
アイリスは久しぶりに姉ローズマリーの元へ帰宅し、訪問中だった新聞記者のトニーと知り合う。
トニーは、ローズマリーの夫ジョージが弁護士を務める会社の、社長であるエリックを取材しているのだという。
ジョージはアイリスに、最近ローズマリーが塞込んでいたという話をするが、もう大丈夫とばかりローズマリーは外出してしまう。
行先はエリックの会社の副社長スティーブンの処。スティーブンはエリックの娘でアイリスの親友でもあるサンドラと結婚しているのだが、二人は不倫関係にあったのだ。
しかしスティーブンはローズマリーに別れ話を切り出し、ローズマリーはサンドラに二人の関係をばらすと脅迫する。
翌日エリックの屋敷で、選挙に出馬するスティーブンの資金集めのパーティーが開かれ、サンドラや叔母のルシーラと再会するアイリスは、その席上でトニーとも急速に親しくなっていく。
その一方でローズマリーは、スティーブンに復縁を持ちかけるのだが、それを拒む彼の決意は固かった。しかしサンドラは偶然二人の会話を聞き、その関係を知ってしまう。
その頃、ルシーラの息子ヴィクターはジョージの事務所を訪れていた。一家の厄介者であるヴィクターは、大金と引き換えに南米に移ることをジョージに約束させられていたのだ。そ
んな彼を出迎えたのは、ジョージの有能な秘書のルース。密かにジョージを慕っているルースにヴィクターは、言葉巧みにローズマリーさえいなければジョージと結婚出来るのだと仄めかす。
そしてジョージとローズマリーの結婚記念日を祝うパーティーが開かれた。
招かれたのはアイリス、ルシーラ、スティーブンとサンドラのファラディ夫妻、それにルースとトニー。
しかし乾杯の直後、ローズマリーは突然倒れ、息を引き取った。シャンパンに青酸カリが混入していたのだ。
やがてローズマリーの遺書らしきメモも発見されるが、自殺か他殺か、警察にも容易に判断がつかない。
スティーブンとサンドラ、それにルースはそれぞれの理由でローズマリーが邪魔であり、アイリスやルシーラには莫大な遺産相続の可能性があり、トニーの言動は謎めいていて正体は不明なのだ。
ジョージでさえ妻の不倫には気が付いていたはずで、全員が容疑者でもあるのだ。
そこでジョージは一計を案じ、同じ場所で同じメンバーを招待してアイリスの誕生パーティーを開く。ローズマリーは殺されたのだと書かれた匿名の手紙も届いていたのだ。
だがその席上で、またもや痛ましい事件が起こってしまう。今度は……?
アガサ・クリスティーの小説をTVドラマ化したものの一篇で、脚本はロバート・マルコム・ヤング、スー・グラフトン、スティーブン・ハンフリー、監督はロバート・ルイス。
出演はアンソニー・アンドリュース、デボラ・ラフィン、パメラ・ベルウッド、ナンシー・マーチャンド、ジョセフ・ソマー、デビッド・ハフマン、クリスティン・ベルフォード、ジューン・チャドウィック、バリー・インガム、ハリー・モーガンら。
「登場人物全員があやしい!巧妙なトリックが冴える、アガサ・クリスティー中期の代表傑作!」とジャケットの裏のコピーにある通り、殆ど誰が犯人でも納得出来そうなストーリーである。
恋多きローズマリーは、その相手にとっては危険な存在となる。
スティーブンも自らの保身に走れば、彼女を消そうとするだろうし、スティーブンの妻サンドラにとって、夫を寝取ったローズマリーは憎んでも飽き足らない存在。
そんなローズマリーを、夫であるジョージが疎ましく思うこともあるだろうし、そのジョージに想いを寄せるルースにとってはローズマリーは邪魔な存在である。
また彼女が亡き者となれば莫大な遺産が転がり込んでくるとあっては、アイリスやルシーラにも十分な動機があるし、そもそも記者だというトニーは信用が置けない…。
逆に言うと、そんな中でも「え?この人が犯人だったの?!」という意外性を出さなければいけないのだが、残念ながら観ていてあまり釈然とはしなかった。
アイリスと謎の青年トニーとのラブ・ストーリーに時間を割きすぎて緊迫感が失われた、ということもあるのかも知れないが、ふーん、ってなもん。
むしろその前に、ミスリードを誘うために出された名前の方が意外性が強く、そちらが真犯人だったなら作品の評価はもっと高くなっていたかも。
ともあれ、TVの2時間ドラマとしては充分楽しめる出来栄えだ。
とはいうものの、きっと原作小説はもっと捻りの利いた作品になっていたのだろうが…。