『夜間飛行』 サン=テグジュペリ
2010年 08月 11日
さっぱり物語が頭に入って行かず、挫折したのも懐かしい思い出です。
で、今回は何年か越しでのリベンジです。
× × ×

出てくるのは複数の郵便飛行に携わるパイロットたちと、現場主任、整備工、監督官、それに社長。
幾つかのエピソードが回想を交えたり、時系列を入れ替えたりして語られ、クライマックスとなるのは嵐に巻き込まれたとある便の運命。
といってもドラマティックに、サスペンスフルに描写されるわけではなく、絶望と格闘するパイロットよりも中心になっているのは、「郵便飛行」という事業を立ち上げたパイオニアとしての矜持を持ち、周囲に対して毅然とした態度を保ち続ける社長の姿だ。
ロマンティックなヒーロー像とは無縁な、誇りと信念を持った孤高の姿。
物語は凡そハッピーエンドとは言えない結末を迎えるが、そこに悲壮感はない。
そんな生易しい感傷の入り込む余地などない世界に、ただ一人身を置く男。そこに何とも言えない爽快感すら覚えてしまう。
やはり名作と言われるだけの迫力のある一篇であった。