『漂流巌流島』 高井忍
2010年 08月 26日
鯨統一郎の『邪馬台国はどこですか?』を読んで以来、同じような小説ないかなーと探していたんですが、ないんですよね。
鯨統一郎作品でも『九つの殺人メルヘン』、『浦島太郎の真相/恐ろしい八つの昔話』、『今宵、バーで謎解きを』のシリーズや、『哲学探偵』などは同じような構成の作品ですし、『新・世界の七不思議』という直接の続編もありますが、どうも違うんです。
それでずーっと悶々としていた(?)んですが、先日書店でこの本を見つけ「もしや・・・?」と思い読み始めたらドンピシャ。

表題作の「漂流巌流島」、「亡霊忠臣蔵」、「慟哭新撰組」、そして「彷徨鍵屋ノ辻」。
順に、宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘、浅野内匠頭・・・だけでなく板倉修理の刃傷、池田屋事件、荒木又右衛門の仇討ち、の意外な真相(!)が明らかにされていきます。
語り手は、駆け出しのシナリオライターの≪僕≫。
この≪僕≫が、アクション、ホラー、コメディ、お色気なんでもござれ、ビデオ映画のベテラン演出家・三津木監督から時代劇のシナリオを頼まれ、下調べをして打合せの席へ向かうと、あーだこーだと史料を検討した挙句に、定説を覆す新説に行きつくというのがお決まりのパターンなのですが、うーん、こういう解釈もあったのかぁと感心することしきり。
真偽のほどは定かではありませんし、史料の取り扱い方が妥当なのかどうかもわかりませんけれども、少なくても素人は充分頷けるだけの説得力はあります。
剛腕プロデューサーや、弱小事務所所属のアイドル女優など、脇でちょこちょこ出てくるキャラクターも魅力的ですし、この歴史ミステリ物、是非ともシリーズ化して頂きたい。
そしてこの作者、期待しても良いかなぁ???