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『機動戦士ガンダム/逆襲のシャア』(1988)

『機動戦士ガンダム/逆襲のシャア』(1988)_e0033570_21191919.jpg最初に「逆襲のシャア」というタイトルを聞いたのは、確か1984年の春か夏のこと。
今思うと冷や汗ものだが、その頃は情報に飢えていたもので(今みたいにインターネットで手軽に入手出来るわけじゃなく、アニメ雑誌が月に数冊でていたけれど情報に大差はないし、幾つかあったラジオ番組も次々と終了していた)、出版社やレコード会社、それに放送局に電話を掛け、発売予定や放送予定などを直接担当者に問い合わせていたことが何度もあったのだ。
そういったファンは少なくなかったとみえて、中には親切に応対してくれる会社も幾つかあり、そんな中で『逆襲のシャア』という作品を富野由悠季監督自らが執筆し、ソノラマ文庫で出版される予定だという情報も教えて貰ったのである。

その後『ガンダム』に続編が作られるという噂が飛び交い、それが翌年に『機動戦士Zガンダム』として結実するのだが、その際の”サブ・アタック・タイトル”として提示されたのが「逆襲のシャア」。
もっとも実際に出来上がった『Zガンダム』でのシャアは、逆襲どころかかなり鬱屈したキャラクターに成り果ててしまっていたのだが。
ただ、富野監督としても思い入れがあったのだろう、こうして新作のタイトルとして復活してきたのである。

公式設定によれば最初の『ガンダム』から14年を経た宇宙世紀0093年を舞台に、最初の主人公であるアムロ・レイとそのライバル、シャア・アズナブルの宿命の対決に決着をつけるというのがお楽しみ。
「ガンダム」映画としては通算4本目となるが、前3作は最初のTVシリーズの総集編を三分割したものなので、完全オリジナルの劇場用としては初めての作品。
その間に『Zガンダム』、『ガンダムZZ』という2本のTVシリーズが作られているのでそれを踏まえた設定・展開だが、それらを知らない人にもファースト(最初の「ガンダム」)から直結して観ることが出来るような配慮がなされている――という説明をよく見かけるが、それは嘘だ
『Z』、『ZZ』から継続しているキャラクターもいるし、シャアが起つに至った経緯は、やはり『Z』や『ZZ』を観ていた方がわかりやすいのは道理である。

そしてこの作品の特徴は、「ガンダム」シリーズの集大成的な作りにあると思う。
アムロとシャアの対決は勿論ファースト・ガンダムを髣髴とさせるし、連邦軍対ジオン軍という対立構図もそうだ。ただこれはファーストの時よりも、どちらかというと『ZZ』時におけるネオ・ジオンと連邦との関係を思い起こさせる。
今回のキーパーソン、クェス・パラヤを巡ってのシャアとハサウェイの関係も、『Z』でのサラを巡るシロッコとカツにダブる。
かようにこれまでのシリーズの流れを知っていれば色々と思うところがあるだろうが、ファーストしか知らないファンが単純にアムロにシャアにまた会えるんだ~!のノリで観ると、さっぱり付いて行けないのではないか、と思う。
実際、アクションドラマというよりもイデオロギーの対立、政治ドラマの色が濃いように思い、これは『Z』を楽しめた人でないと拒絶反応が出るだろう。

『機動戦士ガンダム/逆襲のシャア』(1988)_e0033570_21194169.jpg富野監督の近年の発言を見ると、どうやらこの作品に”失敗作”の烙印を押してるようだが(といっても、自作を褒めることあるのかいな)、荒削りであるのは確かながら、これは日本アニメ映画史のみならず、日本映画史に名を留めるに足る作品じゃないかと思っている。
最初に映画館で観た時は落ち着きがない映画だなと感じたのだが、その後は観直す度に再発見がある。
三枝成彰の音楽も良い。
『Z』、『ZZ』に続いての登板だが、抑えるべきは抑え、その中から涙を搾り出そうとしているメロディーは作品に相応しい。
「ガンダム」ファンを自認する人ならば必見、の一本。

   ×  ×  ×  ×

『宇宙戦艦ヤマト』から始まり、想い出の作品群を「☆まい・ふぇいばりっと・む~び~ず☆」と題して追いかけてきましたが、ひとまずこの作品でオシマイ。
今後は、合間で漏れた作品(未ソフト化作品や、今現在自分が視聴出来る環境にない作品など)を補完することはあると思いますけれどもね。
どこまで追いかけるかは色々悩み、『宇宙戦艦ヤマト/完結編』で潔く幕を引こうか、いや『オーディーン/光子帆船スターライト』まで、それとも『天空の城ラピュタ』? 
いやいやいっそのこと『ヴィナス戦記』まで・・・と迷いもしたけれど、結局はこの作品を締めくくりとしました。
実は一年間ブランクが空くのが難なのですが(1987年公開作は一本もないので)、「ヤマト」から「ガンダム」までというのも良い区切りかな、と。

しかし自分にとってこれらの作品は、一本一本独立した作品でありながら、長い一本の作品という感覚でもあります。
時代の空気、ムーヴメントを大事にしていきたいということなんでしょうかね。
ということで自分にとっての永遠のベスト1映画は、「この(長い一本の)作品」です。
Commented by Brian at 2008-12-01 21:58 x
逆シャア、ついつい何度でも観てしまってます。(笑)
これだけは映画館にも足を運びました。
主題歌はTMネットワークが担当してましたね。
ガンダムシリーズの中でνガンダムは好きな機体ベスト3に入ります。
おかげでガンプラも複数所持するはめに・・・。(笑)
Commented by odin2099 at 2008-12-01 23:10
>Brianさん

ラストシーンが「あれ?ここで終るの?」という感じなのですが、何度も観ているうちに納得するようになりました。
ただいい加減アムロとシャアを「生死不明」「行方不明」と表現するのは止めて欲しいかなぁ。
「その後」を描いた正史の(サンライズ公認の)作品でもアムロやシャアの復活を匂わせる作品はないのだから、もう「戦死」で良いんじゃないかと思うのですが。
by odin2099 | 2008-11-30 21:20 |  映画感想<カ行> | Trackback | Comments(2)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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