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『宇宙戦艦ヤマト/復活篇』 再び

先週末で殆どの劇場での公開は終了しました。
『崖の上のポニョ』超えを宣言していた監督兼プロデューサーにとっては、『ワンピース』にさえ惨敗という結果は想定外かも知れませんが、これが現実と言うものでしょう。
公開期間5週間はかなり健闘した部類だと思いますが、大半のシネコンでは一日1~2回しか上映されなかったのは寂しい限りです。
個人的には同じ劇場で(といってもシネコンなので別のスクリーンでしたが)、初日の初回と最終日の最終回を鑑賞するという貴重な経験もさせて貰いましたね。

川島和子のスキャットが流れ、「無限に広がる大宇宙・・・」で始まるナレーションが被さっただけで、自分はすんなりと「ヤマト」ムードに浸ることが出来ましたが、はたして他の人たちはどうだったのでしょうか。
物語に違和感を覚えた人も少なくなかったようですが、自分には非常に「ヤマト」らしいシチュエーションに、お話だなぁと思えたのですが。

「地球滅亡まであと××日」というタイムリミットの設定は、パート1や『ヤマトIII』だけでなく、『さらば』及び『ヤマト2』や『完結編』でも用いられているお馴染みのもの。
突然姿を現すカスケード・ブラックホールは『完結編』冒頭の二つの銀河の衝突を思い出させますし、災厄をもたらすべく地球へ刻々と近づいて行く様は、白色彗星やアクエリアスを想起させます。

敵対する側でありながら、武人の魂に目覚めてヤマトに与するエトス星のゴルイ提督は、ラジェンドラ号のラム艦長の、地球移民を受け入れるアマール星は、無抵抗主義を貫くシャルバート星の人々の相似形です。

乱暴な言い方をすれば『復活篇』は、『III』と『完結編』をミックスしたような作品とも言えるような気がします(相方さんは更に、『さらば』風の味付けを施した、と評してましたが)。

ご存知の通り、この作品には2種類の結末が用意されていました。
採用されたものはカスケード・ブラックホールの正体が判明し、ヤマトがそれを打ち破って地球を救うというもの。
もう一つの結末は、聞くところによれば、地球がブラックホールに飲み込まれて終わるというものだったそうです。

試写会で両方を上映し、ファンの反応を参考にして決めたとのことですが、地球が救われてメデタシメデタシは一見すると「ヤマト」らしいハッピーエンドと言えます。
ところが一つだけ未解決の問題が残されてしまいました。
言わずと知れた古代雪の消息です。

当初の構想では雪は消息不明、地球もブラックホールに飲み込まれ、第一部が終了。そして続編で(元々は三部作構想)雪との再会や地球の再生が描かれる、というものだったとか。
ところが実際に公開されたヴァージョンでは、雪の消息にさえ目をつぶれば物語は完結してしまっています。
SUS国を騙っていた異次元人との決着こそ付いていませんが、地球は健在、ヤマトも健在ならば万々歳です。

予定されている第二部では当然、この異次元人との対決と雪の捜索がメインになるものと思われますが、雪を探す為だけにヤマトが出航するのは無理がありますし、ワープの際に異次元に飛ばされた雪がそこに囚われている、というようなシチュエーションもありきたりです。
となれば、もしハッピーエンドを選択するならば、地球を救うだけでなく、雪も無事に帰還させて終わらせるべきではなかったか、と思うのです。
その上で、異次元人との最終決戦を第二部として描くべきでしょう。

『宇宙戦艦ヤマト/復活篇』 再び_e0033570_64923.jpg何れにせよ「第一部・完」と銘打ってしまった以上、その責任は取って欲しいものですが、その可能性はかなり低くなったと言わざるを得ません。
雪が行方不明のまま、「ヤマト」という作品の歴史が閉じてしまうとしたら、長年ファンを続けてきた者としては大変悲しいことです。

ところでこの作品には、ラストで亡くなられたスタッフやキャストの方に対する献辞が出ます。
宮川泰、羽田健太郎、阿久悠、富山敬・・・とファンなら納得の名前が並ぶ中に、一人だけ違和感のある実相寺昭雄の名前・・・。

正直言って、実相寺監督などよりもよほどシリーズに貢献した人が他にいると思います。
例えばパート1の美術監督の槻間八郎さん。
パート1と『ヤマト2』、『新たなる旅立ち』でナレーション、『さらば』と『2』で土方艦長、『ヤマトIII』でラム艦長を演じた木村幌さん。
あるいはスターシャ役の平井道子さん、etcetc。
そんな中でも、広川太一郎さんは別格ではないかと思います。

広川さんはパート1と『新たなる旅立ち』と『永遠に』での古代守、『さらば』のナレーションだけでなく、劇場版4作全てで予告編のナレーションを担当し、「オールナイトニッポン」での4時間生ドラマの第1作で古代守とナレーターを兼務。
その後も『胎動篇』や『YAMATO2520』でもナレーションを担当していました。『復活篇』を除けば、ほぼ全ての「ヤマト」に携わってきた出演者です。
献辞を捧げるべきは、やはり広川太一郎ではなかったか。
それを考えると残念な気持ちがしてなりません。

過去記事はこちら

Commented by はぎお at 2010-01-26 20:18 x
こんにちは。
もう一つの話はそんな結末だったんですか・・・そちらが採用されていたら、真田さんも佐渡先生も二度と登場しないことになったんですね(T_T)
こちらではまだ上映中ですが、昨年末私が見た時すでに観客は3人でした。あのままでは消化不良ですが、本当に続編はできるのでしょうか?!

献辞について、私ももっと名前を挙げてほしい方がいらっしゃいました。広川さんは当然ですよね。あと、山崎機関長役の寺島幹夫さんとか・・・そうなってくるときりがなくなるかもしれませんが、もう少し配慮してほしかったですね。
Commented by odin2099 at 2010-01-26 21:43
一度はブラックホールに飲み込まれるものの、結局は地球は助かる、ということのようです。
だからどちらのエンディングが採用されても、真田さんや佐渡先生は最後に出てくるんじゃないでしょうかね。

最終日は一番小さいスクリーンに押しやられてましたが、その分お客さんは沢山いたような気が・・・(苦笑)。
後は製作費がいくらかかっていて、興行収入とDVDの売上等々で黒字になるかどうかが続編製作のポイントでしょうね。
もし黒字だったら、小規模ながらも劇場公開とか、OVAのような形での続編製作もありそうな気もしてます。
あくまでも希望的観測ですが。
Commented by odin2099 at 2010-01-26 21:43
それとは別にTVシリーズの企画もあるんですが・・・うーん、どうでしょう? 深夜枠やCS放送でなら可能性あり、かな。
一応は『復活篇』の続きだという話と、パート1のリメイクだという話の両方出てますが、それもどうなるのか。
そちらには出渕裕さんが参加されるそうですが。

寺島幹夫さんあたりは、献辞の相手としては微妙かも知れませんね。
でもギターの木村好夫さんも、音楽集を聴きまくったというようなファン以外には微妙だったことを考えると、ありかも知れません。
おそらく西崎監督兼プロデューサーにとっては、寺島さんよりも木村さんの方が身近な存在だったでしょうが。
by odin2099 | 2010-01-26 06:49 |  映画感想<ア行> | Trackback | Comments(3)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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