『ミクロの決死圏』(1966)
2008年 05月 27日
凡そ実現可能とも思えない荒唐無稽なストーリーだが、外科手術が不可能となれば直接乗り込んで何とかして欲しいという気持ちになるのは納得出来るし、宇宙だ、過去だ、未来だ、ということではない新たな冒険世界を開拓したのはアイディア。人間の身体の中という、誰も見たことのない神秘の世界を、タップリとスクリーン上に描き出してくれる。
もっとも誰も見たことがないからといって嘘八百を並べ立てているのではなく、しっかりと科学考証は行われているようだ。
また真偽の程は不明だが、シュルレアリスムで知られるサルバドール・ダリが美術面で一枚噛んでいるとの噂もある。いずれにせよ人体内の幻想的なセットは”Fantastic Voyage”(原題)に相応しいものだ。
またこの患者が重大な機密を持った東側から西側への亡命者であり、亡命を阻止しようとした東側の襲撃により重傷を負ったこと、潜水艇内でも妨害工作があり、チーム内の誰かが裏切り者の可能性があることなどスパイ映画のムードも持ち、丁度「007」ブームの影響下で作られたことを思い起こさせてくれる。
そして縮小技術自体も未完成であり、60分という時間制限が設けられている点もサスペンスを盛り上げている。
原作として名前が挙がっているのはオットー・クレメントとジェイ・ルイス・ビックスビーの二人だが、元ネタは当時アメリカで放映されていた、手塚治虫原作のTVシリーズ『鉄腕アトム』の1エピソードだとする説があるが、もはや真相は闇の中だろう。
ちなみにノベライズを担当したのは、SF界の巨匠アイザック・アシモフで、後にオリジナルの続編も発表している。監督は職人リチャード・フライシャー。
出演者はスティーヴン・ボイド、ラクエル・ウェルチ、エドモンド・オブライエン、アーサー・ケネディ、アーサー・オコンネル、ドナルド・プレザンスといった目面だが、注目すべきは紅一点のラクエル・ウェルチ。
この作品が実質的なデビュー作だったようで、キャラクターとしては決して大きなものではないのだが、一人だけ身体にピッタリとフィットしたウェットスーツを着用して観客の目を楽しませてくれる重要な役どころ。体内の海での活動中、彼女の身体に細胞組織が絡みつき締め上げるというシークエンスがあるのだが、その後はチーム総出で彼女の身体から細胞をむしりとるというシーンがとってもエロティック。勿論狙っての演出だろうが、どことなく出演者も嬉しそうだ。以前に観たときはこのシーンしか覚えていなかったくらいだ。
SF映画の舞台として新しい世界を開拓したのは良いのだが、手間隙が掛かるのか、それともストーリー作りに制約が大きいのか、ジャンルとしてはあまりヴァリエーションが広がらず、有名どころではジョー・ダンテ監督作品の『インナー・スペース』ぐらいだろうか。
ところがこの作品にも以前からリメイクの話があり、現在はローランド・エメリッヒ監督のプロジェクトとして進められている模様。しかもそのプロデュースを務めるのがジェームズ・キャメロンとあっては、これはかなり気になる気になる。
特殊潜航艇プロテウス号に乗り込んだ科学者チームがミクロサイズに縮小され、意識不明の政府要人の体内に治療のため送り込まれます。いまでこそ目新しいテーマではありませんが、当時は新鮮でした。サルバドール・ダリがデザインしたという体内の特撮も今見るとチープですが、そのチープさが斬新な感じです。 科学者チームのリーダーには「ベンハー」のスティーブン・ボイド、紅一点に「恐竜百万年」のラクエル・ウェルチ、「大脱走」のドナルド・プレザンスも科学者の一員として出演しております。 この後、「インナー・スペ...... more
1966年 アメリカ 101分 原題 Fantastic Voyage 監督 リチャード・フライシャー 製作 ソール・デヴィッド 原案 オットー・クレメント ジェイ・ルイス・ビクスビー デヴィッド・ダンカン 脚本 ハリー・クライナー 撮影 アーネスト・ラズロ 美術 (美術協力)サルヴァドール・ダリ SFX L・B・アボットほか 出演 グラント:スティーヴン・ボイド コーラ・ピーターソン:ラクエル・ウェルチ カーター将軍:エドモンド・オブライエン...... more
