【徒然なるままに・・・】

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「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”

『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001)

e0033570_20104947.jpg昨今のファンタジー小説ブームの火付け役になったJ.K.ローリングの<ハリー・ポッター>シリーズ第1作の映画化作品は、これまたファンタジー映画ブームの幕を開けることにもなりました。
この作品と前後してJ.R.R.トールキンの「指輪物語」が、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作として映画化され大ヒットを飛ばしましたが、後を追って次々と映画化されたファンタジー小説が何れも期待するような結果を残せず、シリーズ化を目論んだ幾つかの作品も殆どが頓挫してしまったことを考えると、改めて<ハリー・ポッター>の凄さを思い知らされます。
原作は昨年めでたく全7巻をもって完結し、近々翻訳本も出版されます。シリーズの映画化も順調で5作目までが公開され、現在6作目を製作中。これが年末に公開されれば、今度はいよいよ最後の7作目に取り掛かるはずですが、こちらはどうやら二部作になるらしく、となると映画版は8本作られるということになりそうです。

回を重ねるごとに原作小説から離れ、映画独自のアプローチを試みているこのシリーズですが、こと第1作に関して言えば、かなり原作に忠実に作られています。
小説にあるエピソードはセリフに至るまで極力掬い取るという基本方針が採られたようで、結果としてスクリーンには見事に原作世界が引き写しされています。好き嫌いを別にすれば、この映画版を観て「原作とはまるでイメージが違う」という不満を抱く人はおそらく少数派ではないかと思います。

ただし原作は決して短編小説ではありません。
あれもこれも掬い取るということは、詰め込みすぎの印象をも強く残すということにもなります。キャラクターの集約や設定の変更といった映画なりのアレンジを施しながらも、上映時間は2時間半にも及びます。
それでもなお、伝わりきれない情報量の多さ。それが原作の面白さを支えている鍵でもあるのですが、結局映画版は交通整理に追われて「映画」としての<ハリー・ポッター>物語を描くところまでには行っていません。
観ていて、「もっと面白くなるはずなのに」というもどかしさが常にありました。
「原作に忠実」でありながら、「原作を読まないとわからない」という矛盾した出来になっているのですが、これはやはり原作物の宿命でしょうかね。

e0033570_20111045.jpg例えば”透明マント”や”みぞの鏡”といった小道具の紹介も、この映画を観る限りでは不要に思えます。勿論、後の作品にも登場する重要アイテムだからこそ取り上げられているのですが、舌足らずの印象を受けてしまうのは致し方ないところでしょう。
またスネイプ先生の扱いにしたところで、この映画だけを観れば「一見悪役風、実は善い人」というキャラクターだと受け止められてしまうかも知れませんが、決してそんな単純な人物ではないことは原作を読んでいる人ならばご承知のことと思います。

タイトルにも謳われている<賢者の石>も映画では非常に曖昧な存在です。
そもそも<賢者の石>そのものには然したる意味もなく、”名前を呼んではいけないあの人”ヴォルデモード復活に必要なアイテムであること、そしてそれをハリーとヴォルデモードが奪い合いをすることでストーリーを転がしていくためだけに存在するといっても過言ではないと思いますが、他にもクィデッチのシーンをはじめ様々なエピソードを散りばめているだけに、結果として映画全体が散漫な印象を与えてしまいました。いっそのこと最初から<賢者の石>を巡るハリーとヴォルデモードの争奪戦を主眼に描けば、少なくても映画としては一本芯の通ったものになったとは思いますが、それでは原作ファンの支持は得られなかったかも知れませんので難しいところではありますが。

この傾向は2作目でも続きますが、監督が代った3作目から徐々に映画独自の路線を模索し始め、それは4作目以降に顕著になります。5作目を観ると、ようやく映画としての<ハリー・ポッター>になってきたのかなぁと感じられるようになってきたのですが、そうなると難しいもので、今度は映画シリーズとしての統一性という点で不安や不満が出てきてしまうのですが、その結論を下すのは映画版完結まで待ちたいと思います。
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by odin2099 | 2008-06-05 20:13 |  映画感想<ハ行> | Trackback(5) | Comments(2)
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Commented by Brian at 2008-06-06 05:24 x
おいらは映画した見たことないんですよね。
だから、あれが「ハリーポッター」としか思ってません。(笑)
ただ、その映画も2作目までしか見てないんですけどね。
さて、どんな結末を迎えるのか、楽しみです。
Commented by odin2099 at 2008-06-07 08:28
多分そういう人の方が多いと思います(苦笑)。
でもこのシリーズに関しては、原作読んでる人の割合って案外高いのかも。
まぁ何であれ、楽しめれば良いんですけれどね。

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