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【徒然なるままに・・・】

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「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”

『催眠<特別篇>』 松岡圭祐

小説『催眠』は小学館からハードカバーで刊行され、その後小学館文庫に入った。
同じころ稲垣吾郎と菅野美穂主演で映画化されヒット。
その映画版『催眠』を受ける形で、映画化を前提にした続編『千里眼』が書かれこれも映画化されたが、実は『催眠』と『千里眼』にストーリー上の直接の繋がりはない。
その後小説版の『千里眼』はシリーズ化され、そこには『催眠』の主人公・嵯峨敏也が登場するものの、この嵯峨敏也は小説版ではなく映画版を引き摺ったキャラクターになっている。
また今度は映画版『催眠』の続編として、TVシリーズ『催眠』もスタート。
斯様に<松岡ワールド>は複雑化しているのだが、このノベルズ・サイズで刊行された『催眠<特別篇>』は、それらを調整するべく書かれた<改訂補強版>という位置付けである。

e0033570_6362271.jpgお話は原典となる小説版『催眠』と殆ど変らない。
変わったのは主人公の描写。
オリジナルの嵯峨は、背が高く短髪のガッシリしたスポーツマンタイプの青年で、年齢は30代。
対する<特別篇>の嵯峨は、20代後半で細身で猫背気味、長髪で前髪を垂らし・・・と要するに稲垣吾郎を彷彿とさせるキャラクターに修正されているのだ。
ご丁寧に「田辺誠一や稲垣吾郎に似ている」という描写もある。
ヒロインとなる入江由香も、オリジナルでは40代だったが<特別篇>では20代半ば。
こちらにもわざわざ「菅野美穂に似ている」という記述がある。

で、お話は殆ど変わらないと書いたが、『千里眼』のヒロインである岬美由紀が冒頭シーンにチラっと登場したり(嵯峨とはニアミスで、出会ってはいない)、ラストにちょっとしたシークエンスが付け加えられているのが特徴。
小説版『催眠』と映画版『催眠』は全く別のお話と言って良く、小説版には殺伐としたシーンは皆無の、ハート・ウォーミングな内容なのだが、映画版は御存じの通りホラー・サスペンペンス物。
それに合わせる形で、<特別篇>のラストには映画版同様の謎の連続変死事件が起こり、嵯峨と由香が指名手配される場面が付け加えられた。
しかしこれは流石に唐突で、映画版の観客やTVドラマ版の視聴者に対するサービス精神の表れかと思うが、かえって複雑化に拍車を掛けたように感じられるのだが・・・。

そして現在、小学館からハードカバー、文庫、ノベルズと三種類出版された『催眠』だが、角川文庫に入るにあたって更に改稿されている。
版型を変えたり、出版元が変わる際に手を加えたり、場合によっては全面改稿するのが作者ならではのファンサービスではあるが、混乱をきたす要因でもあるのでファンにとっては痛し痒しでもある。
by odin2099 | 2010-10-18 06:37 | | Trackback | Comments(0)
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