『ホロー荘の殺人』 アガサ・クリスティー
2010年 07月 20日

ミッジ・ハードカースル、彫刻家のヘンリエッタ・サヴァナク、医者のジョン・クリストウと妻ガーダ、エドワード・アンカテル、デイヴィッド・アンカテル・・・招かれたのは6人の男女。
ミッジはエドワードに憧れ、エドワードはヘンリエッタを愛し、ヘンリエッタとジョンは愛人関係にあり、ガーダはジョンに従順、ディヴィッドは周囲を軽蔑、拒否し、そしてルーシーは天真爛漫。世間とは一風変わった集まりであった。
その夜ホロー荘を、近隣に住むヴェロニカ・クレイが突然訪ねてくる。ヴェロニカは映画女優で、かつてはジョンの婚約者だったが、女王然として振舞う彼女について行けず、正反対で大人しいガーダと結婚したと言う経緯があった。
翌日、隣人であるエルキュール・ポワロが昼食に招かれホロー荘を訪れるが、そこで彼が目にした光景はプールの端のジョンの死体、そしてその傍らに銃を持って虚ろに立ちすくむガーダ、そして駆けつけてきたルーシーとエドワード、それにヘンリエッタの姿だった・・・!
犯人は誰で、そしてジョンは何故殺されねばならなかったのか、という興味で引っ張るミステリー物ではあるのですが、それよりもホロー荘に集った人々の複雑な愛憎劇、一種の恋愛小説として捉えた方が良いのではないかと思います。
犯人探しよりも、おそらく誰が犯人か気付いたであろう他の親戚たちが、その人をかばうかのような行動を見せる、その心理の方がミステリーと言えそうです。
ただ謎解きの興味で読み進めていくと、イライラさせられることも間違いなく、そのあたりで評価は分かれるのではないかと。
ポワロの出番も少なく、クライマックスに立ち会いこそすれ、彼が謎を全て解決する訳ではありません。
というわけで後年、クリスティー自身がポワロを削り、戯曲として再構成したとのことです。

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