『ドリームチャイルド』(1985)
2010年 05月 20日
80歳になったアリスと10歳のアリス、そして10歳のアリスをモデルにした「不思議の国」、と3つの世界が錯綜するファンタジー映画・・・と呼ぶには些か抵抗がありますね。
メインは80歳のアリスが生きる「現実世界」で、後は彼女の回想シーン扱いなので、観ていてあまりファンタジー映画らしさは感じないんじゃないかと思います。
実際にアリスは80歳の時、記念式典に参加するために渡米、コロンビア大学から名誉博士号を授与しているそうですが、さて彼女はこの映画に描かれているような頑固で気難し屋の老人だったんでしょうか。
あのヒロインの「その後」という感覚で観ているとガッカリすることは間違いないのですが、まあこれは製作サイドの狙いでしょう。その彼女が封印していた過去と直面し、それを肯定することでラストを盛り上げようとしているのでしょうからね。残念ながらそれほど感動的とも思えず、思いの外この作品の評価が高いのが不思議ではあるのですが。
ちなみにハーグリイブス夫人役はコーラル・ブラウン、ルイス・キャロル役はイアン・ホルムが演じています。
ただ、特筆すべきは10歳のアリスが登場する部分。
アリスを演じているのはアメリア・シャンクリーという女の子ですが、この可愛さは半端じゃありません。そしてただ無邪気な可愛さだけの子ではなく、吃音のルイスをからかったり、笑い物にしたり、ボートの上で突然水をかけたり、かと思うと突然キスしたり、といった少女の残酷さと、ルイスに写真を撮られる際に艶然と微笑んで見せたりと、妖艶さをも兼ね備えています。現実にこんな娘が目の前にいたならば、ルイス・キャロルならずとも煩悩の塊と化すかも知れませんね。
それに彼女、実際のアリス・リデルの写真に良く似てます。
こういった捻った作品に出すくらいなら、ストレートに彼女主演で『不思議の国のアリス』を映像化した方が良かったのではないでしょうか。
この映画でも、ジム・ヘンソンが手掛けたマット・ハッターやウサギなどのクリーチャーたちと共演してますが、その中でも堂々とした存在感を示しています。彼女故の作品の高評価、なんでしょうね、きっと。