『黒蜥蜴』 江戸川乱歩
2010年 01月 04日
明智と対決するのは、女怪盗・黒トカゲ。自分の存在が知られていないのを良いことに、明智の面前で大胆不敵な犯行予告をし、それに失敗したと見るや、知略の限りを尽くして明智に挑戦。
自信満々で迎え撃つ明智も、しかしながら一度は敗北を認めるという、「名探偵VS怪人」パターンが楽しめます。
この黒トカゲ、宝石のみならず、美しいものならば人間さえもコレクションに加えてしまうという倒錯的な、危険な趣味の持ち主ですが、妖艶な美女で変装の名人、「僕」という一人称を使うあたり、実に興味をそそられます。
宝石のみを身につけて踊ったり、部下(もちろん男性)の前でドレスを脱いで全裸になったり、と行動も大胆で、それだけで振り回されてしまう人も多いでしょうね。
ただ、ターゲットや明智に対して色仕掛けで迫る場面はなく、また終盤では明智をライバル以上の存在と意識してからは、神出鬼没で女アルセーヌ・リュパンを気取った黒衣夫人も、らしからぬ”恋する可愛い乙女”の側面を露呈してしまうのがやや残念な気も。
ただ、それ故のラストシーンは綺麗にまとまっていると思います。
これまで何度もTV化、映画化、そして舞台化されていますが、いずれも未見です。
が、中途半端に映像化されるのも嫌ですし、あまりにも独自色を前面に押し出されても困惑してしまいます。
原作に全て忠実に、とは言いませんが、黒トカゲをきっちりと描いた作品なら観てみたいと思いますが、そうなるとエロティックすぎてTVでの放送はおろか、劇場公開でも制限が付いてしまうかもしれません。舞台では更に難しそうですが。
一方で、評判の三島由紀夫の戯曲版にも興味がありますが、いくら絶賛されているとはいえ、美輪明宏には抵抗がありますね。
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