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『イナズマンF』(1974)

『イナズマンF(フラッシュ)』は『イナズマン』の続編――ではなく、視聴率低迷による番組の路線変更に伴い改題されたもの。

帝王バンバ率いるファントム帝国が壊滅したのも束の間、新たにガイデル総統を戴くデスパー軍団が出現。
パワーアップしたイナズマンこと渡五郎は、記憶を亡くしたインターポール捜査官・荒井誠と共にデスパー軍団に立ち向かう、というのが基本設定。
実は荒井は、実験都市デスパー・シティから妻と娘と一緒に脱出しようとして失敗し、記憶を失っていたことが明らかになり、デスパーを倒すだけでなく、行方不明の妻子を探すことも目的としている。

『イナズマンF』(1974)_e0033570_2333594.jpgこの作品は『F』篇第12話、通算では第37話の「幻影都市デスパー・シティ」を、サブタイトルやアイキャッチ等をカットして再編集した劇場公開版。1974年夏の<東映まんがまつり>で上映されている。
このエピソードでも、妻子を使って荒井誠と渡五郎を誘き出そうとするシチュエーションが登場する。

拉致してきた人間をサイボーグ化して管理・支配している、強制収容所の如きデスパー・シティ。渡五郎と荒井誠は、この幻の都市へと彷徨いこむ。
彼らを出迎えたのは、ユキと名乗る女性だった。
彼女はデスパーの幹部だが実はレジスタンスのメンバーでもあり、二人はそこで、イナズマンを救世主と崇めるレジスタンスたちに紹介される。
だが二人はデスパーの罠に嵌められ、レジスタンスのメンバーも二人を手引きした罪で射殺されてしまう。

「この中に裏切り者がいる」――ユキの視線の先にいたのは彼女の弟だった。
「一度でいいからシティの外へ出たかった」という彼に、「自分さえ良ければ皆はどうなっても良いのか?」と冷たく問いかけるユキは、静かに弟へ向けた銃口の引き鉄を引いた。

ガイデル総統、ウデスパー兄弟、サデスパー市長らが出席する、幹部会議開催の報を知った五郎と荒井。
しかし相手が多すぎるというユキは、自分がウデスパー兄弟を引き付けておく隙にガイデルを倒すよう五郎に頼むと、ウデスパー兄弟をおびき出し自ら爆弾もろとも命を絶ったのだった・・・!

『イナズマンF』(1974)_e0033570_234199.jpgイナズマンに変身して戦う五郎だったが、ラストはサデスパーの攻撃を受けた二人がどことも知れぬ海岸に打ち上げられ、果たして現実のことだったのか、それとも夢か幻だったのかといぶかしむのだが、荒井が娘に買ってあげた人形が一緒に海岸に流されていたことで、妻子の生存を確信した荒井が決意を新たにする、というシーンで終わる。

「自由の戦士イナズマン!」というのが名乗り文句だが、自由を奪われた人間を解放するために戦うというこの『F』篇のイナズマンにはハマりすぎ。
しかし実際はイナズマンの活躍するシーンは少なく、サナギマンの出番も削られ、ヒーロー番組としてはかなり歪な作品になってしまっているのも事実である。
今でこそ唸らされる作品揃いだが、現役視聴者だった当時の自分も『F』篇の記憶は殆どない。
子ども番組とはとても思えないシチュエーションやセリフもバンバン出てくるこのシリーズ、マニア人気は高くても低視聴率だったのも宜なる哉。というより、低視聴率故にスタッフ、キャストが暴走した結果なのだろうか。
by odin2099 | 2010-09-01 23:01 |  映画感想<ア行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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