製作:ソール・デイヴィッド 監督:リチャード・フライシャー 脚本:ハリー・クライナー 撮影:アーネスト・ラズロ 原作:オットー・クレメント、ジェイ・ルイス・ビックスビー 音楽:レナード・ローゼンマン 出演者:スティーブン・ボイド 、ラクウェル・ウェルチ 、エドモンド・オブライエン 、ドナルド・プレザンス、アーサー・オコンネル、アーサー・ケネディ、ウィリアム・レッドフィールド 1966年アメリカ 脳血栓の重要人物を救うためにミクロの大きさになって患者の体に入り、血栓を...... more
体内の抗体が、ミクロ化した乗組員を、ウイルスと判断して襲う(…というか人体を護ってくれているんですけれどもね)場面で、クリスマスのモールみたいな、居酒屋の付き出しみたいな、なんていうの?まあそんなふうなものが、何故か男性乗組員には目もくれず... more
(1966/リチャード・フライシャー監督/スティーヴン・ボイド、ラクエル・ウェルチ、アーサー・ケネディ、エドモンド・オブライエン、ドナルド・プレザンス、アーサー・オコンネル、ウィリアム・レッドフィールド、ジェームズ・ブローリン/100分)... more
【FANTASTIC VOYAGE】 1966/09公開 アメリカ 100分監督:リチャード・フライシャー出演:スティーヴン・ボイド、ラクエル・ウェルチ、アーサー・ケネディ、エドモンド・オブライエン、ドナルド・プレザンス、アーサー・オコンネル、ウィリアム・レッドフィールド、ジェームズ...... more
2010年8月14日(土) 10:00~ TOHOシネマズ六本木ヒルズ4 料金:1000円 ミクロの決死圏 (ベストヒット・セレクション) [DVD]出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパンメディア: DVD 『午前十時の映画祭 何度見てもすごい50本』公式サイト TOHOシネマズの『午前十時の映画祭 何度見てもすごい50本』のひとつ。 体、機器、潜水艇みたいなのをマイクロ化し、注射器で体内に注入、困難な脳外科手術を行うという有名な作品だ。 変な髭のサル...... more
人体ってほんと不思議ー。 好きなんだよねー、こういうミクロな世界。 人体とかアリやハチの世界とか、宇宙とか。 あ、宇宙はマクロか(笑)。 体の仕組み、体の中のことは、一番身近でありがながら謎に包まれていて。 医療に携わる人間であれば誰でも、実際に体の中を、それも生きている体を、 見てみたい、と思うだろう。 それが叶う技術が今、完... more
"FANTASTIC VOYAGE" [ミクロの決死圏] 市内の映画館で、今月から「午前十時の映画祭」を上映しています。 約1年間をかけて名作50本を1週間ずつ上映するのですが、今週は『ミクロの決死圏』を上映しているので、先日、観てきました。 -----story------------- 物体を細菌大に縮小し、長時間体内に浮遊しうる研究を完成した、チェコの科学者「ヤン・ベネス」博士がアメリカに亡命してきた。 しかしアメリカへ着くや敵側のスパイに狙われ、車に乗っているところを襲われ、博士...... more
ちなみに『インナー・スペース』公開時はたしか『ミクロの決死圏』のリメイクだと聞かされた記憶がありますが真偽のほどは自信ありません。
おお〜、これもリメイクの話が出てますか。科学考証の点でもっとも今気になるのは“マイクローン化”技術でしょうねえ。できることならE=MC2という、現時点で不変の原理をどう納得させてくれるかなんですが。
