評価する声も高く、次いで平井・石ノ森コンビのコミックノベル『新幻魔大戦』(後に平井単独の小説版も発表)が書かれ、以後は更なる中断期間を経て平井和正単独で『真幻魔大戦』小説決定版『幻魔大戦』シナリオノベル『ハルマゲドンの少女』、<第2期幻魔大戦>『ハルマゲドン』と続けられていく(石ノ森章太郎単独のオリジナル『幻魔大戦』もあるが、こちらは他作品との関連性が明確ではない)。

ストーリーの流れは先ず『新幻魔大戦』において、1999年に地球が幻魔の侵攻によって滅亡するところから始まる。
その歴史を変えるために時間跳躍者(タイムリーパー)が過去へ飛び、以後江戸時代からの歴史の改変を画策。その結果コミック版『幻魔大戦』や小説版『幻魔大戦』などのパラレルワールドが派生するが、どちらもまたもや滅亡の憂き目に遭う(コミック版はそこまで描かれず暗示するにとどまり、小説版はそこへ至る前に中断。その詳細は間接的に他の作品で語られることに)。しかしその間に本来の舞台である『真幻魔大戦』の世界が用意されていた・・・そんな展開である。
また、シナリオノベルという形式で発表された『ハルマゲドンの少女』は各作品の橋渡しの役目を負っており(『ハルマゲドン』は小説『幻魔大戦』のストレートな続編であるがこれまた中断)、中断された作品群を補完している。
アポロやクロノスらギリシャ神話の世界や、ムーやアトランティス、日本の奈良時代などなどキャラクターたちも輪廻転生を重ねて登場する、時間を超越した壮大な物語だ。救世主物語という側面から宗教臭さを感じ取るむきもあるが(実際、キリスト教や仏教からの引用も多く、またカルト教団の台頭など時代を先取りしている面も)、純粋にSFとして楽しむのが本筋だろう。

さて問題の映画の方であるが、これは最初のコミック版『幻魔大戦』と小説版『幻魔大戦』をミックスし、オリジナルのキャラクターを追加し勝手な解釈を加え、安易な独自の結末をつけた駄作であるとしか言い様がない。
なんせ前哨戦が終わっただけでメデタシメデタシというハッピーエンド。スケール感も何もあったものじゃない。おまけに「超能力」という概念に対して否定的な原作(小説版)に対して、こちらは明快な超能力礼讃のアクション映画になっている点も「解釈の違い」という言葉では納得出来ない部分だ。もし監督が りんたろう ではなく富野由悠季だったなら、もっと違った映画になっていただろう。少なくとも平井和正との対談を見る限り、富野由悠季の作品に対する解釈は的外れではないように感じたのだが・・・。
「これは私の゜幻魔゜じゃない」(平井)、「原作と映画は別物」(石ノ森)と原作者コンビは初めから逃げを打っていたが、このあたりに角川映画の一面を見る思いがする。また石ノ森章太郎を原作者の一人に謳いながらも、新しく大友克洋にキャラクター・デザインを依頼。この起用を慧眼であるとするむきもあるが、当時のファンにはかなり拒絶反応が強かったことも付け加えておく。

最後にもう一度、原作が大好きならば見るな!である。
――という具合にかなり厳しいことを書いてますが、これはリアルタイムで観た時から殆ど変ってない感想ですねぇ。
さて、この作品のどこを評価すべきでしょうか?
新宿や吉祥寺のリアルな描写? 結構使い回しが目立つ作画?
音楽も、キース・エマーソンって誰?というヒトだし、畑違いのキャスティングも迷惑だなぁ、くらいにしか思えません(苦笑)。
あ、原田知世は『地球へ・・・』の薬師丸ひろ子よりは良かったですけどね。
せっかくの大友克洋キャラも、なんだか場面場面で顔が違っちゃって同一人物に見えにくかったり、結局のところ原作のスケールが全く感じられない中途半端な怪獣映画になっちゃってますし。
怪獣映画といえば冒頭のシーンは『三大怪獣 地球最大の決戦』ソックリですが、これは最初の漫画版にもあったもの。あちらが元ネタです。
そういえば『ポルターガイスト』のパロディもやってたなぁ・・・等々。

まぁ大友克洋ファンや、リアルタイムで観ていない人、それに原作未読の人ならばウケルんじゃないかと思います。
25年も前の作品とは思えないくらい、クオリティが高いのも認めます。
でもねぇ・・・・・・・・・ぶつぶつ。

P.S.
石ノ森章太郎単独の『幻魔』も、後にTVアニメ化されました。
結局観なかったんですけど、どの程度原作を追っていたのでしょうか?
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by odin2099 | 2008-02-13 23:03 |  映画感想<カ行> | Trackback(4) | Comments(8)
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Commented by chibisaru at 2008-02-14 08:51 x
うは!!!懐かしい!!!

