『火聖旅団ダナサイト999.9』(1998)
2010年 02月 05日
惑星スヴァンから訪れた地球再生の使者メロウの導きにより、今、進化しすぎた彼らは地球から旅立とうとしている。だが地球の支配を目論む謎の女フォトンは、彼らを利用しようと魔の手を伸ばしてきた・・・!
松本零士の漫画家生活45周年を記念して製作されたOVAで、発売に先駆け東京国際ファンタスティック映画祭にて上映。
プロデューサー丸山正雄、脚本・浦畑達彦、監督は小島正幸。
「松本零士ワールドの集大成」とキャッチコピーが付けられておりますが、要するにどこかで観たようなキャラクターが、どこかで聞いたようなシチュエーションの中、大冒険を繰り広げるというお話であります。
原作漫画は雑誌連載のあとで単行本2巻にまとめられましたが、未完のまんま。
連載分が全て単行本に収録されているかどうかも知りませんが、アニメ版は序盤こそ原作を元にしているものの、その後の展開は殆ど別物。そもそも45分でまとめようというのが無理なお話ですね。哲郎たちが宇宙に飛び出して、さあどうなりますことやら?というところでエンドです。
お楽しみはキャプテン・ハーロックが、ピンチの哲郎たちを(唐突に)助けに来るシーン。
西暦2024年の世界にアルカディア号が存在するのはどう考えても無茶ですけど、きっと途中で時空が歪んでいるんでしょうね、今の「松本ワールド」は。
最後には宇宙戦艦ヤマトまで登場するのは、同時期に製作・公開された劇場版『銀河鉄道999/エターナル・ファンタジー』や、OVA『クイーン・エメラルダス』、『ハーロック・サーガ/ニーベルングの指環』等でアルカディア号、クイーン・エメラルダス号、そしてヤマトの揃い踏みが実現しているのと同様の趣向で(漫画世界だと、これに超時空戦艦まほろばが加わります)、自ら「ヤマト」復活を企画していた頃ですから鼻息も荒い?
ちなみに原作でもアルカディア号は登場するのですが、姿を見せるのはハーロックではなくトチローなんですな、これが。やっぱりハーロックじゃないとファンサービスにならないかなぁ。
出演は、台羽哲郎に緒方恵美、有紀玲に桜井智、ミーに林原めぐみ、メロウに皆口裕子、フォトンに小山茉美、森木先生に松本梨香、島岡教授に永井一郎、メロウを送り出すスヴァンからの声が麻上洋子で、ハーロックは山寺宏一、そしてナレーションを池田昌子が担当とかなり豪華なキャスティングで、これは流石に松本作品だなぁという感じがします。
これに本編には未参加ですけれど、DVDの特典映像であるメイキングは宮村優子がナレーション。ちょっと『エヴァ』を狙いすぎかしらん。
もっとも最初は哲郎が林原めぐみで、メロウが緒方恵美と発表されていましたし、その後に國府田マリ子や井上喜久子らが追加キャストとして発表されたことがあったのですが、実現しませんでした。
というか、製作はかなり難航していたみたいで、スタッフ総入れ替えという事態にも陥ったそうです(最初は、白土武が監督と報じられていたくらいですし)。
結局予定よりは一年以上遅れてのお披露目となりましたが、その混乱が尾を引いたのか、それともそもそもの企画そのものに問題があったのかはわかりませんけれど、ハッキリ言ってちーっとも面白くありません。
製作情報を2年余りずーっと追いかけていて、その完成を楽しみにしていただけにガッカリでした。今回10年ぶりぐらいに観直したんですけれど、やっぱり・・・。
まぁ、作品の作りそのものは、雑な感じになってはいないのが救いといえば救いでしょうけれど、幻のブームに乗っかっただけの中途半端な作品としか言いようがない感じですね、残念ながら。
音楽としてクレジットされているのは、大野克夫。
『太陽にほえろ!』や『名探偵コナン』はわかりますけれど、松本零士との接点は・・・と探ってみると、そうそう、「ヤマトより愛をこめて」がありましたっけ。
これ、当時からかなり意外に思った人選なんですが、その上でワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」や「ローエングリン」、「パルジファル」をシンセサイザーでアレンジするのが主な仕事ですから尚更不思議。他にもっと適任者がいたんじゃないでしょうかね。
おまけに「メロウのテーマ」は、天野正道が作曲していますので更に謎は深まるばかり・・・。