あと、実際はどうか知りませんが、私の中でこれと対をなすのは『アンドロメダ…』なんですよ。それと秘密の基地というシチュエーションのせいか、『人造人間クエスター』も必ず一緒に思い出してしまうんです。エクスカリバーさんならご存じですよね。
内容は・・・まぁ、パロディですよね。
でも「縮小して人体内に入る」という点を除けば、殆ど別物なんですが。むしろ巨大ロボット物っぽい雰囲気もあるような(ある意味で操縦してるし)。
『人造人間クエスター』は、ジーン・ロッデンベリーが企画したTVシリーズのパイロット版ですよね。
結局番組は実現しなかったのですが、このパイロット版だけは日本でも何度か放送されているそうで。
ただ、観たいなぁと思い出したのが80年代に入ってからで、その頃になるともうTVでもやってくれなくなっちゃったんですよね。
こちらではビデオ化もされていないので、気になってる作品ではあります。
『アンドロメダ・・・』はリクエストにお答えして(?)、感想をupしました。
前に本家サイトにもupしているので、殆ど同じ文章になっちゃいましたが(苦笑)。
クエスターはNHKだったと思うんですが、都合3回は観たように思います。主人公クエスターの声が家弓家正さんだったかな。
でね、ぶっちゃけた話…一話だけで充分完結してしまってる話なんですよ。一応、先を匂わせて終わってるんですが、むしろパイロット版のつもりが完成度高すぎたのかも。
登場人物は少ないけど、ロケも多いしセットも大がかりで、けっこうお金もかかってたような気がします。そうですか…ビデオ化されてないんですか。私ももう一度観てみたかったのにな。
(でもあきらめきれずにググったらニコ動に三分割でアップされてました!すげー時代だ)
たしかにインナースペースはSFコメディですね。私はデニス・クエイド主演つながりで『第五惑星』が大好きなんですけどね。
肺の中で迷子?になりかけていたシーンが、やっぱり肺の中ってこんなになってるんだーと人体模型のことを想像しつつ、白血球に攻撃されたりと色々楽しかったです。
ラクエル・ウェルチのナイスバディには目の保養させてもらいましたし(笑)
なんか呼んでるなぁ~という気がしました(笑)。
というより、流れを読まれてるみたいですね。
『クエスター』は、今見るとだるいのかも知れませんけれども気になりますね。
『第5惑星』は観たことないです。確か当初の監督が途中で降板して、ウォルフガング・ペーターゼン監督が纏め上げたというやつですね。
なんか公開当時から食指が伸びないんですけれども・・・(苦笑)。
うーん、やっぱり「流れ」を読まれてるなぁ(苦笑)。
二つの作品だけで、永遠にSFファンのイコンとして輝き続けるでしょうね。
本人は嬉しくないかも知れませんけれど(爆)。
事細かく人体図面などを見せてくれてはいるんですが、今一つどこにいるのかがわかりづらく感じたのは自分だけ?
知的美人というタイプとは凡そかけ離れているので、ちっとも女性科学者には見えないラクエル・ウェルチですが、SF映画的にはOKですよね♪
昔、何度かTVで見ましたけど、初見時の衝撃は今でも忘れられません。
今だったら「人間がミクロ化して云々~」なんてトンデモ展開、思いっきり笑い飛ばしていたかもしれないと思うと、子供の頃に観ることができて本当に良かったです。
とはいえ、なんせ昔のことなもので、紅一点がラクエル・ウェルチだったことも背景にそんな胡散臭い思惑があったこともほとんど覚えていなかったりするんですよねぇ。
今、改めて観たらまた違う感覚で観れるのかな。
「小さくなる」ことは大嘘なんですが、その前後、というか作品全体は理詰めで進んでいきますので、意外に疑問を持たずに見れてしまうものです。
で、人体内の冒険というアイディアがあって、それからプロットが練られたはずなので、その背景設定(東西冷戦の最中)そのものは、どうやら二転三転したみたいで。
昔の紹介記事を読むと、当初は宇宙旅行中の飛行士や犯罪者の体内へ、というストーリーが出てきてます。
まぁ実際は、その人が誰なのかということをわからなくても、特に問題なく楽しめますが(苦笑)。