『四十七人の刺客』 池宮彰一郎
2009年 12月 14日
吉良上野介を「極悪人」、浅野内匠頭を「悲運の人」、そして内蔵助をはじめとする四十七士を「忠臣」「義士」として扱った従来の作品群とは一線を画し、四十七士をあくまで「刺客」として捉えなおしたところに新味がある。
また、殿中での刃傷沙汰の原因には一切触れないというのも斬新な発想だ。
大石内蔵助は、亡き主君の無念を晴らそうと吉良邸討ち入りを決行するのではなく、一方的に浅野を切って吉良を助けた幕閣への抗議と、そして何よりも侍としての意地を掛けて着々と計略を練っていく。
その大石の前に立ちはだかるのが、上杉家江戸家老・色部又四郎。当代切っての利け者と呼ばれる智者であり、更にその背後にいるのは老中・柳沢吉保。
かくして物語は浅野対吉良・上杉、大石対色部の知恵比べ、謀略戦へと切り替わってゆく。
映画を観たのが先だったか、こちらの小説を読んだのが先だったかは忘れたが、お馴染みの名場面というものがない代わりに、理詰めでグイグイと引っ張っていく展開に多いに惹かれた。成程、語り尽くされた感のある物語にも、まだまだ色々な切り口があるのだなと感服した次第。
大石も魅力的だが、対する色部もなかなかの人物。
実はこの作品に接するまで色部安長という人物のことは殆ど知らなかった、というか気にも留めていなかったのだが(「忠臣蔵」物で上杉家家老といえば、千坂兵部だろう)、なかなか興味深いものがある。
ちなみに本日は我が母の誕生日でして、そのせいもあってもぉ大昔からこの日は、“討ち入りの日”としてもさんざん意識してきた日でもあります。
まあでも実際問題として、赤穂事件のあとずいぶん経ってから講談や歌舞伎になって庶民に浸透してることもあり、かなりフィクションまじりの歪んだ話になってることも否めないんだそうで。
とはいえ、『峠の群像』ファンである私、いちおうゆかりの場所にも行っております。
▼よろしければちらっと覗いてやってください。
hてーてーp://homepage2.nifty.com/TOMZONE-S/stwr_folda/OBtabi_folda/Btabi_82_OoishiJinjya.html
そういえば室町流行儀作法の家元である吉良の息子の養子縁組先が、戦国きっての戦闘集団だった上杉ってのも、今も昔も縁とは不思議な取り合わせをするもんだと思わずにいられませんね。
その昔、赤穂城へは行ったことがあるのですが、他に忠臣蔵縁の地というのは訪れてないかも。
せいぜい泉岳寺ぐらいですかね。
京都にはまた行ってみたいです。まだまだ行っていない所が多すぎて・・・。
吉良家は元々三河譜代でしたっけ?
この件で吉良家は廃絶、しかしその血筋は上杉家で残ったというのも面白いというか皮肉というか。
名君と謳われた上杉鷹山は、この時の当主・上杉綱憲の曾孫なんですよね。
忠臣蔵作品としての切り口が少々異なる本書は置いておくとして、初心者が読むとしたらまずどのへんから攻めれば宜しいですかね?(読みやすさも含めて)
そういえば定番ストーリーを押えた小説って知らないなぁ。
まぁ有名なのは、読んだことないけど(苦笑)大佛次郎の『赤穂浪士』あたりだろうけれど、小説にせよ解説本にせよ、「これまでは○○だったけど、現在では△□だと考えられてる」とか、「□×という説が有名だが、実は○△だろう」とか、「□□というのは全くの出鱈目で、実際は△×だった」とか、そういうパターンの本ばっかりのような気がするなぁ。
むしろ50年代から60年代にかけて、東映はじめ各社で作られた映画版を観た方が手っ取り早いかも。
東映だと大体千恵蔵が内蔵助を演じ、右太衛門等オールスターキャストになっております。
もっとも、あくまでも”物語”として楽しむならば、というとこですけどね。
各エピソードは、今では殆どが史実とは無関係のフィクション扱いですから。