『東京交響楽団 東京芸術劇場シリーズ第100回』
2009年 05月 16日


会場は同じく池袋は東京芸術劇場。
この建物、なんか好きだ。
まぁ他に興味をそそられる建物が、池袋にはあんまりないってこともあるんだけど。
今回のプログラムは、現代音楽の世界で活躍している日本の作曲家が映像作品に提供した音楽をご紹介、という趣向らしい。

指揮は大友直人、ヴォカリーズが安井陽子、ヴァイオリン・ソロがコンサートマスターの大谷康子、そしてピアノが若林顕。

最初が「戦メリ」で、次が「藤夜叉のテーマ」、そして混声合唱が入って「誕生」と「華麗なる一族」のテーマ、の順に演奏された。
実は「戦メリ」以外は知らない曲なのだけれども、三枝成影も服部隆之も馴染みのある作曲家なので、初めて聴く曲でもすんなりと受け入れることが出来た。やっぱり良い曲を書くものである。
また最後の二曲はコーラス入りだが、100名規模の合唱団が入ると、絵的にもかなり贅沢な気分が味わえる。


25年ぶりの再演。しかも指揮は、初演を担当した大友直人本人。どんなことが起こるだろうかとワクワクしながら聴いていた。
しかしやはり作品は生き物だった。当時のスコアをそのまま使ったようだが、やはり何度も繰り返して聴いたLPやCDの音色とは違う。
でも、これが”生”の良さである。
作品は過去の遺物でも墓碑銘でもない。今、まさに生きて、”ここ”に在るのだ。
難を言えば、ヴォカリーズ(正確には「ヤマト」で使われているのはスキャットではなく、ヴォカリーズなのである)に透明感がないこと。宇宙の神秘性を表現するのはあの透明感が必要だったのだなと痛感させられたが、それでも先日のコンサートのように男声ではなかったのには救われた。
普通コンサートはいきなり一曲目の演奏から始まるものだが、今回はプレトーク付き。
大友直人が東響と組むシリーズ節目の100回目ということから、このコンサートへの想いや、今回の選曲の経緯などを説明。
その後も折に触れ、それぞれの作曲家についてのコメントを挿む。
流石に最後の羽田健太郎、それに宮川泰に至っては、両人とも故人ということもあってか心なしか語る口調に乱れが。
しかし誠実な人柄が偲ばれ、好印象ではあった。
「交響曲ヤマト」は3楽章まで続けて演奏し、その後で配置を変えて4楽章めを演奏するという段取りだったところを、間違えて2楽章の終了後にトークを始めてしまうというミスもあったものの、そういったハプニングも”生”ならではか。
アンコールは冨田勲作曲の『新日本紀行』のテーマ。
実は明日も同内容のコンサートへ足を運ぶ。
全く同じコンサートへ続けて行くのは初めての経験だが、また”生”ならではの楽しみと驚きに出会えるだろうか。