っとその前に、お久しぶりです(^^;
さてはて、平井和正にどっぷりハマったことのある私、この作品の存在すらも忘れ去っていました(笑)
うん、やっぱり見直すのはよそう・・・。
記憶からすっぽり抜け落ちているんだから・・・と改めて感じさせてくれる記事ですね(笑)
Commented by odin2099 at 2008-02-14 22:48
>chibisaruさん

最近お見限りのようで寂しいです。。。
それはさておき、いらっしゃいませ♪

平井和正は<幻魔>のあと、<ウルフガイ>を制覇し(当時)、『悪霊の女王』なんかにも手を出したところで終っちゃいましたね。
今読んでも熱中出来るかなぁ。

久々に見直したこの映画ですが、やっぱり自分にはダメでした(苦笑)。
原作ファンでしたら、止めておいたほうが無難かと・・・。
Commented by samurai-kyousuke at 2008-02-17 20:51
当時劇場で指定席で観賞しました。懐かしいです。
女の子と新宿の映画館で観て、帰りにお好み焼き食べました。
映画の内容はまったく記憶にありません。(笑)
Commented by odin2099 at 2008-02-17 21:59
わー、デートだったんですか、羨ましいなぁ。
で、彼女に夢中で映画の内容は覚えていない、と(笑)。

でもそんなこと書いちゃっていいんですか?
奥さまはここのコメント読まないかしらん(爆)。
それともその時の彼女が今の奥さまだったりして・・・?
Commented by booska1234 at 2008-02-22 14:55
お久しぶりです。TB有難うござます。原作を全然読んだことがないのが幸いしたのか、公開当時はサントラも入手するほど好きでした^^;)。大友克洋の漫画も流行っていたし…。ちなみに『地球へ・・・』は試写会で観ました。どちらも遥か昔で懐かしいっす。
Commented by odin2099 at 2008-02-23 09:22
>booska1234さん

どうもご無沙汰でした。

当時の日記を引っ張りだしてみると、3/2に1巻を読んだ後、3/3には2~5巻、3/4に6~8巻、3/5に9~12巻、3/6に13~17巻、そして3/7に最後の20巻まで一気に読んでますね。暇だったんだなぁ・・・。
そして3/11深夜の「オールナイトニッポン」の特番を聴いた後、公開三日目の3/14に劇場で鑑賞、と記してあります。
原作小説にドップリと浸った勢いで観てるので、当時も不満しか書いてません(爆)。
まぁ今観ても大して感想は変らなかったのですが・・・。

音楽はキース・エマーソンのものと、青木望のものが上手く融合していなかったな、というのが印象でした。
一曲一曲は楽しめるのですが、全体としての統一感は×。
ということはサントラとしても失格なんでしょうね。

『地球へ・・・』は飛行機の機内で試写会やったりしたんじゃなかったでしたっけね。
当時のアニメブームは凄かったもんなぁ。今じゃちょっと考えられません。
Commented by マイケル村田 at 2013-12-21 12:42 x
もし幻魔大戦の監督が最初から富野由悠季が起用された場合は、アニメーション制作はマッドハウスではなく、日本サンライズ。キャラクターデザインは大友克洋ではなく富野との縁が深い安彦良和か湖川友謙、「ボトムズ」の谷口守泰が起用されていたかもしれませんね…。富野監督は日本サンライズ所属のアニメ監督だったし…。
Commented by odin2099 at 2013-12-21 13:06
コメント、ありがとうございます。

富野さんが監督の場合、フリーの立場ではあっても、実際にはサンライズにフランチャイズを置いていましたので、気心の知れた連中を起用ということから実製作がサンライズになった可能性はありますね。
ただ、キャラデザの大友さんの起用は誰が言い出したのかは知りませんが、角川春樹事務所サイドからのオファーだった場合はそのまんまじゃないですかね。
個人的には安彦絵や湖川絵の方が感情移入しやすいので歓迎ですが。
ストーリーはこの映画とはまた別の内容になったと思いますが、この作品よりは平井和正テイストが感じられるものになったのではないかなあという気がします。当時の平井×富野の対談記事を読んだ印象では。

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