『THE 39 STEPS サーティナイン・ステップス/秘密の暗号を追え!』
2010年 02月 21日
ようするに、バカンの小説を映画化したヒッチコック作品を舞台にしました、というワケ。
ストーリーもキャラクターも驚くくらい映画に忠実(ついでに言えば上演時間も、映画の上映時間に合わせてある)なんですが、ただ一つ違うのは、映画はヒッチコック作品の最高傑作に推す人もいるくらいのサスペンス、ミステリーなのですが、舞台版はコメディになっていること?!
そんなの原典に対する冒涜じゃないか、と思う方もいらっしゃるでしょう。実は自分もそのことを危惧しておりました。
ところが元々この映画にはどことなく陽性なムードがあったんですな。
主人公も、最初のうちこそ悲壮感溢れていますけど、途中からはこの境遇を楽しんでいるんじゃないかと思える部分が出てきますし、最後はメデタシメデタシのハッピーエンド。根底に流れているものを、うまーく掬い取った感じです。
それに大事なのは出演者が4人だけ、ということ。しかも登場人物は139人!
石丸幹二は主人公だけしか演じませんし、高岡早紀もヒロインなど3役だけ。残りは全て今村ねずみと浅野和之の二人で演じているのですが、かなり無茶な早変わりや、どうみても無理のある一人二役の掛け合いもあったりで、それだけでも笑わせてくれます。
更にセットの切り替えや小道具の出し入れも4人で行ってますし、強風に煽られる場面では一人芝居をし、自動車や汽車に揺られている場面では自ら体を揺すり、ドタドタバタバタ、舞台狭しと駆け回ります。それもまたユーモアを生み出しているのです。
脚色はパトリック・バーロウ、演出はマライア・エイトキン、翻訳が小田島恒志、そして日本版演出はデイヴィッド・ニューマン。
満員のシアタークリエは、終始お客さんの笑い声が絶えませんでした。
今まで観たことがなかったタイプの作品だっただけに、新鮮な気分を味わえましたね。
台詞の中に他のヒッチコック作品の題名が散りばめられていたり、引用されたシーンがあったりするのは、これはもしかすると日本版だけの演出かな。
また開演前に、演出助手による前説があるのも面白かったです。