『銀河鉄道999/エターナル・ファンタジー』(1998)
2009年 07月 10日
そんな時再びメーテルを乗せた999号が現れ、車掌によって救出された鉄郎は新たな旅に出ることになる・・・。

多少エピソードの前後を入れ替えたりしているが、原作には比較的忠実な映画化で、脚本、演出共に悪くなく、田中公平の手がけた音楽も、TV版や映画1作目を担当した青木望と映画2作目の東海林修の良い所取り、といった完成度。親しみやすく、なおかつスケールのある素晴らしいものだったのだが・・・興行的には厳しかったようだ。
それはやはり上映時間が55分というあたりにあったのではなかろうか。
実際映画化決定の報を聞いた時は、てっきり以前のような2時間クラスの大作だと信じて疑わず、「夢よもう一度」ではないが、気分はすっかり80年代初頭に戻って舞い上がっていたものだ。
ところが上映時間を聞いてビックリ。
しかもそれを知ったのが公開の一か月前だったものだから、そのショックは大きかった。ファンの多くもそうだったのではないだろうか。
映画そのものはコンパクトにまとまっていて観易く、個人的には評価は高いのだけれども、どうしても物足りなさが先に立ってしまう。同時上映に『長靴をはいた猫』を持ってきたあたりも良くわからない。
それに鉄郎、メーテル、車掌のキャストはそのまま踏襲したものの、キャプテンハーロックやガラスのクレアは変更になったのも残念だった。
映画のラストには翌年(1999年だ)に第2弾の公開が告知され、実際製作が動いたりもしたようだが、結局続報がないまま今日に至っている。
余談だが、自分のネットデビューはこの作品の公式BBS。2作目をやるのかやらないのか、ファンがヤキモキしている時期で、色々書いて随分と叩かれたものである(でも最後まで東映動画は、やるともやらないとも説明ないまま、サイトを一方的に閉鎖してしまった)。この頃知りあったweb世界の住人たちは、今ではもう殆どがネットの海から去った様子で淋しい限りだ。
だがこれらは全てファン相手の話。そもそも需要があったのかどうかが常々疑問なのである。
この時期、何故か松本零士にスポットが当たり、旧作が復刻されたり、新作が発表されたり、アニメ化の企画が次々に立ち上がっていたりと、さながら往年の松本零士ブームの再燃といった様相を呈していたのだが、本当に松本ブームは起こっていたのか否か。
以後発表されたTVシリーズやOVA、ゲームソフトの反響を見ても、やはり疑問符がつく。
かつてのファンたちが現場で作品を提供する立場に立ち、その発言力がたまたま強く、そしてそれに便乗した一部のノスタルジアにかられたファンが騒いでいただけではないか、どうしてもそんな気がしてならない。
この作品を含め、松本作品を大々的に取り上げたアニメ誌も、おそらく皆無だと思うのだが。
映画は中途半端な形で終わり、原作コミックも中断したまま。
失礼ながら、この『銀河鉄道999』という作品が完結することは、おそらくありえないだろう。
ラストシーンでは惑星大テクノロジアへ向かう999号を追って、アルカディア号、クィーン・エメラルダス号、そしてヤマトが一堂に会すシーンが描かれているが、様々な作品がリンクすると言われている松本作品。
ファン一人一人が、パズルよろしく楽しんでいくしかなさそうだ。もはや決して答えは得られないだろうが・・・。

そういえば、この時期以降、なぜか松本零士作品のアニメ化が多かったですね。いや、今時こんなの誰が見て喜ぶんだろ?という作品が多かった気がしますが、『ハーロック』の新作だかリメイクだかと『エメラルダス』あたりはそれなりに楽しめた感じですね。
一時期、例の『新・宇宙戦艦ヤマト』をアニメ化だったか、松本零士主体でヤマトの新作映画が作られるって話があって、甚だ不安に感じたのですが、結局、著作権裁判の関係で消えてしまったのでホッとしました。ま、その名残が『大YAMATO零号』とかいう泡沫作品みたいですが……

色々な作品にメーテルと鉄郎やハーロックが顔を出した揚句、収拾がつかなくなっちゃってる感じですね。
パズルのピースを断片的に提供するのは良いとしても、全体像を提示しなければいつまで経っても完成させることが出来ないのですから。
作ってる本人は楽しいのかもしれませんが、パズルを提示された側としてはフラストレーションがたまるだけでちっとも楽しめませんよね。
お互い、数少ない(?)生き残りということでしょうか。
一番仕事が忙しかったり、子供や親を含めた家族のことでバタバタしたり、そういった世代が多いということもあるかも知れませんが、やっぱり淋しいですよね。
子供が手を離れたり、仕事の一線から退くようになったりしたら、また戻ってきてくれるでしょうか。