『火天の城』 山本兼一
2009年 09月 24日
織田信長より安土築城を命じられた棟梁父子が、前代未聞の難工事に挑む「松本清張賞」受賞作。反信長勢力による撹乱、職人同士の諍い、棟梁父子の確執などを通じて安土城が築かれていく様を克明に綴っている中に、信長の安土城に込めた想い、天下人としての気概と覚悟などが盛り込まれた一篇。
『信長の棺』といい本作といい、”織田信長”という語り尽くされた感のあるテーマにも、まだまだ語るべき切り口があることを知らしめてくれただけでも意義があるように思う。
ただ、次から次へと様々な展開が用意されて飽きさせないが、若干散漫な印象をも受けてしまう。
宣教師のオルガンティーノらを絡めているのも興味深いのだが、狂言回しとして使うでもなく、さりとて単なる脇役に留まらないほどの比重を掛けているが故に、やや全体のバランスを崩しているのも残念である。





