『仮面ライダースペシャル 10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』(1984)
2010年 05月 07日
その後ウルトラシリーズは児童誌等での雑誌展開中心の『アンドロメロス』で命脈を保ちましたが、ライダーも同じようにシリーズ終了を惜しむファンの声に押され、雑誌やイベント媒体で活躍する新ヒーローを誕生させることになりました。
それが10号ライダーの仮面ライダーZXです。
近年では村枝賢一のコミック『仮面ライダーSPIRITS』のお陰で認知度が大きくアップしたZXですが、その唯一の映像化作品(ゲスト出演は除く)がこの作品。
約一年の雑誌連載を経て、その集大成として1時間枠の特番が実現したワケですが、連載版とはストーリーも設定も結構異なるよう。連載版は殆ど知らないんですが、リアルタイムで接していた人だとちょっと違うぞ、と思うかも知れません。同じように『SPIRITS』しか知らないファンは、随分違うぞ、と思うことでしょう。
バダンに囚われた村雨良は、脳以外の全身を改造されパーフェクト・サイボーグZXとして復活します。
ところがある日、事故によって失われた自我を取り戻した良はバダンを脱走、自らの境遇を悟り復讐を誓います。その頃、バダンの活動拠点が日本に移ったことを知った9人の仮面ライダーたちは次々に帰国、バダンの野望を阻止すべく立ち向かいます。同じくバダンを追っていたZXはライダーたちと衝突しますが、同じ志を持つ者同士であることを知り、共に立ち上がることを決意するのでした。
『仮面ライダーストロンガー』までの作品では、先輩ライダーが客演する際には声だけであってもオリジナルキャストが(一部例外はあるものの)登板するのが恒例でしたが、復活した『仮面ライダー(新)』以降ではそれも難しくなって所謂声優さんが声をアテるケースが増え、オリジナルのイメージを損なう場面も少なくないですが、この作品では辛うじてV3=風見志郎の宮内洋、ライダーマン=結城丈二役山口豪久、スーパー1=沖一也として高杉俊价が出演し、そして声のみながら2号ライダーを佐々木剛が演じていることでシリーズの連続性が保たれているように感じられます。
これ以降の『仮面ライダーBLACK RX』や最近の『仮面ライダーディケイド』ではほぼ全員が声優さんなので、どうしてもライダーの姿をしたニセモノにしか見えないのに比べるとギリギリの線ですね。シリーズのひとまずの締めくくりとしては、何とか及第点といったところでしょうか。
また山口豪久はこの二年後に亡くなったため、この作品が遺作になってしまいました。
なお、変身後のライダーマンのアクションを演じていたのは、無名時代の唐沢寿明だというのは有名ですね。
地獄大使の従兄弟でソックリという設定の暗闇大使を潮健児が、バダンの総統の声を納谷悟朗が、そしてナレーションを中江真司が務めていることも嬉しい限り。
スタッフもこれまでのシリーズ縁の人が多く、『BLACK』以降は総入れ替えとなってしまったことを考えても、歴史の一つの区切りでしょう。
音楽担当にも菊池俊輔の名前があるのが嬉しいところですが、実際にはこの作品の為の新曲はありません。
主題歌は10号ライダーのイメージソングとして用意されたものの転用ですし、劇中のBGMはこれまでのシリーズからの流用(一部『超人バロム・1』のものが含まれているそうで)。これがかえって「ライダー」らしさを醸し出していたような・・・。
初対面でV3はZXに、「我々は悪の組織に改造された仮面ライダーだ」と自己紹介するんですが、その場にいたのはライダーマンとスーパー1。
V3は1号、2号の改造だし、ライダーマンはデストロンを脱走した後で仲間たちが改造したんだし、スーパー1はNASA製。・・・誰もいないじゃん。
そしてZX=村雨良に自らの境遇を語る風見志郎たちですが、その際になんと名場面を編集したビデオを見せる?!
一体誰が何の為にこんなビデオを作ったんでしょうか? 初めっからZXに会ったら見せるつもりだったのか、他にも勧誘する相手があったのか。これ見て納得する村雨良も村雨良だよな。
ちなみにこの映像は『仮面ライダー』100回記念パーティー(『仮面ライダー』98話+『仮面ライダーV3』2話で100回となる)で上映された『われら仮面ライダー』(後にビデオ化)や、TV特番『全員集合!7人の仮面ライダー!!』のものなどを再編集したものですが、何故か風見志郎はデッキにビデオテープを挿入する前にスタートボタンを押してます・・・。