『テンプル騎士団の古文書』 レイモンド・クーリー
2009年 11月 29日
偶然その場に居合わせた考古学者のテスは、騎士たちの装いがテンプル騎士団のものであること、そして騎士の一人が展示物の中の暗号機を持ち出したことに気付き、事件とテンプル騎士団との関係を調べ始め、その過程でFBI捜査官のライリーと親しくなっていく。一方ライリーは、手掛かりを追って容疑者を追い詰めていくが、何故かその前で襲撃者たちは次々と謎の死を遂げるのであった。
そして遂にテスは襲撃事件の首謀者に行きつくのだが、そこには第三の影が・・・。

キリスト教にまつわる謎を巡っての冒険物語、とくると、「ああ、『ダ・ヴィンチ・コード』みたいなものね」と思われる人も多いでしょう。確かに二つの作品には共通点がありますし、同じジャンルと括っても良いんじゃないかと思います。
ではこの作品が単なる『ダ・ヴィンチ・コード』の二番煎じか、というと少々事情は込み入ってるようです。
著者のレイモンド・クーリーは元々は脚本家だそうで、このストーリーも映画の脚本として書かれました。それを小説へと手直ししているうちに『ダ・ヴィンチ・コード』が出版されちゃった、ということらしいので、着想は同じ頃か、もしかするとこちらの方が早いのかも知れません。
まぁ読む方にとってはそんなことは関係なく、面白いかどうかが問題なのですが。
ただ、元が映画の脚本だと考えるとなるほどと頷ける部分も多く、ニューヨークの真っ只中に突如現れる4人の騎馬騎士という冒頭部分から、不気味な暗殺者の手口、ダム湖や海へ潜ってのお宝探し、嵐・・・という具合に仕掛けが派手で、ビジュアル面に訴える要素が満載。上手く作れば良質のアクション映画になりそうです。
その一方で、登場人物がややステレオタイプで次に取る行動が読みやすく、しかしそれが納得しやすいとも言い難く、更にラストの展開もお約束という部分には物足りなさもあります。
そして肝心の謎解きですが、曖昧に暈したまま。蘊蓄話だけでなく、しっかりと謎も示してくれた『ダ・ヴィンチ・コード』に比べるとやっぱり不満が残ってしまいます。
時折中世の描写を挟みこむという全体の構成は、なかなかユニークだとは思うのですがね。
→→→ 映像化作品『ラスト・クルセイダーズ』

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「テンプル騎士団の古文書」〈上〉/〈下〉 著:レイモンド・クーリー/ 訳:澁谷 正子 ながらく積読中だったのだが、、、放置してるまに次作が出ちゃったので慌てて読了。 ... more