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ミュージカル『李香蘭』

今日は四季劇場「秋」へミュージカル鑑賞に出掛けてきました。劇団四季創立55周年記念「昭和の歴史三部作」の第一弾、『李香蘭』。初演は1991年だそうですから、以来17年にも亘って度々再演されてきた作品です。

ミュージカル『李香蘭』_e0033570_21451729.jpg物語は昭和の初めから終戦まで、歴史の歯車が日本に軍国化の道を歩ませ、遂には自壊していくまでを、中国人「李香蘭」として知られた一人の日本人女性を中心に語られていきます。
後年、TV番組に出演したり、国会議員として活動していた「山口淑子」さんのことは何となく記憶にあるという程度なのですが、その人の前半生が「李香蘭」という大スターであり、しかも歴史の流れに翻弄された存在だったというのは、このミュージカルが作られた頃まで知りませんでした。
既に「山口淑子」という名前さえ、どちらかといえば過去のものになりつつある現在ですと、尚更ピンとこないでしょうね。そういう意味で、歴史の面白さ、奥深さを再認識させてくれる作品だと言えます。

ミュージカル『李香蘭』_e0033570_2146052.jpg但し、実際の語り部となるのは”東洋のマタ・ハリ”とも呼ばれた男装の麗人・川島芳子であり、台詞も説明調のものが多く、昭和史の流れを簡潔にまとめてくれている部分は快感でもあるのですが、肝心の物語部分に李香蘭自身があまり絡んでこない点が、作劇としては不満ですね。
フィクションと断り書きが入っているものの、そこは事実を踏まえたものであるために大きく逸脱は出来なかったのでしょうが、狂言回しにすらなりえていないヒロイン像というものには疑問が残ります。
これが完全な歴史上の人物であれば、色々と脚色を加えることも出来たのかも知れませんが、未だ60年余りしか経過していない近過去が舞台であり、ヒロインのモデルもご存命とあれば、思い切ったことも出来なかったという事情もあるのやも知れませんが、これならば李香蘭抜き、というよりも別の主人公を立てて劇作化した方が、遥かに興味深いものになったのではないかな、と愚考する次第です。

ちなみに今日の公演のメインキャストは
 李香蘭/野村玲子、川島芳子/濱田めぐみ、李愛蓮/五東由衣、
 杉本/芝清道、王玉林/芹沢秀明
という面々。
「李香蘭/野村玲子」さんは初演と同じキャスティングということで、劇団四季の看板女優、ベテラン女優さんらしい味わいが感じられたのですが、台詞や歌がかすれ気味でやや聴き辛い部分もありました。
キャスト表によればこの役はWキャストになっていて、もう一人の名前は『オペラ座の怪人』『ウィキッド』で偶然立て続けに観ることになった沼尾みゆきさんになっていましたので、こちらのヴァージョンでも観てみたかったですね。
Commented by みゆみゆ at 2008-05-11 21:37 x
私が以前観劇した時とほぼ同じキャストです(玉林以外)
李香蘭というと野村さん!というイメージなんですが、私が見た時も歌が・・・(以下略)だったんで・・・・
沼尾さんの李香蘭も気になるところです。
Commented by odin2099 at 2008-05-11 23:44
>みゆみゆさん

野村さん、歌は色々叩かれてますねー(苦笑)。
でも浅利さんの奥さんだから、主演女優の座は安泰?
以前、『ハムレット』のオフィーリャを観たこともありますが、その時もなんか不思議な感じでしたね<歌

沼尾さん、今は大阪で『オペラ座』ですか。
結局今回の公演で、李香蘭を演ったことはあったのかな。
もう一度彼女で『ウィキッド』が観たいと思う今日この頃・・・。
Commented by はぎお at 2008-05-12 10:15 x
こんにちは。
四季の舞台はいろいろ見ていますが、「昭和三部作」は未見。野村さんのお芝居も残念ながら見たことがありません。こういう作品が全国公演で回るというのは難しいのかなぁ・・・
Commented by odin2099 at 2008-05-12 22:56
>はぎおさん

四季門外漢の自分がコメントするのもなんですが(苦笑)、過去には名古屋、大阪、京都、福岡等々で上演されたようですね。
その他にも「全国公演」という記述があるのですが、さてどこで上演したのやら。
実はうちの職場にも「四季の会」会員がいることが最近判明したのですが、その人も野村さんのファンだそうで、やっぱりベテランならではの根強い人気があるようですね。
自分は以前、『ハムレット』のオフィーリヤ役を観たことがあるのですが、なんかあまり印象に残っていません・・・(汗)。
by odin2099 | 2008-05-10 21:46 | 演劇 | Trackback | Comments(4)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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