『検察側の証人』
2010年 11月 23日
彼の弁護を引き受けたロバーツ卿だったが、フレンチ婦人の巨額の遺産の相続人になっていたことから、金銭的に困っていたレナードには充分に動機があり、住み込みの家政婦ジャネット・マッケンジーは、事件当日にレナードが来ていたことを証言するなど、状況は不利なものばかり。しかも犯行時間のアリバイを証明出来るのは、彼の妻ローマインだけなのだ。
しかし”検察側の証人”として出廷した彼女は何故か夫に不利となる証言を始め、困惑するレナードはますます窮地に追い込まれて行く。
果たしてローマインの狙いは何なのか? そしてレナードは本当に無実なのか?
原作はアガサ・クリスティーの戯曲、原作翻訳は中島アニータ・さくら、上演台本・演出は星田良子。
出演は浅丘ルリ子、風間トオル、鶴田忍、菅野菜保之、伴美奈子、石村みか、高嶋寛、紘貴、松金よね子、渡辺徹。
ル・テアトル銀座にて鑑賞。
映画の『情婦』、TVドラマの『検察側の証人』は観ましたが、元は戯曲(更に言うなら、その原型は短編小説)。となればやはり舞台版は観ておきたいもの。
折り良く上演されることになったので、早々にチケットを取って臨みました。おかげで(?)2列目という、あまり見易いとも言い難い席に・・・。
戯曲の方はちゃんと読んだことはないのですが、パラパラ捲る限りでは、登場人物がかなり省略され、構成も幾分か変更があるようで全体的にコンパクトになった印象ですが、そのあたりの改変はクリスティー自身も容認していたようですな。
驚いたのはロバーツ卿が病み上がりという設定が一切ないこと。二つ観た映像版では重要なキャラクターで、アクセントにもなっていた看護婦も出てきません。短編小説版にもいないようなんですが、ではあのキャラクターを創造し、ロバーツ卿を気難し屋の老人に設定したのは誰なんでしょうか?
その結果、ラストシーンが随分違うものになっています。
映像版では、新たな事件の弁護士として活動を始めるロバーツ卿の姿で締めくくり、嫌でもクライマックスのテンションを持続させてある種の壮快感を持たせたままで終わりますが、戯曲版ではドロドロとした情念を引き摺ったままで幕を閉じます。
どちらが好きかと言うと・・・これは映像版の方に軍配を上げたいと思います。
さて、今回の舞台版。所々で笑いを誘う箇所もあるのですが、何か変なタイミングで笑いだす観客がいたので、かえって醒めちゃいました。こういうのは難しいですねえ。
それにいわば”変身”シーンなど、浅丘ルリ子は流石の存在感なのですが、やはり風間トオルと夫婦役と言うのはバランスが悪すぎます。元々年上という設定ではありますが、これでは哀れさが強調されすぎですね。フレンチ婦人ならば良かったのですが・・・。
一方で松金よね子はイメージ通り。
渡辺徹も悪くはなかったですが、映像版のチャールズ・ロートンやラルフ・リチャードソンと比べてしまえば、どうしても貫禄不足に思えますね。老獪な弁護士すら騙すキー・パーソン、が作品の肝なのですが、これではちょっとした芝居も見抜けないマヌケな弁護士に見えてしまいます。まあ、これは演出の故なのでしょうが。
そして風間トオル。最後に二面性を見せて欲しいところだったのですが、今一つ意外性に乏しかったようで・・・。
お芝居としては面白かったのですが、キャスティングには総じて不満が。
別キャストで上演される機会があれば、また観に行きたいです。
殺人容疑で起訴された男。 その妻は、夫に不利な証言をする。 ディートリッヒ主演で有名な映画の舞台版。 最後がどうなるか知っていても、 ひとつひとつ、積み上げられていく その過程がとても面白かったです。 主演は浅丘ルリ子さん。 「花神」でおイネを演じた浅丘さんは TVや映画で見ると、すごーーーーく細い人ですが、 舞台ではとても存在感がありました。 最近見た杏ちゃんが、体格的には大きいのに 存在感が小さかったのと真逆です。 彼女が登場すると、客席に良い意味での緊張感が走ります。 サスペンスドラマを見る...... more