金子修介監督がリメイク風オムニバス作品として企画するも、権利関係その他の問題で頓挫。
代わりに実相寺昭雄監督が登場して実現したのが、この劇場版『ウルトラQ』。
といってもオリジナルのTVシリーズには(正式には)不参加だった実相寺監督のこと、万城目淳、戸川一平、江戸川由利子に一ノ谷博士と懐かしいキャラクター名を並べてみたところで、これを『ウルトラQ』と呼べるかどうかはギモン。
友人は当時、「これは『ウルトラQ』じゃなくて『怪奇大作戦』の映画版だ」と言い切っていたけれど、然もありなん。
何れにせよ、これはウルトラシリーズの劇場版というより、実相寺テイストに満ち満ちた映画になっております。
日本書紀やら丹後風土記やらを持ち出し、浦島伝説や天女伝説を絡め、日本民族のルーツに迫る!というテーマを盛り込んだ脚本は、相棒の佐々木守の作だし。
ただそのせいか(?)興行的には全く奮わなかったみたいで、上手く行けばシリーズ化、という目論みもあったろうに、後に続く作品は現れず。
確か公開初日に観に行ってるはずだけれども、劇場はガラガラだった記憶があるし、途中でテコ入れの為にTVシリーズからセレクトされたエピソードがオマケに付く事態になったはず。
まあ人を選ぶ映画ではあるわな。
出演者も柴俊夫、荻野目慶子、風見しんご、堀内正美、中山仁、寺田農に高樹澪というのは玄人好みではあるけど集客力という点では疑問が付くし、ナレーションを石坂浩二が担当しているのはオリジナルに対する敬意かもしれないが、石井眞木の音楽は作品に感情移入することを拒絶する様な感じがする。
お話は、古代遺跡の発掘現場などで謎の殺人事件が連続して発生。
一方、古代史番組製作中のTV局で、クルーの一人が謎の失踪。
同僚たちが足取りを辿るうちに、連続殺人事件との関連が浮き彫りにされ…という内容。
個人的には非常に興味を惹かれるテーマなんだけど、地味だし判りづらいのも確かだ。
でも今なら違う売り方が出来たかも。
宇宙人や怪獣が出てくる部分に目をつぶれば、これ、和製『ダ・ヴィンチ・コード』というか、そういう側面で引っ張れそうな気もする。
主人公がジャーナリストで、奈良だとか吉野ヶ里遺跡だとか様々な伝承が残る地を訪ねて手掛かりを得て、という構成はかなり近いものがある…と思うのは自分だけ?
やっぱりそういう売り方は無理があるかなあ。
ちなみにこのストーリー、没になった劇場用映画『元祖ウルトラマン/怪獣聖書』として書かれたシナリオを『ウルトラQ』用にリライトしたもの。
万城目じゃなくハヤタが主人公のままでもそれはそれで面白かったかも知れないが、ウルトラマンの映画を観た、という気分にはならなかっただろうなあ。
それと、この映画の製作は円谷プロダクションではなく、円谷映像という別会社。
一応資本関係はないはずなので、厳密にはこの作品をウルトラシリーズには含められないのかも。