『花のあと』 藤沢周平
2010年 01月 20日
許婚がいながら藩主の側妾にされ、そして今は出家の身となった尼僧が、罪を得て切腹させられようとしている元の許婚を救うべく、藩主に真っ向から立ち向かう「雪間草」。
姑と合わずに家を飛び出した嫁の元へ、その姑が病に倒れたから手助けして欲しいと夫がやってきた。しかし嫁は夫と別れ、新しい暮らしを夢見ているところ。今更何で戻らなけりゃいけないのかと憤慨するのだが、去り状を貰うついでと足を向ける、という「寒い灯」。
商家に忍び込んで主人を殺害し、女房を縛り上げて金を奪ったとして囚われたのは、勘当されたその家の養子だった。本人は否定するものの、誰もがその悪党の仕業に間違いないと思うのだが、しかしそこには幾つか腑に落ちない点が・・・という「疑惑」。
安藤広重が東海道五十三次を描いた、その背景や側面に迫る「旅の誘い」。
初恋――たった一度だけ剣を交えた相手――が非業の死を遂げたことを知り、その仇を討たんとする女剣士が主人公の表題作「花のあと」。

主人公も、武家だったり町人だったり、男性だったり女性だったりとバラエティに富んでいて、ほろりとさせられるもの、快哉を叫びたくなるもの、と味わいも豊か。こういう作品集も良いものである。
この中の一篇「花のあと」が映画化され、もうじき公開になるので気になっているのだが、「醜くはないものの、決して美貌の持ち主ではない」と描写されるヒロイン役が北川景子というのは明らかなミスキャスト。
でも彼女だからこそ映画が気になるワケで、時代劇初挑戦の彼女がどんな演技を見せてくれるのか、そしてどんな剣技を「魅せて」くれるのか、楽しみである。

「今回紹介するのは藤沢周平氏の『花のあと』という短編集だよ。 どちらかというと地味な印象を受ける作品集なのだけど、表題作の「花のあと」が、 北川景子さん主演で映画化されるので、それに合わせて紹介しようと思ってね」 「なるほど~、タイムリーですね」... more