『ウーマン・イン・ホワイト』
2010年 01月 24日
迎えが来てようやく屋敷に到着したウォルターは、快活なマリアン・ハルカムとその異父妹のローラ・フェアリー、ローラの父の弟で後見人のフレデリック・フェアリーに紹介されるが、ローラはあの白いドレスの女に生き写しだった。
やがてマリアンとローラは共にウォルターに惹かれるようになり、ウォルターもまたローラに想いを寄せるのだが、マリアンはウォルターに、ローラには婚約者がいることを伝えた。また偶然あの白いドレスの女に再会したウォルターは、アン・キャスリックという名前の彼女が何らかの秘密を握っており、それはパーシヴァル・グライド卿という貴族に関することだということを知る。
そんな時、ローラの婚約者が友人のフォスコ伯爵を伴って屋敷へ現れた。ローラとの結婚の日取りを決めたいという。
その婚約者こそパーシヴァル卿であることを知ったウォルターは、アンのことをぶちまけるが、祝いの席をぶち壊したとしてフェアリー氏の不興を買い、マリアンは今すぐ屋敷を出て行くことを命じる。失意のうちにロンドンへと戻るウォルター。
一方、パーシヴァル卿とローラとの婚礼は無事行われたが、ハネムーンから帰ってきたローラの姿にマリアンは愕然とする。パーシヴァル卿の目的はローラの持つ財産のみだったのだ。
自分の決断が妹を傷つけたことを知ったマリアンは、何とかして妹を守ろうと決意した。そんな時マリアンは、アンと出会うのだったが・・・。
「アンドリュー・ロイド=ウェバーが奏でる愛のミステリー」、というコピーに惹かれました。
原作はウィルキー・コリンズの『白衣の女』という、何度も映画化、TVドラマ化された作品だそうで、それをロイド=ウェバーがミュージカル化したもの。
今回は2007年に続いての再演で、マリアン役は初演に続いて笹本玲奈。
20年ぶりぐらいに青山劇場へ行きました。
ローラにそっくりなアンとは一体何者なのか、そのアンが握る秘密とは何なのか、そしてウォルターとローラ、それにマリアンの関係はどうなるのか。確かに「愛のミステリー」ではありますが、その謎には大半の方が気付くと思いますし、結末も大方の予想通りのハッピーエンドとなりますので、ハラハラドキドキしながらも安心して観ていられるのではないでしょうか。ただ100%のハッピーエンドとは言えず、中には悲しい運命を辿ってしまう人も出てきますので、薄っぺらな感じはしないですし、出演者の熱演もあってかなり見応えがある作品になっていました。
笹本玲奈のマリアンは堂々として美しく、大和田美帆のローラは儚く可憐、田代万里生のウォルターは真っすぐで、パク・トンハのパーシヴァルは高貴さと残忍さの二面性が恐ろしく、岡幸二郎のフォスコは陽気な自信家を楽しそうに演じ、和音美桜はアンの狂気を体現し、光枝明彦がフェアリー氏で物語全体を締める、という具合に配役もピタリ。
しかも皆、歌が単に上手いだけでなく、それぞれ声も魅力的です。
実はこの舞台、台詞が殆どなく、何気ない会話も、嘆きや慟哭、怒りでさえも歌で表現しているので、役者に要求されるものはかなり多いと思います。
しかもその曲も、感情に合わせて途中でメロディーが変化するだけでなく、リズムすら変わってしまうのでかなり歌い難そう。実際、ロイド=ウェバー作品と言うことで親しみやすいメロディーを期待して行ったところ、なかなか耳に馴染まず頭に入って来ないので最初のうちは辛かったのですが、作品全体でリズムをとっているのだと割り切ってからは耳に残るようになりました。