『沈黙の戦艦』(1992)
2010年 05月 26日
デビュー作からいきなり主演、しかもスマッシュ・ヒットを連発してきたスティーブン・セーガルが、5本目にしてかっ飛ばした大ホームラン!
それが『沈黙の戦艦』である。
テロリストに占拠された戦艦ミズーリ号。
だがコックであるケイシー・ライバックだけが、その手をすり抜けていた。
残された希望は、この男ただ一人!
『ダイ・ハード』以降トレンドとなった、「外界と隔絶された限定空間で孤軍奮闘する主人公」というパターンを踏襲したアクション物だが、この作品の魅力はライバックという類稀なるキャラクターを創り出したことにある。
「艦の将校から煙たがられている単なるコック」というだけでは、ドジを踏みボヤきながらも頑張るマクレーン警部補(『ダイ・ハード』)と大差はないが、斬新なのは、このコックが実は凄腕の元SEAL隊員だったという二面性だ。
基本的にセーガルが演じてきた役どころは(劇中で明確にされていないこともあるが)一見○○、実は××というパターンばかりだが、それが一番活かされているのがこの作品だと言えよう。
とにかくライバックは強い。
ピンチらしいピンチもなく、怪我をしても次のシーンではもう忘れられている。
台所の有り合せの材料で即席の爆弾を作ってしまう手先の機用さとクレバーさもある。
それでいながら本職(?)はコックというギャップが深みを与えているのだ。
では他のキャラクターはどうだろう?
ミズーリ号の副長でありながらテロリストを手引きするゲイリー・ビジーは、ステレオ・タイプのキャラクター造型なだけに損をしているが、テロリストの親玉を演じたトミー・リー・ジョーンズのほうは、この役のブチ切れた演技で大ブレイク。
ライバックとは過去に何らかの繋がりを持つ、本質的に同一のキャラを魅力的なものにしている。
そして紅一点のエレカ・エレニアックは、当初は巻きこまれ型のお荷物的ヒロインとして登場しながらも、後半ではタフな女戦士へと変貌を遂げるというおいしいキャラクター。
『E.T.』にチョイ役で出ていたというキャリアもあるのだが、自身もプレイメイトであった彼女にはピッタリの役。
という具合に、この作品は決してセーガルの一人舞台というわけではなく、様々な人物が織り成す群像劇でもあるのだ。
その中でキッチリと存在感を示しているセーガルは、やはりタダモノではない。
また、監督のアンドリュー・デイヴィスもこれでヒット・メーカーの仲間入りを果し、皆の出世作となったのだからメデタシメデタシ、である。
一方、この大ヒットのあおりを食ったのは本家の『ダイ・ハード』シリーズで、豪華客船を舞台に製作予定だった『ダイ・ハード3』が、ストーリーの練りなおしを余儀なくされたのは有名な話。
結局は『リーサル・ウェポン』シリーズ用にストックしていた脚本を手直しして製作された為か、かなり毛色の違った作品になってしまっている。
なおこの邦題、どう考えてもかわぐちかいじの人気コミック『沈黙の艦隊』にあやかったとしか思えないのだが、味をしめた配給会社は無関係な他のセーガル主演作にまで『沈黙の~』を連発。
勝手に<沈黙シリーズ>を量産することになってしまった。

上記の感想は「しねま宝島」に書きこんだ時のものですが、うん、良く出来た映画だね。
ところで今回観たのは、テレビ放送を録画しておいたもの。
実はDVDも持ってるし、テレビを録画したヤツはカット版だってこともわかってるんですが……
セーガルの吹替は大塚明夫じゃなきゃ絶対ヤダっ!
…っていうのがその理由です。
DVD(及びビデオの吹替版)でセーガルをアテているのは玄田哲章。
玄田さんも好きなんですが、この人はやっぱりシュワちゃんだよなぁ。

セガール神話、ここに始まる! 今回紹介する作品は、我等が「セガール御大」の出世作にして、「沈黙」シリーズ第1弾!「沈黙の戦艦」です! 退役を控えた戦艦「ミズーリ」がテロリスト集団にシージャックされた!ミズーリには、核弾頭を持つミサイルが搭載されていたから、軍首脳部は大慌て。しかし!安心したまえ。そのミズーリには無敵の軍人「ケイシー・ライバック」が、コックとして乗り合わせていた!(もう安心だね!) さて、不運なテロリストの行く末は・・・?「死」あるのみ! あらすじになっていませんが...... more